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4話‐6

 目を丸くして信じられない物を見ている様に呆然としている颯花に俺が返事をした後、今度はAIの音声が響いてくる。


『地面から脱出後、操作権限を貴方に委譲します。宜しいですね?』


 ……いきなり何を言ってるんだ? このAIは。

 ぶっつけ本番で動かすなんて、無理があるだろう。


「いきなりそんな事言われても無理に――うわっ!?」


 AIからの無茶振りを断ろうするが、外部からの衝撃によって遮られる。


「なんだかわからないが、とにかく撃て!」


 今まで気が付かなかったが、周囲にいる武装した男達が俺を目掛けて発砲する。

 ……しかし、黒鉄はかなり頑丈に作られているようで、俺から見える範囲の装甲には傷こそ付くものの、大して破損した様子も見受けられない。


『このまま攻撃を受け続けると、いかに黒鉄と言えど破壊されてしまうでしょう。いきなりの戦闘で戸惑うのもわかりますが、習うよりも慣れろと言います。それに文様も、貴方の事をやればできると言っていました。……もう一度問います。地面からの脱出後、貴方に操作権限を委譲します。宜しいですね?』


 ……文の奴め。

 断れない状況を作ってから選択を迫ってくるとは、本当に後で文句を言ってやる。


「……わかった! 動かしてやる! ここから脱出しろ!」


『かしこまりました』


 AIが返事をするとともに強い振動が俺を襲う。

 脚部からのジェット噴射によって地面から脱出し、今度こそまともに着地する。


「そ、その声、一成だよね? 一体どういう事?」


「……実は俺もまだよくわかってない。強いて言うなら文に嵌められたって所か。……なあ、颯花。この間の事だけど――」


「余所見してるんじゃないわよ!」

 とりあえずこの場に来た目的の一つを果たす為に颯花へこの間の事を謝ろうとした瞬間、男の声が響いて視界が一瞬白く染まる。


「ちぃっ! 中々頑丈ね!」


 軍服を着た男……アイツは確か、この間俺を攫った奴等のリーダー格で、ジェネラルGと名乗っていたか。

 奴の眼から発された怪光線を受け、黒鉄は装甲の表面を焦がす。

 ……しかし、中にいる俺には傷一つ付けられない。

 奴の言う通り、中々頑丈にできてるじゃないか。


「……色々と聞きたいことはあるけど、まずはこの状況を何とかしないとね。一成! 人質にされてた看守さんを安全な所まで連れて行ってもらえる?」


「俺も颯花に言いたい事があるけど、まずは――」


「だ、誰だかわからないが味方なんだな? 宜しく頼む」


 ……。


「……おい、AI。……ずっとAIって呼ぶのもなんだな。お前に名前は無いのか?」

『はい、私にはまだ正式な名称はありません。ただ、文様は私の事を、『スーパーAIプロトゼロ』と呼んでいました』


 ……感性が普通の人とずれているのか、あいつのネーミングセンスは昔からおかしいんだよな……。


「お、おい? 誰と話しているんだ?」


 …………。


「よし、じゃあお前の名前は『クロガネ』だ。スーツの名前と同じでわかりやすい。それじゃあ早速だけど、コイツの動かし方を教えてくれ」


『些か単純な名前ですが、まあ問題ないでしょう。いつもと同じように体を動かしてもらえれば、スーツも貴方の動きと連動して動きます』


 AIに名前を駄目出しされてしまうが、文のものよりはましだと思う。

 とにかく、俺が頭を下げるとモニターに映る景色も下に下がって黒鉄の手が映り、俺が拳を握りしめると黒鉄の拳も握りしめられる。

「何やってるんだ? 早く脱出――」


 俺はそのまま、握りしめた拳で看守を名乗る男を殴り飛ばした。


「一成!? 何やってるの!?」


 いきなりの凶行を目の当たりにした颯花は狼狽えながらも俺に問いかけるが、そんな颯花を無視して男の様子を見る。

 殴り飛ばされて建物の外壁にぶつかった男はそのまま地面に倒れてしまう。

 ……ちょっとやりすぎた気がしないでもない。


「……アイツ、この間俺を攫った奴等の中にいたぞ。見覚えがあるし、声にも聞き覚えがある」


「嘘!?」


 俺の言葉を聞いて驚き、目を丸くする颯花。


「……まさかバレてしまった上に、増援まで出てくるとはね。……とはいえ、一人増えた所でアテクシ達の方が数に利があるわ! お前達! やっておしまいなさい!」


 ジェネラルGが高台へ飛び上がると共に出された号令に従い、男達が俺と颯花に銃を向ける。


「……今は驚いている場合じゃないか。一成、アタシが時間を稼ぐから――」


「逃げろなんて言ってくれるなよ。今の俺なら……クロガネがあれば、お前と一緒に戦える!」


 俺の言葉を聞いた颯花は今日何度目かになる驚いた顔で俺を見るが、すぐに口元に笑みを浮かべて返事をする。


「それじゃあ、半分任せようかな。期待してるよ」


 半分……俺達の周囲を囲む男達は、ざっと見て二十人以上はいる。

 少なくとも、俺一人で十人相手にしないといけない訳か。


「……なあ颯花? 少しカッコつけたけど、俺一人で十人は――」


「うぉぉぉ!!」


 俺の返事を聞く事なく、颯花は男達を目掛けて飛んでいく。

 男達は颯花に銃撃を浴びせようとするが、颯花はその全てを躱して男達へと接近する。


「このデカブツが! 破壊してやる!」


 何人かの男達の銃撃を受け、僅かばかりの振動が俺に襲い掛かる。

 ……仕方ない、こうなったらやれるだけやってみよう。


「クロガネ! 何か武器は無いのか? こういうパワードスーツには大体重火器を搭載してたりするもんだろ?」


 このスーツは戦闘にも使えると言っていたし、文の事だから当然武器を搭載している筈だ。


『両掌にエナジーガンを搭載しています。目標に掌を向けた後、手に力を込めれば発射できます』


 AIの指示に従い、俺に銃撃を行っている男達に掌を向け、手に力を込める。

 すると、クロガネの掌から男達に向けて光弾が発射される。

 そして、急な攻撃に対応できない男達の一人に着弾した。


「痛っ……嘗めてるのか!」


 ……まともに光弾を喰らったにも関わらず男達は少しだけ呻いた後、自分が大した怪我をしてない事を確認して攻撃を再開してくる。


「……どう言う事だ!? 全然効いてないぞ!?」


 攻撃を躱す為に動きながら、AIに何が起きているのか問い詰める。


『クロガネに装備されている火器関係の使用許可については後日申請予定で、搭載されている全火器にはリミッターがかけられています。残念ですが、豆鉄砲位の威力しか出せませんね』


 ……このスーツは動きが遅く、男達の攻撃を上手く躱す事ができずに当たった際の振動が響いてくる。


「……それじゃあ、ジェット噴射はどうやるんだ? もっと早く動かないと攻撃を避けきれないぞ」


『先程の地中からの脱出に噴射用の燃料は使い切ってしまいました。頑張って避けてください』


 おい。


「……じゃあ、何ができるのか教えてくれ」


『暗所用のフラッシュライトを点灯できます。後はラジオを聴く事ができますね。ご機嫌なBGMでも流しますか?』


 クロガネ……いや、AIもか。

 全然使えねえ!


「このポンコツ! もういい!」


 黒鉄の頑強な装甲を活かし、男達の攻撃を受けながらも突撃を敢行する。


「なんだよコイツ! 撃ち続けてるのに、全然効いて――」


 銃を乱射しながら叫ぶ男が目についたので、殴り飛ばして黙らせる。

 ……これでようやく一人撃破か。


「距離だ! 距離をとって撃ち続けろ! 動きが遅いうえに火力は大した事ないから近づかれなければどうという事はない! それに、どんなに装甲が厚くても撃ち続ければいずれは倒せる!」

 男達の一人がそう叫ぶと共に、男達は揃って俺から距離をとる。

 ……何だろう、まるで俺がネトゲのレイドボスになったように思えてきた。


「逃がすか!」


 当然、俺も男達を追いかけるが、一向に距離は縮まらない。

 ……先程指示を出した男の言う通り、このままではいずれ黒鉄が破壊されてしまうだろう。

 奴らのとった作戦は至極真っ当だ。

 ……俺が一人だったのなら。


「よし、このまま撃ち続ければ――」


 男の一人が何か言おうとするが、最後まで言い切る事なく遮られる。

 男の背後に着地した颯花によって後頭部に回し蹴りを喰らって、その場で昏倒した事によって。


「うわっ!? ストームガール!? 他の奴等は何をしているんだ!」

「他の人達なら、あそこで伸びちゃってるよ」


 颯花が指差す方向を見ると、男達が山の様に積み重なって気絶していた。

 ……俺、必要なかったのでは?

 とりあえず、仲間の惨状を見て固まってしまった男達を倒す事にするか。

いつも私の拙作を読んでいただき、ありがとうございます。


今回の話が良かったと思っていただけましたらブクマ・ポイント・感想をもらえれば筆者のモチベーションが上がるので非常にありがたいですが、読んでもらえるだけでとても嬉しいです。

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