4話‐4
……モンゴルカッパーさんと別れてから暴れている囚人や武装集団を鎮圧していくが、事態が収まる気配はまるで無い。
多少の疲弊感を覚えながらも空から地上を見下ろして次に行くべき場所を見定めようとした瞬間、地上から一筋の閃光がアタシ目掛けて迸る。
アタシは閃光を躱すと、光線の発射源へと全速力で降下する。
……今の閃光には覚えがある。
つまり、刑務所を襲撃したのは奴等だという事か。
「あら、外れちゃった。惜しかったわ」
「あんなへなちょこ光線余裕で躱せるから、全然惜しくないよ。自分から刑務所に来るなんて自首しにでも来たのかな? ジェネラルG!」
下降した先にはアタシが二週間前に戦い、そして逃してしまったジェネラルGの姿があった。
即座にジェネラルGに近づいて蹴り飛ばそうとするが、脚を掴まれてしまい防がれる。
「捕まえたわ。さて、足癖の悪い子にはお仕置きを――」
「気持ち悪いな! 離してよ!」
掴まれた脚に風を纏わせてジェネラルGを吹き飛ばし、体勢を立て直す。
「気持ち悪いって何よ! 生意気な娘ね!」
激昂するジェネラルGの眼から放たれた光線を躱し、空気弾を牽制に放ちながら再びジェネラルGへと近づいていく。
そのまま風を纏わせた拳を何発かお見舞いするが、ジェネラルGが反撃に振るった腕を躱す為に一度後退する。
「危ないな。そんな物振り回すなんて、野蛮だね」
アタシに向けて振るわれた腕、その拳には鈍く光る刃を携えたナイフが握られていた。
「貴女みたいに何でもかんでも吹き飛ばすような娘に、言われたくないわ!」
ジェネラルGはアタシに向けて光線を放つと、そのまま前方へと駆け出し、ナイフを持った腕を振るう。
「女の子相手に武器を持ち出すなんて、男として恥ずかしくないの?」
「アテクシの心は乙女なのよ! それに、三度もアテクシ達の邪魔をする貴女相手に手加減は不要!」
三度?
ジェネラルGに会うのはこれで二度目の筈だけど、知らない内にどこかで会っていたのだろうか?
どこで会ったのか思い出そうとするが、ジェネラルGはそんな暇を与えてはくれない。
飛んでくる光線と、振るわれるナイフを躱しながら後ろに下がる。
……いまは攻撃を躱す事に集中しろ、アタシ。
しっかりと隙をみて、カウンターの一撃を喰らわせるんだ。
「この……ちょこまかと……」
……今だ!
攻撃を繰り出し続けたジェネラルGの息が切れてきたのを、アタシは見逃さない。
ナイフで切りつける為に伸ばした腕を右足で蹴り上げると共に、蹴りを繰り出した際に生じた風圧でジェネラルGを吹き飛ばす。
腕を蹴り上げた際に宙を舞ったナイフを掴むと、地面から起き上がったばかりのジェネラルGに迫り、ナイフを首筋に突き付けた。
「チェックメイトってやつかな? さあ、大人しく降伏しなさい」
「それはどうかしら? 貴女の弱点は、もうお見通しなのよ」
……アタシの弱点?
自分で言うのもなんだけど、全く思い当たらない。
「何を言って――」
「おい女! ジェネラルG様から離れて武器を捨てろ! こいつがどうなってもいいのか!」
ジェネラルGの事を問い詰めようとした時、男の声が響く。
声のした方向に目を向けるとそこには拘束された看守と、看守に銃を突きつける男の姿があった。
「た、助けて――ヒィッ!」
「大人しくしろ!」
助けを求める看守は頭部に強く銃を押し付けられ、悲鳴を上げるとそれっきり黙り込んでしまう。
「これが貴女の弱点よ。貴女はヒーローなのよね? だったら、人質を見捨てる事なんてできない筈よ」
「……言う事には従う。だから、その人に手を出さないで」
アタシはジェネラルGから離れると共に、その場にナイフを捨てる。
「それでいいのよ。さあ、腕を前に出しなさい」
ジェネラルGに従い腕を出すと、刑務所からの略奪品と思われる手錠によって拘束されてしまう。
「さあ、これで貴女は抵抗できないわ。どうしてくれようかしら」
……抵抗できない事はないけれど、隙を見て人質を助け出すまでは大人しく従う他ない。
何とか隙を見つけようとするが、その間にも脱走した囚人や武装した男達が次々と現れてアタシの周囲を取り囲んでいく。
「お前達、手を出すんじゃないよ。この小娘には煮え湯を飲まされているから、まずはアテクシが直々に嬲ってやらないと気が収まらないの」
今にもアタシに手を出しそうな男を制し、ジェネラルGがアタシの元に近づいてくる。
「好きにすればいいよ。何をされたって、ヒーローは悪に屈しない!」
「そんな口を叩けるのも今の内よ。さて、まずは直接殴り飛ばしてサンドバックにしようかしら? それとも、銃器で手足を撃ち抜いて――」
アタシに何をしようか態々口に出していたジェネラルGの声が、突如として聞こえてきた轟音によって掻き消される。
轟音は時間が経つにつれて小さくなる所か、どんどん大きくなっていく。
音のする空を見上げると、轟音を発している黒い何かがこちらに急速に接近しているのがわかる。
……当然、ジェネラルGや周囲の男達も異変に気付き、思わず空を見上げてしまう。
今だ!
アタシは風の刃で手錠を破壊すると、看守に銃を突き付けている男目掛けて空気弾を撃ち込み吹き飛ばす。
男達は轟音によってアタシが抵抗したのに気付くのが遅れ、その間に看守の元へと一気に近づきその様子を確認する。
……どうやら大きな怪我はしていないみたいだ。
「お前達! 攻撃を――」
いつの間にか轟音は消えており、ジェネラルGがアタシを指差し攻撃を指示しようとするが、その声は再び掻き消されてしまった。
今度は風切り音が聞こえてきたかと思うと、先程空に見えた黒い何かがアタシ達の近くに落下して一際強い轟音が発生し、土埃が辺りに舞う。
アタシは能力を使用して土埃を払い、その場にいる誰よりも早く落ちてきた黒い何かを視認する。
……黒い何かは、恐らく人の形をしているだろう。
恐らくと言うのは、下半身に当たる部分が地面に突き刺さってしまい、目視できないから憶測になってしまう。
次に、これまた憶測になってしまうのだが黒い何かは結構な大きさなのではないだろうか?
何せ、地上に出ている上半身だけでアタシの身長と同じくらいの大きさはあるのだ。
少なく見積もっても三メートルはあるだろう。
そして、その外観は明らかに人間の物ではない。
黒い金属の装甲に包まれたそれは、この前対峙した物を彷彿とさせる。
「……機械人形?」
しかし、アタシの予想は外れてしまう。
アタシが呟くと同時に黒い何かの頭部……目に当たる部分が緑色に輝き、言葉を発した。
「……やあ、颯花。こんな所で奇遇だな」
その声は、最近めっきり話していない幼馴染のそれだった。
いつも私の拙作を読んでいただき、ありがとうございます。
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