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3話‐2

 アタシの一日は、まだ太陽が昇る前の早朝ランニングから始まる。


「おはよう颯花ちゃん。今日も元気そうね」


「おはようございます。元気なのがアタシの一番の取柄だと思っていますから。それじゃあ、アタシはまだランニングが残ってるので」


 朝の散歩を楽しんでいる近所のおばあちゃんと挨拶を交わして別れた後、ランニングを続ける。

 ヒーローとして活動するようになってから五年近く、毎日朝のランニングは欠かさず行っている。

 ハードな仕事をこなすには、基礎体力が重要なのだ。

 暫く走った後は、家に戻ってシャワーを浴びる……前に、宙に浮いてお隣さんの二階の窓を軽く叩き、まだ夢の中にいるであろう住人を起こす。


「おはよう一成、もう朝だよ」


「……おはよう。目覚ましは有難いけど、もう少しだけ惰眠を貪りたい……」


 窓を開けた一成が、眠たそうに目をこすりながら返事をする。


「そんな事言って、寝坊したらどうするの? それじゃあ、また後で!」


 一成に一時の別れを告げ、アタシは自分の家へと帰り、汗を流す為にシャワーを浴びる事にした。




 一成と共に登校し、自分達の席へ座る為に彼と別れた後、アタシはクラスの皆に囲まれ質問攻めにされる。

 名前と顔を明かしてヒーローという目立つ事をやっている以上、こうなるのは仕方ないというのはわかっている。

 だけど、少し手加減してほしいと思う事もなくはない。


「おはよう、風見さん。ああ、君は今日も麗しい!」


 アタシを囲むクラスメイトに割り込むように、白金君がアタシに話しかけてくる。


「お、おはよう、白金君。……いつも聞いてるんだけど、何でそんなにアタシの事を褒めてくるの?」


「そんなの、わかりきってるじゃあないか。聞くのは野暮だよ」


 白金君は態々違うクラスからアタシの元まで来て、何だかよくわからない事を言う変わった人だ。

 この間、一成達といっしょに文ちゃんを守ってくれたらしいから、多分良い人ではあるんだと思う。

 ……そろそろ一成が間に入ってくれる頃だと思い一成の方に視線を向けると、一成は白金君の監視役らしい月日君と何かを話してこちらに気付いていない。

 まあ、一成が来てくれなくても時間が経てば授業が始まるし、問題ないか。

 ……それにしても、何を話しているんだろうか?

 少しだけ、気になってしまう。


「時に風見君。今度の休みなんだけど――」


「はいそこまで。そろそろ時間だから、自分のクラスに戻った方がいいぞ」


 暫くの間、白金君の話を聞いていると、何かを言おうとしていた白金君に割り込み、いつの間にか近くにいた一成が始業の時間を彼に教えてあげる。


「……もうそんな時間か。風見君、今日の所は諦めるけど、次は――」


 白金君は月日さんに抱えられて退室する時も、アタシに向けて話し続けていた。

 ……お喋りが好きなんだなあ。




 更に時間は流れて放課後。

 アタシはヒーローとして活動しているので部活には入っていない。

 そして、今日は珍しく何の事件も発生していないので、真っすぐに家に帰る事が出来る。

 ……とはいえ、アタシの家に帰っても両親は今日も夜遅くまで帰ってこないから、一成の家で過ごす予定だ。

 という訳で、今は一成と共に彼の家への道を並んで歩いている。


「……今日は、ヒーローとして活動しないんだな」


 隣を歩く一成が、アタシに話しかけてくる。


「何の事件も起きてないからね。今日はパトロールも休みにしてのんびりしようと思ってるよ」


 アタシの返事を聞いた一成は、どこか安堵したような表情を見せる。

 ……何で一成は、安心したんだろう?


「そうか。……平和が一番。毎日こうだったら――」


 一成が平和を噛みしめ、ささやかな願い事を言おうとした瞬間、アタシの持っている通信端末からブザー音が鳴り響く。

 この端末は、私のように公にヒーローとして活動している人に政府から配布される物で、ヒーローの実力に合わせた事件や、依頼を通知してくれる代物だ。

 ……ただ、アタシは有名すぎるらしく小さな事件で呼び出される事は無いのが欠点だ。

 事件の大小にかかわらず、困っている人がいるなら助けるのが信条のアタシは今日のように休むと決めた日以外は自分で情報収集して、直接パトロールを行っている。

 それはともかく通信端末のモニターを確認すると、事件発生の通知と、事件の詳細が表示されている。

 ……どうやら、どこかの犯罪組織が違法薬物の取引を行っており、現場に押し入った警察との戦闘が始まっているようだ。


「一成、呼ばれたからちょっと行ってくるね」


「……なあ、颯花」


 宙に浮き、空に向かって飛翔しようとしたアタシを一成が呼び止める。

 彼は俯いており、どんな表情をしているのか伺い知る事はできない。


「どうしたの?」


「……いや、何でもない。気をつけろよ」


 顔を上げた一成の表情は、いつもと同じ物だった。

 アタシは返事をする代わりに頷き、空に向けて飛翔した。

3話の大体三分の一を投稿しました。

次回から戦闘シーンになります。

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