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2話‐8

 非常扉の向こうへと颯花が出て行った後、外から颯花と男達の戦闘音が響いてくる。


「やっぱり、颯花ちゃんは格好良いな」


「文、そういうのは後にして、皆を安全な場所まで運ぶのを手伝え。」


 颯花の出て行った扉を見つめている文に手伝う様に促す。

 皆、文を守ってくれた人達だ。

 責任をもって、安全な場所まで避難させないと。

 ……とはいえ、俺と文の二人で警官二人に月日さんと白金の四人を運ぶのは中々に骨が折れそうだ。


「ううん……私は……?」


「月日さん! 気が付いたのか!」


 どうしたものかと考えている時、月日さんが呻き声を上げつつ目を覚ます。

 月日さんに手伝ってもらえば……いや、彼女も起きたばかりだし、無理はさせられないか。


「……思い出しました。あの男達はどうなりました? 妹さんは無事ですか?」


「あの後、颯花が駆けつけてやっつけてくれたよ。文、誰か一人――」


 運んでくれ。

 そう伝えようとした時、俺達の背後から足音が聞こえてくる。

 ……まさか、奴らの増援か? 

 あいつら、どんだけの数がいるんだよ。


「カパー。君たちが要救助者カッパ?」


「黒鉄重工の博士が一緒にいるし、聞くまでもないだろ。助けに来たぞ」


 身構えた俺の目の前に現れたのは黄色いタイツ姿の男に、スケボーを片足と両手に取り付けた男。

 そして、河童の着ぐるみだった。

 ……あ、怪しい。


「あ、あの、貴方達は――」


「君たちは確か、展示会の護衛として呼ばれていたヒーロー達だな?」


 俺の言葉を遮り文が男達に話しかけると、男達は文の言葉に頷く。

 ……いや、ヒーローだったとしても、彼らの格好の意味がわからない。

 ヒーローなんてそんなものなのかもしれないし、今気にする事ではないのだろうけど。


「それじゃあ、君達を安全な場所まで連れていこう。何人か怪我人もいるみたいだしな」


「外では颯花ちゃんが戦闘中だ。会場内を通って行こう」


「颯花ちゃん……? ああ、ストームガールの事か。わかった、俺が先行するから君達は着いて来てくれ。モンゴルカッパー、殿を頼む」


 そう言ってヒーロー達は未だに起き上がらない警官達と、白金を担いで移動を始め、俺達もヒーローに付いていく。

 一時はどうなる事かと思ったけど、これでようやく一息つけそうだ

 ……颯花は、まだ戦っているんだよな。


「すいません、ちょっとお手洗いに行ってきてもいいですか? 後から追いかけるんで、先に行ってください」


「わかったカッパ。……会場内の敵は全て排除したはずだから大丈夫だとは思うけど、何かあったら叫ぶカッパ。すぐに駆け付けるカッパ」


 他の人達を助けてくれたヒーローに会釈をして、近くのトイレへと向かう。

 ……文だけは俺が何を考えているか気付いているようだったが、何も言わずにヒーロー達と一緒に立ち去る。

 さて、颯花の様子を見に行くか。

 先程までの争いの跡が残る非常口へと向かい、外の様子を伺う為に扉を少しだけ開く。

 地面にはスーツ姿の男達が身動きすることなく横たわっているが、颯花の姿は見当たらない。

 扉から顔を出して周囲を見渡すと、上空から颯花がスーツの男を抱えて地上に降りてくる。

 颯花以外に立っている人間は、周囲に見当たらない。

 ……どうやら、既に戦闘は終わったようだ。

 男達の方を見つめている颯花の元へと駆け寄っていく。


「一成!? 何でここに!? 文ちゃん達は大丈夫なの?」


 俺に気付いた颯花は、驚きを隠そうともせずに俺に問いかけてくる。


「文達はヒーローが安全な場所まで連れて行っってくれたよ。……俺は颯花が無事か見に来たんだけど、聞くまでも無いか」


「……まあね。さて、警察に連絡して、彼らを連れて行ってもらわないと」


 颯花はスマホを取り出し、警察に連絡をとりはじめる。

 ……俺は何もしていない筈なのに、今日は本当に疲れた。

 後で助けてくれた人たちに、お礼しないとな。

 でも今日は、早く帰って身体を休めたい。

 ため息を吐いて、項垂れてしまう。


「一成? どうしたの? 気分悪い?」


 通話を終えた颯花がこちらの様子に気付き、俺の顔を覗き込んでくる。


「だ、大丈夫、ちょっと疲れただけだから……いや、実際に動いてくれたのは俺以外の人達だってわかっているけど、精神的に疲れた」


 身振り手振りで大丈夫だと表現して颯花から離れて貰った後に、顔を上げる。

 ……それにしても、いきなり目の前に颯花の顔が近くにあったのには、少し驚いた……。


「こんな事に巻き込まれたんだから、仕方ないよ。……でも、一成が疲れてるのはアタシ的に少し、困るかな」


「……何でだよ。颯花が困る事なんて、特に無いだろ」


 自分なりに少し考えてみるが、颯花が困る理由が思いつかない。


「だって、一成が疲れてたら誰がご飯を作るの? 文ちゃんが料理している所は見た事ないよ。今日はうちの親が留守だからアタシが何か作ってもいいけど、味は保証できないよ」


「……へ?」


 颯花の口から発された、予想外の理由に、素っ頓狂な声を出してしまった後、思わず吹き出してしまう。


「笑ったね! アタシは、真剣なんだよ!」


「笑うなって言う方が無理だ! ……帰ったら何か作ってやるから、安心しろ」


 怒る颯花を宥めていると、遠くからサイレンの音が聞こえ始める。

 今までは颯花が頑張っていた。

 ……俺も、今日はもう少しだけ頑張る事にするか。

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