3話‐3
街はずれの廃工場。
如何にも怪しい組織の取引現場に使われていそうなこの場所にアタシが駆けつけた時、工場の外では既に警察と犯罪組織による激しい戦闘が繰り広げられていた。
アタシは後方で現場の指揮を執っている警官に現状を聞く為、地上へと降り立つ。
「ストームガール、ただいま到着! 大丈夫ですか!」
「よく来てくれた! ……既に何人か――クソッ! これでも喰らえ! 既に何人か負傷者は出ているが、奴等はまだ一人も逃がしてはいない」
後方とはいえ、それは比較的というだけだ。
警官はパトカーを盾に光弾を防ぎながらエナジーピストルで反撃を行いつつ、アタシに状況を説明してくれる。
「皆を一度退かせてください。アタシが突っ込むから、援護をお願いします」
「すまない、本当は我々で対処するべきなんだが……この通信機を使ってくれ、援護する時は指示を出す」
警官が無線機で仲間に指示を出し始めると同時に、インカム型の通信機を装着したアタシは戦場の最前線にいる敵の元へ、勢いよく突っ込んでいく。
「な、なんだ! こいつ!」
突然現れたアタシに、武装した犯罪組織の男が手にした棒状の武器を振りかぶる。
アタシは腕を振りかぶった男に手を翳し、突風で壁目掛けて吹き飛ばす。
『援護する、伏せてくれ』
仲間が吹き飛ばされる様子を見ていた別の男がアタシに発砲しようとするが、銃口から火を噴くよりも早く、その場に伏せたアタシの頭上を通り過ぎた警察の援護射撃によって撃ち抜かれ、地面に倒れる。
「なんてこった! ストームガールがお出ましとは……後退するぞ!」
リーダーらしき男が大声を上げ、工場の中へと逃げ出そうとする。
「逃がさない!」
アタシは男達の頭上を飛び越して、工場の入り口を背にして逃げ道を塞ぐ。
これで犯罪組織の前にはアタシ、後方には武装した警官隊。
男達にとっては正に『前門の虎、後門の狼』といった状況だろう。
「さあ、逃げ場は無くなったよ。大人しくしているのなら――」
『な、何だ、貴様! やめ――』
男達へと降伏勧告を行おうとした時、通信機から警官の叫び声が聞こえ始める。
何が起きているのかはわからないが、警官達を助けにいかなくては!
「させるか!」
警官達の救援へ向かおうとしたアタシに、男達が携えた銃から放たれた光弾が迫る。
「当たらないよ!」
急上昇して男達の攻撃を躱してその頭上を飛び越え、警官達の元へと急降下したアタシは目撃する。
抵抗虚しく地に倒れていく警官と、警官を襲撃する蒼い功夫服を身に纏う男。
警官の一人が男に向けて発砲するが、驚くべきことに男は光弾を払い除け、発砲した警官へ飛び掛かる!
「させない!」
警官と男の間に割って入り、男に目掛けて突風を叩きつけ、廃工場の壁まで吹き飛ばす。
しかし、男は空中で姿勢を変えて廃工場の壁を蹴ると、そのまま空中で一回転して着地する。
「ほう? 歯応えの無い奴等ばかりかと思えば、中々できる奴もいるじゃないか。……女子というのが少し気にかかるが」
「油断しないでください、先生! そいつは女とはいえ、ヒーローです! 高い金を払ってアンタを雇っているんだから、しっかり活躍してもらわないと困るんです!」
犯罪組織の男達の内、一人が功夫服の男に向かって忠告するように叫ぶ。
……警官隊を一人で蹴散らしている時点で、充分活躍しているとアタシは思うけど。
功夫服の男は忠告を聞くと、ニヤリと口角を上げる。
「成程、強者に男も女も関係無いという事か。一理ある」
功夫服の男は見た事の無い構えをとり、アタシの事を見据えてくる。
「無事な人達は、負傷した人を安全な場所まで連れて行ってあげてください。……アタシが、時間を稼ぎます」
「……すまない。皆! 一度退くぞ!」
警官の一人が苦虫を噛み潰すような表情でそう言うと、警官隊が負傷者を背負って後退していく。
「おいおい! この人数相手に一人で残るのか? 幾ら強いからって、それはちょっと無謀だろ!」
「アンタ達なんて、アタシ一人で充分だよ。さあ、纏めてかかってこい!」
撤退する警官隊を追わせない為に、男達を挑発してアタシに注意を集める。
「……後悔させてやる。おい、お前達! この女を囲んで――」
「待て」
アタシの挑発に乗ったリーダー格と思われる男は他の男達に指示を出そうとするが、功夫服の男によって遮られる。
「あの女は儂が一人で相手をしよう」
功夫服の男から飛び出した言葉に犯罪組織の男達、そしてアタシも呆気にとられてしまう。
アタシを相手に一人で戦うつもりなの?
「……何を言ってるんですか!? 幾ら先生が強いと言っても、奴は規格外の化け物。全員で仕留める必要が――」
「……言葉を変えよう。貴様等がいると邪魔だ。とっとと引っ込んで様子を見ていろ」
いち早く我に返った男達の一人が功夫服の男を説得しようとするが、功夫服の男に睨まれながら邪魔だと言われ、絶句してしまう。
しかし、アタシにとっては好都合。
功夫服の男がどれ程の使い手かわからない以上、不安要素は少ない方が良い。
……少なくとも、先程のアタシの不意打ちに対応できる程度には強い男だ。
「さあ、そろそろ始めようではないか。お主の力、見せてみろ!」
功夫服の男はそう言うとアタシを目掛けて、とてつもない速さで一直線に駆け抜ける。
「速い! けど、直線的なら……!」
幾ら速く動けても、動きが直線的なら簡単に先読みできる。
……それに、アタシの方がもっと速い。
男を再び吹き飛ばす為、掌を翳して突風を放つ。
突風は男に直撃し、再び工場の外壁へと吹き飛ばされる……筈だった。
普通の人間なら到底立ってはいられない強風の中で、功夫服の男は飛ばされる事なく、その場に立ち続ける。
少しだけ驚いたが、動く事ができないのならこのまま吹き付けて根競べに持ち込もう。
「……! 嘘でしょ!?」
目の前で起きた光景に、アタシは強い衝撃を受ける。
常人ならば吹き飛ばされる事は必至の突風の中、男は一歩、前方へと歩を進めた。
少し半端ですが、今日はここまで。
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