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4話‐2

 目を覚ました時、俺の視界は真っ暗で何も見えなかった。

 何が起きたのかと身体を動かそうとした瞬間に痛みが走り、痛みに声を上げようとするが上手く喋る事もできない。


「大人しくしておけ、どうせ手足を動かす事はできないし、喋る事も出来ないんだ」


 近くにいると思われる誰かをに声をかけられた事で、意識を失う前の事を思い出す。

 ……声の感じからして今声をかけてきたのは、俺を誘拐した奴等の一人だろう。 

 俺は男の言葉に逆らうように身じろぎするが、まったくの無駄骨、何もできない。

 声を上げる事するできないので、体力を消耗しない為にも無駄な抵抗をやめて大人しくする。


「そろそろ出番だな」


 ……暫くして男は俺の腕を掴み、無理やり引き摺きずられてどこかへと連れていかれる。


「アタシを無力化するの? 一体どうやって?」


「フフフ、こうすればいいのよ」


 聞き覚えのある少女の声と、聞いた事のない男の声が耳に入る。

 ……おいおい、ひょっとしてこの状況は。


「……人質か。気に食わないが、勝つ為ならどんな手段でも行使するのは当然か」


 更に先程の男とは別の男の声が聞こえてくる。

 ……やっぱり、俺が人質にされたのか。

 という事は、先程の少女の声の主は……。

 そこまで考えた所で、俺の視界が急に光を取り戻し、俺は眩しさに怯み、思わず呻き声まで出してしまう。


「ムーッ! ムーッ!」


「か、一成!? どうして!」


 やっぱり、さっきの声の主は颯花だったか。

 ……それから暫くの後、視界を取り戻した俺は周囲を観察する。

 どうやらここは工場か何かの屋上で、俺は両手両足を拘束されて猿轡まで噛まされているうえ、二人の男に見張られており何もすることはできないだろう。

 近くには軍服を着た男と、功夫服を着た男の姿が見える。

 そして地上では膝を地面について両手を上げた颯花が、武装した男達に囲まれていた。

 ……マジか!?

 颯花に俺の事を気にせず、戦うように伝えなければ。


「ムーッ!」


「あら、暴れちゃ駄目よ。あんまりおいたが過ぎるとお仕置きしちゃうわよ。アテクシ、ボウヤみたいな子は結構好みなの」


 ……猿轡をされている所為で颯花に自分の意志を伝える事もできない俺の尻を、軍服の男に触られた事で背筋に悪寒が走る。

 いや! こんな事で臆するな!

 何とかして颯花に俺の事を気にしないように伝える!

 ……そんな風に意気込んでいた俺だったが、何がなんだかよくわからない内に功夫服の男に助けられ、結局は颯花に抱えられながら彼女の戦いぶりを近くで見る事しかできなかった。

 ……今日の所は何とか助かったが、俺が人質にされた所為で颯花をピンチに陥れてしまった。

 これからも今まで通り颯花と付き合い続ければ、今日の様に再び人質にされて颯花に迷惑をかけてしまうだろう。


「一成、大丈夫? 怪我は無い?」


 颯花はそんな俺の考えに気付く事なく、俺の心配をしてくれる。

 ……俺は。


「ふ、颯花。もう俺に関わらないでくれ」


 必要以上に颯花に関わらなければ、彼女の足を引っ張る事もない筈だ。




 事件の事を振り返りながら歩き続け、気が付けば自宅に到着していた。


「ただいま」


 開錠して扉を開き、帰宅の挨拶をする。

 ……誰もいないとわかっていても、癖になっているのかただいまと言ってしまう。


「おかえり、兄さん。相変わらず一番先に帰ってきてると思っていても、ただいまって言うんだね」


 俺の予想とは裏腹に、居間から返事が返ってくる。


「あ、文か? ……そういえば、今日は直接帰るって言ってたな。……何だ、これ?」


 独り言を聞かれたのを少しだけ恥じながら居間に入った俺は目の当たりにする。

 テーブルの周りに山積みになった段ボールと、椅子に座って何やらゴソゴソしている文の姿を。


「そんな所で突っ立っていないで、暇なら少し手伝ってくれないか?」


 ……何を言っているんだ?

 凡人の俺が、天才である文の作業を手伝える訳ないだろう。


「手伝い? 文のやってるような事、俺が手伝える訳――」


「簡単な作業だ。コイツの開封をしてくれ」


 頼みを断ろうとした俺の返事を遮り、文は段ボールに手を突っ込んで何かを取り出すと、そのまま此方に放り投げてきた。


「うわっ!? いきなり物を投げるなよ……」


「怪我するような物でもないし、平気平気」


 抗議の声を上げつつ、反射的に受け止めた物に視線を向けると、颯花の顔が視界に映る。

 今一番見たくない人の顔がいきなり目の前に現れた事で動揺しそうになるのを堪え、一体何を投げ渡されたのか確認する。

 ……ポテトチップス?


「……文? これは――」


「ポテチの開封はしなくていい、背面に付いているオマケを取り出すのを手伝ってほしいんだ」


 文は俺の返事を再び遮り、一方的に指示を飛ばしてくる。

 ……ポテチの袋を裏にすると、そこには中身が見えないようになっている黒い板状の袋が貼りつけてあり、銀色の文字で何か書かれていた。

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「……こんなに買って食べきれるのか? 俺は手伝わないぞ」


「あっ、また『アーマイト』か。……大丈夫、ポテチの処分は颯花ちゃんも手伝ってくれるから。……今度は『ジャスティスマスク』……レアだけど、これじゃないんだよ」


 ……俺が遠ざけようとしても、常に颯花の話題が耳に入ってくるのは何とかならないのだろうか。

 何だか、気分が悪くなってくる。


「……悪いけど手伝わない。少し気分が悪くなってきたから、部屋に戻って休む」


 手に持ったポテチを段ボールに放り投げると、自室に戻る為に居間を出ようとする。


「大丈夫? この間の事件に巻き込まれた時に颯花ちゃんと何かあった?」


 扉のドアノブに手をかけた瞬間、文が問いかけてきた。


「な、何で颯花が関わっているって思うんだよ。ただ単に、体調が優れないだけだ」


「嘘だね」


 態々振り返って返事をしてやったというのに、文は即座に否定する。


「嘘かどうかなんて、文にわかる訳――」


「わかるさ。この間の事件以来、兄さんの様子がずっとおかしいし、何より二週間も颯花ちゃんがウチに来ないなんて異常事態だ。もしボクの予想が外れていたら、家の周りを逆立ちして一周してもいい」


 ……予想が外れていた時のペナルティが誰にもメリットが無い……いや、そんな事はどうでもいい。

 大事なのはどいつもこいつも、俺と颯花の間に何があったのか興味本位で聞いてくるのが鬱陶しいという事だ!


「も、もしそうだったとして、それが文に何の関係があるんだ!」


「自分の兄と幼馴染の仲が拗れたままだと非常に寝覚めが悪い。それだけで首を突っ込むよ。……その反応だと、ボクの予想は当たっていたみたいだ。何があったのか、聞かせて貰おうじゃないか」


 ……駄目だ。

 文と口論になって、俺が勝てる道理などある訳がない。


「断る! 俺は部屋に戻って休む!」


 文に背を向けて廊下へと続く扉のドアノブを回して扉を開いた瞬間、俺の背中にチクりとした感覚がして、身体から力が抜けて床に倒れこんでしまう。


「そっちがそのつもりなら、こっちも強硬手段を採らせてもらおうか。……ボクは兄さんや颯花ちゃんの事を、本当に心配しているのになあ」


 力を振り絞って文の事を見上げると、小さな銃の様な物を手に持った文と目が合う。

 それが意識を失う前に見た最後の光景だった。

二連続気絶落ちで次回に続きます

いつも私の拙作を読んでいただき、ありがとうございます。

今回の話が良かったと思っていただけましたらブクマ・ポイント・感想をもらえると、筆者のモチベーションが上がるので非常にありがたいです。

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