入れ替わり〜サワークリームポテチ〜
今日も今日とて街の上を飛び回り、素敵な旦那様探しをしている私を追いかけくるストーカー夫を尻尾で顔をぶん殴る。
そんな日々が日常的になり、街の人達も『また痴話喧嘩してるよ……』と生温い目で見てくる。
ああ、私の素敵な旦那様は何処へ……。
「そうか、人間なら番も何も関係なく恋愛ができる!!」
「番!?頼む!!私を見捨てないでくれ!!」
私の側で大号泣するストーカー夫を無視して、黄昏ながらサワークリームポテチを食べる。
「小僧、もうお前にできる事は何もない。お前はじきに私に離婚される身だ。私は夜明けと共にここを立ち去る」
「どうしたら許してくれる……番、教えてくれ」
「うーーん。あんたが他の女を抱いた回数だけ私も他の誰かに抱かれたら許すわ」
「それはやめてくれ!!番の体に他の男が触れると想像するだけで、気がおかしくなる!!」
「自分は良くて私は駄目っておかしくない?」
サワークリームポテチを食べ終わり指を舐める。そして開け放たれた窓から飛び降り竜化して、花街へと向かう。此処には男娼もわんさかいるのだ。私好みの男娼がいないかと、竜化を解いて歩くが、とんでもない速さで私に追いつき、腰元に抱きつきながら大号泣するストーカー夫がいた。私はそれを無視して引きずりながら好みの男娼を探す。
「だのむ!!それだけは!!それだけは許してぐれ!!番!!」
涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃになった顔で叫ぶストーカー夫は、どんなに顔が整っていても引くレベルだった。ダメ男過ぎて言葉が出ず、蛆虫を見るような目で見てしまう。周りもドン引きしているのに気づけ。
すると、ストーカー夫からドス黒いオーラが漂い、赤い目が濁り始める。
「分かった……此処を滅ぼそう。そうしたら番を抱く男はいなくなるだろう?番に近づく人間も殺そう」
「は?」
ストーカー夫は何をとち狂った事を言っているのだろう。ストーカー夫は竜化し、花街を本気で壊す気だ。私も竜化しストーカー夫に噛みつき、山へと引っ張って行く。
『何故だ?何故他の男達を守ろうとする?』
『アンタ馬鹿あ!?』
咄嗟に出た言葉は私の愛するキャラの言葉だった。浮気糞夫からストーカー夫に、そして病んでる夫に進化してしまったようだ。育て方を間違ってしまった。Bボタンがあったら連打したい。
『番の目に入る男は全て排除しよう……そうしたら番は他の男に抱かれる事など無いだろう?』
どうしよう、この病んでるダメ男。とりあえず、ボコボコにして気絶させるか。私は尻尾で病んでるダメ男の脳天に、とびっきりのテールアタックを決め、顎下に頭突きをくらわせ、喉に噛みつき、地面に叩きつけた。だが病んでるダメ男はゆらりと飛び上がって来る。
『ああ、いっその事……番を喰らってしまいたい。永遠に私と一緒に……』
『エレフ!!お座り!!』
病んでるダメ男に駄目元で叫んでみた。すると病んでるダメ男は瞬時に地面にお座りをした。そして瞳から大量の涙を流して、なんか感動してる。
『番が……!!番が私の名を呼んでくれた!!』
『私を喰べたら、私に二度と名前呼んでもらえなくなるけど良いの?』
『っ!!そうだな、番の言う通りだ。喰べてしまったら二度とその美しい声が聞けなくなる』
やばい。やばいぞこれは。詰んでる気がする。どこで間違えた?考えろ、私。この病んでる夫はきっと何処までもついて来るだろう。多分、本当に私の目に映る男は全て殺しかねない。ねぇ、エディス……此奴どうしたらいいの?糞だけど、ここまで酷いとは聞いてないぞ。
これはもう……此奴を尻に敷くしかない。私が尻に敷く事で世界は守られる。
『番、番!!どうか、貴女の本当の名を教えてくれ……貴女の名を呼ぶ権利をくれ……』
『やだ、気持ち悪い。私はエディスの記憶だってあるんだから。他の女を触った手で私に触れ、口付けた口で、私の名を呼ぶなんて烏滸がましい。調子に乗るなよ、駄目夫め』
『夫だと思ってくれているのかっ!!良かった……』
『良くねーよ。はあ……帰るぞ、駄目夫』
帰ったらコンソメポテチを開発せねば。
ああ、今日も空が素晴らしきかな。