3話‐5
「……どちら様?」
声のした方を見上げると、工場の屋上で軍服を身に纏った男が仁王立ちしてアタシ達の事を見下ろしている。
突然の闖入者は、高笑いして口を開く。
「アテクシ達の組織の邪魔をしている小娘に何者かと聞かれて答えると思っているのかしら? ……アテクシはノワールガイストの幹部、『ジェネラルG』。以後宜しく」
名前、答えてるじゃん。
いや、そんな事よりもアタシが奴の所属しているノワールなんとかという組織の邪魔をしている?
……正直、心当たりが多すぎて何処の組織なのかわからない。
「おい、これはどう言う事だ? この女は中々の手練れ。儂以外の人間が相手をするのは無理だと思うぞ」
「そうね。彼女に対抗できるのは、この場だと貴方とアテクシ以外にはいないでしょう。……だけど、彼女を無力化してしまえば誰が相手をしようと関係無いわ」
あのジェネラルGとかいう男、組織の幹部を名乗っているだけあって自分の実力に自信を持っているらしい。
どれほどのものなのか少しだけ興味はあるが、今はそんな事を言ってる場合でも無いか。
「アタシを無力化? 一体どうやって?」
「フフフ、こうすればいいのよ」
ジェネラルGが指を鳴らすと共に工場の屋内から屋上に、頭に布袋を被されている凄く見覚えのある男子学生服を着た男の子がスーツを着た二人の男に連れられ姿を現れす。
「……人質か。気に食わないが、勝つ為ならどんな手段でも行使するのは当然か」
功夫服の男はそう呟くと一跳びで屋上まで上り、ジェネラルGの元へと移動する。
……嫌な予想がアタシの頭によぎると同時に、男の子に被された布袋が取り払われた。
「ムーッ! ムーッ!」
「う、嘘!? 一成!?」
先程別れた筈の一成が、口に猿轡を噛まされ身動きのとれない状態で人質にされていた。
「本当は貴女の家族を人質に取ろうと思ったけど、JDFに護衛されていたせいで無理だったのよ。だから、貴女の幼馴染を代わりに人質にしたの」
「一成を放せ!」
アタシは宙に浮いて屋上まで飛翔しようとする。
「おっと、止まりなさい。このボウヤがどうなってもいいのかしら?」
そのまま一成を助けに行こうとするが、ジェネラルGがスーツの男達に合図をすると、彼等が一成の首に注射器を突き付け、その光景を目撃したアタシはその場で動きを止めるほかなくなってしまう。
「……それが取引していた違法薬物?」
「察しがいいわね、その通りよ。……この薬を使えば一時的に超能力が使えるようになるの。副作用としてすこーしだけ気分が良くなって、アテクシ達の言う事をなんでも聞くようになるわ。それこそ、自殺させる事も可能よ。……駒が増えるのは便利なのだけど、使えようになる超能力が大した能力じゃないからまだまだ改良が必要なのが難点ね。……さあ、この薬をボウヤに打たれたくなければ、地上に降りなさい」
……一成を人質に取られている以上、抵抗はできない。
アタシはジェネラルGの言う通りに地上へ降りる。
「次は地面に膝をついて、両手を上げなさい」
何とか一成を助け出して、この窮地を脱する方法を考えなければいけない。
だけど、今は奴に従うしかない。
ジェネラルGの言う通りにしたアタシを、犯罪組織の男が銃を構えつつ取囲む。
「ムーッ!」
「あら、暴れちゃ駄目よ。あんまりおいたが過ぎるとお仕置きしちゃうわよ。アテクシ、ボウヤみたいな子は結構好みなの」
ジェネラルGが一成の臀部を撫でると、彼は喋れないながらも悲鳴を上げて呻き始める。
「やめろ! 一成に手を出すな!」
「それは貴女次第よ。アテクシ、貴女みたいに可愛い子は嫌いなの。さて、どうしようかしら? 単純に痛めつけるのもありだけど、それよりも--」
「お、おい! 何をする!」
ジェネラルGがアタシの処遇に頭を悩ませていると、奴の隣から叫び声が響く。
叫び声のした方を見ると、功夫服の男が一成に注射器を突き付けていた男から注射器を奪い取っていた。
「……コイツの取引の護衛を、儂に依頼していたのか?」
「……その通りよ。さあ、何を考えているかは知らないけれど、大人しく薬を――」
ジェネラルGの返事を聞いた功夫服の男は床に注射器を叩きつけた後、躊躇なく踏みつけた。
「何をするのよ!? まさか、裏切るつもりじゃないでしょうね! 人質作戦が気に入らなかったとでも言うの!?」
「……勝つ為に、手段を選ばないのは別に構わん」
ジェネラルGは功夫服の男に掴みかかろうとするが、功夫服の男は流れるような動きでサラリと躱して一成の周囲にいる男達を一瞬で蹴散らす。
「それじゃあ、何故裏切るの!」
「契約違反。儂は只の医薬品の取引だと聞いていたぞ。違法薬物の取引なんて言ったら引き受ける奴がいなくなるから嘘を吐いたな? 先に不義理を働いたのは其方なのだから、儂が何をしようと文句を言う筋合いは貴様等に無い」
功夫服の男が一成を抱えると同時にアタシは立ち上がり、アタシを囲んでいた男達を突風で吹き飛ばす。
そして、屋上から飛び降りてきた功夫服の男がアタシの隣に着地する。
「ほら、しっかりと守ってやれ」
そう言うと男はアタシの隣へ抱えていた一成を怪我しないようにゆっくりと降ろした。
「一成を助けてくれてありがとう、おじさん」
「礼はいらん。奴らが阿呆だっただけの事。後、お兄さんだ」
「アンタ! さっきまでアテクシ達に協力していたくせに、ヒーロー面できると思ってるわけ!?」
ジェネラルGが屋上で地団駄を踏みながら叫ぶ。
……アタシ個人としては見逃しても構わないかと思うけど、ジェネラルGの言う通り幾ら協力してくれたからといって、個人的感情で見逃すわけにもいかない。
「……奴らに協力していたのは事実だし、詳しい話は後で警察と一緒に聞かせて――」
「後は一人で大丈夫だな。儂は興ざめしたから帰る。……用心棒は廃業して、次はヒーローにでもチャレンジしてみるかな」
男はアタシの言葉を最後まで聞くことなく屋上まで一跳びで跳躍し、ジェネラルG達に追撃する暇を与えず、屋上を伝いながらどこへともなく走り去っていった。
……捕まるのがいやで逃げたな。
明日で小説投稿を始めて一年、いつも私の拙作を読んでいただき、ありがとうございます。
今回の話が良かったと思っていただけましたらブクマ・ポイント・感想をもらえると、筆者のモチベーションが上がるので非常にありがたいです。
今回の話のツイートが金曜日までに20RT達成したら今週中にもう一本、次の話を投稿しようと思うので、そちらも見てもらえると嬉しいです。
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