ミニスカサンタは年を越さないっ!
多分後で書き直すぜよ!
寂しいと思ったことはない。
お父さんもお母さんも、とっても優しくて、暖かくて、仕事が沢山あるのにいつも早くに帰ってきてくれるから。
――ごめんな゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛! 仕事納め出来なくでええええええええッ!
それに、私には弟だっている。あの子は私の事がちょっと苦手みたいだけれど、私はあの子のやりたいコトを応援してあげたいと思ってる。
――あのさ、今年は友達と年越ししたいん、だけど。
偶々、今年は私が一人なだけだ。
使用人さんは一緒に居てくれると言ってくれたけれど断ってしまった。あの人達にも家族が居るだろうから。
「そうと決まれば、いつもはやってない外出とかしてみようかなっ!」
折角のお一人様なんだから楽しまないと……ね!
*
さ、寒ゥーーいっ!? 厚手のコートの内側に冷気が入って、ヒェエーェ……!
「か、帰ろっかなぁ……」
「待っちなさーい、そこのアオハルガールっ!」
……なんだろう、変な人がいる。
「そこのー……えーっと。中学生っぽい女の子!」
え、私?
「いやホントに待って、ちょっ……アッ!」
ズザザァッ! っと、凄まじい音に振り向くと、そこには暗い茶髪のポニーテールの女の人が頭から地面に倒れ込んでいた。
「だだだ大丈夫ですかっ!?」
「あ、ありがとう。さすがわた……いやうん、何でもない。」
何かをブツブツ言っている女の人は、何故か大晦日なのにミニスカサンタの格好で、顔には大きなゴーグルをかけていた。
「なんでサンタ……?」
「それはー……元旦に、サンタさんが幸せを届けに来ましたっ! ……的な?」
「的、な……?」
「さぁ、さあ! 君の願いを言い給えー!」
そういってその人は左手を腰に、右手の人差し指を突き付けてきた。
「そ、そんなこといきなり言われてもわかんなぃですけど!?」
そんな私の声が聞こえていなかったかのように、その人は顔をグィイーッと近づけてきた。
「ふーむふんふん。見えました! 貴女は今、初めての一人での年越しが寂しいと思っていますね!」
「何でそれをっ!?」
「フッフッフーン、カマを掛けたのだよー。所でカマって何ー? マグロ?」
「え、何だろー……?」
(※『鎌』です。)
「そっれはそうとー、サンタさんが願いを叶えて差し上げましょうっ!」
「それはー……ありがたいけれど、知らない人から物を貰ったら、別れる前にお返しをしないと貰うばっかりになっちゃうからなぁ……」
「あ、そっかー……じゃないよ!? アイ・アム・サンタぁ! いわばふぁんたじーな存在なんですぅっ! そーいう現実的なルール的なアレはナッシングな感じなんですぅーっ!」
「ふぇぇえぇ……?」
いやいやいや、サンタさんはもっとお爺さんで大きな人のイメージだったんだけどなぁ……?
「と、も、か、く! クリスマスにプレゼントを配る大人はみーんなサンタさんなのっ! センくんだってそう言ってたもんっ!」
「ええっ、そうなんですかっ!? ……センくん?」
「センくんは私の格好いい後輩君なのです! って、これは言っちゃいけないんだっけ? たいむぱらじうむとか何とか……?」
「たいむ、ぱらじうむ……??」
?????
(※本人はタイムパラドックスと言いたかったようです。)
「というわけでオネーサンが君と一緒に散歩をしてあげましょうっ!」
「一緒、に……?」
ニコニコと笑うサンタコスのお姉さんをジィーッと見つめながら、私はお姉さんと過ごす年越しを想像してみる。
「……楽しそうっ!」
「でっしょーう!? そうと決まれば除夜のベルを弾きにレッツラゴー!」
(※ツッコミ不在ですがもうしばらくお付き合い下さい。)
ミニスカのお姉さんは私の手を握ってズンズンと歩き始めた。
「……お姉さんは、神社への道知ってるんだ。」
私は全然知らない。大体出かけるときは誰かと一緒だから。
「え、私覚えてないよ?」
「……ふぇ?」
「え?」
「「えぇええええええええ!?」」
「お姉さんドンドン行っちゃうから道わかってるのかとぉっ!」
「だってだってだぁってぇーっ! 大人な私が前を歩かなきゃと思ったけど、てっきり私は君がナビゲーションしてくれるのかと……うぅーんでもこのときも確かに道なんて全然覚えて……ふぇえ……」
まさか、私達……マ・イ・ゴ!?
「おおおおおお落ち着いて!? こういう時はそすーを数えれば良いって誰かさんが言ってたっ! ……そすーって何ッ!?」
「そそそそソースの本数の事じゃないですか!?」
「ソース持ってないよ! ゼロだよ! れーほん! アイドントハブソゥースッ!」
「凄いお姉さん外国語喋ってる!? 何語ですか!?」
「多分南アフリカとかその辺ッ!」
「いんたーなしょなるだっ!」
「テンキュー!」
「テンキー?」
「それは確かパソーーーナルなコンヒューマーのキーホールのヤツッ!」
「わあ、物知りっ!」
そうこう言っているとゴーンゴーンと低い音が聞こえてきた。
「……ヒラメ板ッ! もとい閃いたっ! あの音に向かって走れば目的地に着くっ! 筈ッ!」
「ホントですかっ!? そうと決まれば……」
「「競争だぁッ!」」
私達は走り出した。
「って……お姉さん早いよぉっ!」
そして、サンタお姉さんは大人気なかった。
(※相変わらずツッコミ不在ですがまだまだお付き合い下さい。)
お姉さんに追いつく頃には目的の場所に着き……そして息は切れ切れになってたのです。
「はぁ、はぁ……お姉さんズルいなぁ……」
「フーッハッハッハッハーッ! 私も勝ちたい人の為に頑張ってかけっこの練習をしたからね!」
「むー、じゃあ私も今年から練習しますぅっ!」
「フフッ、じゃあ私も負けないようにもぉっと練習しよっと。」
「ずっるーいっ! じゃあ私はそれより頑張りますっ!」
「はーい大人のヨユーで受け止めまーす。」
ムッカーッ! 何かこの人アレだよ! 何か……何か腹が立つヤツだよ! もぉーっ!
「さて、それじゃあ私はここでバイバイだね。」
「……へ?」
頭が真っ白になる。お姉さんは、私と一緒に年越ししてくれるんじゃ?
頭の中がグシャグシャで変になりそうな私に、只々微笑みかけるお姉さん。
「私は散歩に付き合ってあげるとは言ったけど、一緒に年を越そうとは行ってないよ。」
そんな残酷な言葉を浴びせられ、私は裏切られたような気持ちになった。
「……向こうを見て。」
不意にお姉さんがお寺の鐘に並ぶ行列を指差した。そこには、私の見知った顔。
「京、也……? それに、Kちゃんも……」
私の弟とその幼馴染、更には友達であろう子がそこには居た。
「……行ってきなよ。」
お姉さんが私の顔を見つめてきた。
「でも……「私が行ったら皆の邪魔になるかもって?」……っ!」
「……貴女は誰よりも他人の幸せを願って毎日を過ごしてる。でもね、自分が幸せを知らないと、人を幸せには出来ないと私は思うなぁ。」
「……お姉さんは、私の何を知ってるんですか。」
「知ってるよ。少なくとも、この時間の貴女よりはずぅっと色んなことを。」
そう言ってサンタさんは、優しく笑った。
「京也……君は、一人でいるお姉ちゃんの心配をずっとしてたんだって。その事をお友達にしたら、『呼べよぉーっ!』って言われたらしいよ?」
「ぇ……?」
「Kちゃん……有須川ちゃんも、家の中で一人っきりなんて遭難しそうで怖いって……そんなわけないのにね?」
そんな事……あるかもしれない。お家広いし。
「……私の大事な人がさ、『誰かに幸せになってほしいっていうキボーテキカンソクじゃなくて、自分を含めた出会ったことのある皆で笑える未来を掴むっていう馬鹿みたいな具体的目標の方が貴女らしいですよ』って言われたんだぁ……正直、私にはなんの事かわからなかったけど、一文字も忘れずにハッキリ覚えてる。」
「皆で、笑える未来……?」
「うん! その為には〜?」
「私から……笑う……?」
「せーいかーいっ! じゃ、行ってらっしゃい!」
お姉さんはそう言いながら、私のコートの袖を掴んで京也の方向に投げ飛ばした。
「ふわぁあああああああっ!?」
「うおわぁっ!? 姉ちゃん!?」
「楓花さん、何故此処に……?」
「え、えーっと……来ちゃった?」
皆はとっても驚いた顔をしてたけど、直ぐに温かい声をかけてくれて……
振り返ったら、お姉さんは消えていた。
「夢、だったのかな……? ……ぷきゃっ!?」
突然に感じる頭への衝撃。ふと見ると、地面には赤いリボンでデコレーションされた、小さい箱が落ちていた。
「……姉ちゃん、なんでメリークリスマスって書いてある箱持ってニマニマしてんの?」
「なーいしょっ! それはそうと、私を置いていくとは酷いよ京也っ! お姉ちゃんも混ぜなさいっ!」
「ええっ!? 『私はいい』って言ったの姉ちゃんじゃん!?」
「お黙りっ! お姉ちゃんめーれーです入れなさーいっ!」
「それはわかったけどなんか理不尽だな!?」
「先輩こんな所に居たんですかっ! もう、早く元の時代に戻りますよッ!」
「はーい!」
「何にもしてないでしょうね……って、僕が渡したクリスマスプレゼントは……?」
「投げちゃったッ!」
「もうこの人ホントヤダッ!」
「大丈夫だよ、ちゃんと受け取ったから。」
「いや、でも投げたんですよねぇッ!?」
「でーもー、受け取ってるよ。ちゃんと。」
「この人本ッ当に話通じないんだから……」