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エピローグ

「颯花、どこにいった? ……見失ったか」


 爆散したマシーンクラブから射出されたジェネラルGを追いかけ飛んで行った颯花。

 俺も颯花の後を追いかけるが、空を飛ぶ彼女に対して俺は地上を常人の倍ほどの大きさの装甲服を身に着けて走るしかない。

 その巨体ゆえに通れる場所も限られており、颯花の事を見失ってしまうのは必然だったと言える。


「……一度戻って颯花の事を待つか?」


『ストームガールの現在位置なら、案内できますよ。彼女が身に着けている装備品にはGPSが内蔵されています。ご存じありませんでしたか?』


 ……このAI、俺が何をやっているかわかっているのならさっさと言えよ。


「色々言いたいことはあるけど、とりあえず颯花の居場所を――」


 教えてくれ。

 そう続けようと思ったが、上空から現れた人影に気を取られた事でその言葉は最後まで言いきる必要は無くなる。


「颯花! 無事だったか!」


「うん。だけど、ジェネラルGには逃げられちゃった」


 ……ジェネラルGに逃げられたのは確かに残念だが、それ以上に大事な事がある。


「そうか……まあ、颯花が無事で良かったよ」


 本当に、颯花が無事で何よりだ。


「一応警察には連絡したけど、この状況だし捕まえるのは難しいかな。とりあえず、少し休んでから……そういえば、一成は何でここに来たの?」


 これからどうするかを話している途中、颯花は思い出したかのように俺に問いかける。


 ……そうだ、俺は颯花に謝る為にこんなスーツを着て、ここまで来たんだった。


「おい、クロガネ。外に出たいんだけど、どうやって脱ぐんだ?」


『このスーツは試作品ゆえに、脱着は専用の設備が無いと行えません。装甲の展開は可能なので、少々お待ちください』


 モニター画面が消えると同時に頭部と胸部の装甲が展開し、ようやく肉眼で刑務所の中を拝むことができるようになる。

 ……この間の展示会で発表してたスーツみたいに、気軽に着脱できないのか。


「……この間の事、謝ろうと思って」


「この間って……アタシに近寄るなって言った事?」


 ……話が早くて助かる。


「そ、そう、その事だ。俺の所為で颯花の邪魔をしたくなくて近寄るなって言った事。今更だとは思うけど謝りたくて。自分の都合で勝手に颯花の事を突き放して、本当にごめん」


 俺はそう言い終わると同時に、頭を下げた。


「頭を上げてよ」


 颯花の言葉に従い、頭を上げる。


「一成に拒絶された時はショック大きかったし、謝られた位じゃ許さなかったけど、助けにきてくれたから許してあげる。寛大なアタシに感謝してよね」


 颯花はそう言うと、口角を上げて朗らかに笑う。

 予想していたよりもあっさりと許されて拍子抜けしてしまい、俺の様な捻くれた人間には眩しすぎる颯花の笑顔を直視する事はできず、思わず顔を背けてしまう。


「……どうして顔を背けるの? まさか、許してほしくないの?」


「そ、そんな事ない! 俺はただ――」


「お二人さん。お取込み中すまないが、少し良いか?」


 颯花に言い訳をしようとした瞬間、声をかけられ振り向く。

 そこには黒いスーツを身に纏い、サングラスをかけた男の姿があった。

 ……全然気が付かなかった……というか、この男は確か。


「……あっ! この間の展示会で、アタシ達を見て逃げた人!」


 ……そう、颯花の言う通り、俺と文を助けてくれたJDFの人だ。


「君達を見て逃げた訳じゃない。多田博士の護衛に遅れそうな事に気が付いたから急ぐ必要があっただけだ……君も、ヒーローだったのか?」


 護衛って、そんなにいい加減でいいのか?

 ……あっ、そう言えばお礼を言えてなかった。


「その節はどうも。俺と妹を助けてくれてありがとうございました。……後、俺はヒーローじゃない。ここにいるのは成り行き上、巻き込まれたようなもんです。颯花、この人はJDFの特殊何とかっていう部隊の人……らしい。この間の展示会で、颯花が駆けつける前に俺と文の事を守ってくれたんだ」


「気にするな。そういう任務だったからな。……さて、とりあえず襲撃してきた奴等や、脱走しようとしていた囚人達の鎮圧は完了して、戦闘は終わった。……何人か逃げ出す事に成功したのは残念だがな」


 男の言葉を聞くと同時に、颯花は通信端末を取り出し操作し始める。

 ……かなり大規模な襲撃だったみたいだし、鎮圧できただけでも良しとするべきなのだろうか?

 とりあえず戦闘が終わったようなので、これで一安心か。


「……嘘は吐いてないみたいだね。通信端末に現況の連絡がくるのに、その事を伝える為だけに特殊部隊の人間が態々アタシ達の前に現れたの?」


 通信端末から視線を上げた颯花が口を開く。


「流石スーパーヒーロー、中々に頭が切れるな。勿論、そんな話だけをしに来たんじゃあない。風見颯花……いや、ストームガール、君に話しがある。すまないが、そこの彼は少し席を外してくれないか? 極秘なんだ」



 JDF特殊部隊の人間が、アタシに一体何の用事があるのだろう?

 男の言葉を聞いて少し考え込むアタシに、一成が声をかけてくる。


「颯花、大丈夫か?」


 ……あまり心配させるのも、良くないか。

 アタシは一成に笑いかけながら返事をする。


「大丈夫、心配しないで」


 JDFの男も、アタシが駆けつけるまで一成と文ちゃんを守ってくれたらしいし、悪い人ではないだろう。

 男の方へと向き直ると共に、口を開く。


「いいよ、話を聞いてあげる」


「協力に感謝する。……おい、そこのAI、集音装置は切っておけ。……少し離れるから、着いて来てくれ」


 男はアタシに一礼すると、一成に……いや、パワードスーツに向けてそう言って歩き始める。


『……了解。集音装置、シャットダウンします』


「……おい。俺は何も指示してないぞ。文! さっきから思っていたけど、AIのお振りをしてこっちの話を聞いてる上に、遠隔で勝手にスーツを動かしてるな!」


『否定します、私はクロガネです。……文様が此方の様子をモニターしているのは事実ですけど――』


 一成がAIと何やら話始めるのを尻目に、アタシは男についていく。

 ……二十メートルほど歩いた所で、男は周囲を見渡してから振り返る。


「これくらい離れれば構わないだろう。……まずは自己紹介からだ。俺はJDF特殊作戦部隊所属の……そうだな、コードネーム『鳥羽』だ」


「コードネーム?」


「任務中だからな。すまないが今は本名を名乗る事が出来ない。……ここ最近、武装組織の活動が活発になっているのは、君も知っているな?」


 鳥羽さんの言葉に、アタシは首を縦に振る。

 ……展示会で文ちゃんを狙った奴等や、廃工場で取引を行っていた男達。

 そして、今日の刑務所襲撃。

 嫌というほどに、知っている。


「JDFも事態を重く見て、対策を講じる事になった」


「対策……ですか? アタシに何か関係があるの?」


 今度は鳥羽さんが首を縦に振る。

 ……何となく、読めてきた。


「実力があり、信頼、信用のおけるヒーロー達を集め、いかなる事態にも即座に対応できるチームを結成する事にした。俺は君を――」


「アタシをそのチームに勧誘しにきたんだ」


 鳥羽さんの言葉を遮り、彼が何を言おうとしているのか言い当てる。


「理解が早くて助かる。それじゃあ、返事を聞かせてもらおうか。……時間が必要なら、今日の所は退く事にするが、どうする?」

 鳥羽さんは特に驚く様子もなく、淡々とアタシに返事を促す。

 ……アタシの返事は。


「いいよ。その話、受けてあげる。それで? 他には誰がチームに加入してくれたの?」


「……君と、俺の二人だ。……どうした? 何を驚いた顔をしている? 君ほどではないが、俺もそれなりに鍛えているぞ」


 ……いや、別に鳥羽さんがチームにいる事に驚いてはいない。


「な、なんでアタシを一番最初に勧誘したんですか? アタシより強い人なんて、他にもいるでしょ? ……まさか、他の人には断られたんですか?」


「君ほど強いヒーローなど、そうはいない。それに身元が割れている。信用、信頼がおける者かどうか調査するのに、時間がかからなかったんだよ」


 ……要するに、アタシは信用、信頼が足る人間だと言われているのか。

 少し照れちゃうな。


「他にも候補はいるが、まだ時間がかかりそうだ。ストームガール、チームに加入する以上は、君の意見も聞いておきたい」


「……心当たりは、一人あるよ」


 アタシはそう言うと、AIとの喧嘩を止めて、此方の様子を伺っている幼馴染の方に視線を移す。


「……彼か? 先程、彼はヒーローじゃないと言っていたが……」


 訝し気にそう訊ねる鳥羽さんに、アタシはその目を真っすぐに見据えて答える。


「口ではああ言ってますけど、きっと良いヒーローになれると思ってるよ。それに、一成はアタシの事をいつも助けてくれるんだよ」


思えば小さい頃に苛められていた時も庇ってくれたし、今日も身の危険を顧みず助けに来てくれた。

 アタシは笑みを浮かべ、自信たっぷりに告げた。


「一成は、アタシにとってはずっと前からヒーローなんだよ」

今作を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

次回作の投稿は6月27日の18時からになります

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