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2話‐7

 アタシに近づいてきた機械人形の腕を掴み、機械人形が密集している場所を目掛けて放り投げる。


「これで、とどめだ!」


 超能力を使って竜巻を発生させ、機械人形目掛けて放つ。

 竜巻に巻き込まれた機械人形は宙を舞い、竜巻の内側で互いに衝突して破損し、最後に地面に衝突することで完全に破壊される。


「……これで全部、破壊できたかな?」


 機械人形の残骸の山が動かない事を確認してから地上に降りて一息つき、倒れている三人のヒーローに視線を向ける。

 何とか機械人形を全滅させることができたが、その代償は非常に大きかった。

 スケーターは機械人形に向けて突撃を行った際に、バナナメンの投げたバナナの皮を踏んづけてしまい、転倒して気絶。

 バナナメンはスケーターが倒れた事に責任を感じて果敢に突撃した所を、モンゴルカッパーの放った一撃に巻き込まれて倒れた。

 モンゴルカッパーは彼らの弔いとばかりにバナナメンの残したバナナでエネルギーチャージをして放った攻撃が暴発して自滅。

 アタシと共に勇敢に戦った三人のヒーローは、こうやって散っていったのだ。

 ……こうして考えると、ほとんどアタシ一人で機械人形を相手していたな。


「た、助けてくれ!」


 倒れている三人を安全な場所へ移動させていると。助けを呼ぶ男性の声が聞こえてくる。

 声のした方向に視線を向けると、黒鉄重工の社長がアタシの元へ駆け寄ってきた。


「ハァ……ハァ……風見君? 君が何故ここに……いや、今はそんなことを言っている場合じゃない! 文君が危ないんだ! 早く助けにいかないと!」


「落ち着いてください。まずは安全な場所まで避難しないと」


 文ちゃんに危機が迫っているというのならすぐにでも助けに行きたい所だけど、社長を安全な場所まで避難させる必要がある。

 機械人形は全て破壊したはずだが、増援が現れる可能性だってゼロではない。

 ここは危険なのだ。


「ほ、他に要救助者が残っているのか?」


 社長に手を差し伸べ安全な場所まで連れて行こうとした時、気を失っていたスケーターたちが目を覚まして起き上がる。


「みんな! もう大丈夫なの!?」


「いつまでも寝ていられないからな。ストームガール、その人は俺が安全な場所まで送り届けるから、君は残りの要救助者を助けに行ってくれ」


「俺とスケーター、バナナメンは後からそっちに行くカッパ。先行して要救助者の元に向かってほしいカッパ」


 ……先ほどは少し頼りないと思っていたけど、こういう時に仲間がいれば、やっぱり頼りになる。


「ありがとう、皆。社長、文ちゃんはどこにいるんですか?」


「私が逃げてきた方向にある非常口の近くにいる。文君の事を頼んだよ」


 ヒーロー達に肩を貸されながらアタシに文ちゃんの事を頼んでくる社長に頷き返し、宙に浮く。


「任せてください! ……皆、気をつけて!」


 共に戦ったヒーロー達に別れを告げ、文ちゃんの元へと飛び立つ。

 ……文ちゃんを追っていた一成はどうなったのだろうか?

 危険な目にあってなければよいのだけど。


「うわっ! いきなり投げるなんて……いなくなってる!?」


 ……一成の事を考えていたから、幻聴が聞こえたのかな?

 そんな訳ないか。

 叫んでいるという事は、何らかの非常事態なのだろう。

 一成の声が聞こえてきた方向目掛けて、一直線に飛んでいくと、文ちゃんを庇うように立っている一成と、スーツを着た男の姿。

 そして、倒れている人達……白金君や月日君、警官達の姿がアタシの視界に入った。


「文! この腕輪の使い方を――」


 何事かを叫んでいる一成の横を通り抜け、スーツの男達目掛けて突撃して吹き飛ばす。


「颯花? 機械人形の方は大丈夫なのか?」


 キョトンとした表情でアタシに問いかける一成に、自信を持って頷く。


「勿論! 皆といっしょに片付けてきた! ……それよりも、今吹っ飛ばしちゃった人が一成達を襲っていたんだよね?」


 明らかに一成達を襲っているように見えたから吹っ飛ばしたけど、アタシが勘違いしているかもしれない可能性に今更ながら思い当たり、一成に問いかける。


「確証なしで……いや、結果オーライだ。助かったよ、颯花」


 一成の言葉を聞いて、アタシの見立てが間違っていなかった事に内心ホッと胸を撫でおろす。


「颯花ちゃん、ついでに警官と兄さんの友達以外のここで寝ているスーツを着たボンクラ共も奴等の仲間だから、外に追い出してくれ」


「了解……文ちゃん、言葉遣いには気をつけようね? 一成、襲ってきた人はこれで全員?」


 能力を使ってスーツの男達を外へ放り出しながら、地面に降り立ち一成達と合流する。


「いや、さっきの男の話だと――」


「お前達、どうした! 誰にやられたんだ!」


 一成の声が、外から響いた声に遮られる。


「……外にまだ仲間がいるらしい。説明する意味無かったな……行くのか?」


「うん。これ以上傷つく人が出ないようにしないと。一成、皆をよろしくね」


 一成にこの場を任せて、外へでる。

 外には先程放り出した男達以外にも、何人かのスーツの男がいて、皆一様にアタシの事に注目する。


「なんだ? こいつら、女に叩きのめされたのかよ」


 アタシがやっつけたのは一人だけなんだけどな。

 ……そういえば、他の男達はどうしてアタシが来た時には気絶していたのだろう?

 まさか、一成が倒したとか?

 ……後で何があったか、聞いてみるかな。


「待て、コイツは見たことが――ストームガールだ! やばいぞ!」


「マジか!? スーパーヒーロー!?」


 一人の男がアタシの事を思い出した途端に、周囲の男達も動揺し始める。


「落ち着け! 俺達だって超能力者だ! 数はこっちが多いし、何とかなるかもしれねえ!」


「そ、そうだ! 皆の力を合わせれば、どんな強大な敵にだって立ち向かえる!」


 一人の男が声を荒げて仲間達を鼓舞すると、仲間も叫んで士気を上げ始める。

 鼓舞の割にはどことなく弱気なのが透けて見えるし、彼等の言葉を聞いていると何だかアタシが悪者みたいな気分になる。

 ……いや、悪いのは展示会を襲撃し、文ちゃんを攫おうとしたアイツらの方なんだ。

 しかし、彼等全員が超能力者となると相性的に不利になるかもしれない。

 何せ、どんな超能力を有しているのかわからない相手が何人もいるのだから。


「いくぞ! 撃て!」


 男の一人が指示を出すと共に、アタシは攻撃を躱しやすいように上空へと垂直に飛翔する。

 男達の目が光り、直前までアタシが立っていた場所を目掛けて閃光が迸った。


「避けられたか。お前ら! 追撃するぞ!」


 宙に浮いてるアタシに目掛け、男達の目から発された光線が迫る……が、その全てを高速で動き、回避する。

 ……全員同じ超能力?

 これまで何人もの超能力者と戦ってきたけど、似たような超能力なら兎も角、全く同じ超能力を有する人は今まで見た事が無い。

 ……今はそんな事を考えている時ではないかな。

 さあ、反撃だ。

 彼等のリーダーを倒せば、大人しくなってくれるかもしれない。

 男達の発する光線を掻い潜り、先程指示を出していた男へと突撃する。


「少し痛いよ、覚悟して!」


 気合を入れる為に叫びながら、男に対して飛び蹴りをお見舞いする。

 上空からの降下で勢いの乗ったアタシの蹴りをまともに喰らった男は、悲鳴を上げる暇もなく吹き飛んだ後に、地面に倒れたまま起き上がらなくなる。


「り、リーダーがやられた! もう、お終いだぁ!」


「あ、諦めるな! リーダーの仇をとるぞ!」


 ……仲間を鼓舞していた男がリーダーだというアタシの読みは当たったけど、残念ながら彼等の士気を余計に高めてしまったらしい。

 男達の視線が、アタシに集中する。


「喰らえ!」


 男達が光線を放つと共に、アタシは光線を躱しながら一人の男に目掛けて突っ込んでいく。

 そのまま殴りつけようとしたアタシの拳は、男によって受け止められてしまう。

 ……受け止めたとしても無駄なんだけどな。

 拳に纏わせた風によって男は無残にも吹き飛ばされ、近くにいた仲間にぶつかって二人まとめて倒れこむ。

 残った男達がアタシに注目するよりも早く、次の敵の元へと移動して倒す。

 拳で殴って、倒す。

 蹴り飛ばして、倒す。

 突風で吹き飛ばして、倒す。

 勿論、男達も反撃を行うが、アタシはその全てを避ける。

 ……何度か同じ様な流れを繰り返し、遂に残った敵は一人になる。


「な、何なんだよ、コイツ! 化け物か!?」


 最後に残された男は一人、アタシを見てその顔を恐怖に引き攣らせながら叫ぶ。

 ……アタシは、震える男に向けて竜巻を起こして上空まで一気に打ち上げる。

 そして、男を追いかけるようにアタシも一緒に飛翔する。

 上空に打ち上げられた男は多分、恐怖によって気絶しながら地面に向かって落ちていく。

 その恐怖が高所から落ちていく事によるものか、それともアタシに対して抱いたものなのかは、本人にしかわからない。

 落下していく男を地面と衝突する前に掴んで助けてやる。

 アタシはヒーロー、殺しはしない主義だ。


「……この力で皆を守れるなら、アタシは化け物でもいいかな」


 地上に降り立った後、男を地面に寝かせてやりながら誰に聞かせるでも無く呟いた。

 ……とりあえず、これで終わりの様だ。

 後は警察を呼んで、彼らを引き渡してしまおう。

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