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慎重さと大胆さ

 訓練、訓練、訓練。

 しかし、とうとうその日がやって来た。実戦参加だ。

「どきどきすんなあ」

「そうやなあ。でも、その姿を見たら、ふざけてるんかと思うわ」

「それは自分もやろ。というか、真矢の方がひどいわ」

 真矢も菜子もフル装備である。つまり、鼻眼鏡と猫耳カチューシャを装着していた。

「まあな。自覚はあるねん」

「緊張感が台無しやな」

「選んでもうたからな、これ」

「慎重に選ぶべきやったけど、あの時は『これや!』と思ってん」

「お互い、ちょっと失敗したな」

 2人は頷いて、空を見上げた。

「慎重で思い出してんけどな、初めての解剖の時、『慎重にいけよ』言われたから、慎重に始めてん。そしたら今度は『アホ。大胆にいけ』言われてん。

 どうして欲しいねんや、思ったわ」

 菜子は嘆息した。

「ああ。そういうのってあるよな。

 体育祭の時の新聞やねんけどな、同じレースの1位と2位の人が載っててん」

「ああ、あるな。うん、わかる」

「1位の人には、『独走』とか書いてあってん。それで2位の人には、『僅差』って書いてあってん。どっちやねん」

 真矢が言い、バスに乗っていた他の隊員も、各々考えた。

「ええ加減やな」

「ええ加減や。

 でも、意外とピッタリでびっくりする事もあるやん」

「ああ、あれ?『人間の直観は、精密ではないが正確だ』」

「それや」

 菜子が、指さす。

「うん。目分量とか手計りとかな」

「仕事柄、長さは大体わかるやん」

「そうやな。それと、ちょっとした重さもな」

「そうそう。これ大体300くらいかな、思いながら秤に臓器のせたら、大体300やし。この骨、43センチくらいかな、思たら、まあそうや」

「うんうん。それでなんとなく気分ええねんなあ」

 2人はうんうんと頷く。

「でもな、料理は迷うねん。少々とか適量とか、わからんわ」

 菜子が文句を言った。

「少々は、ひとつまみとちゃうかったかな」

「ひとつまみもええ加減やで。例えば、作るんが小学生の時と、相撲取りの時」

「・・・」

「一緒か?」

「まあ、多少は違うけど、そこまで変わるか?」

 菜子は、顔を横に振ってチッチッチッと言う。

「多少言うても、場合によっては大事やん。

 億万長者にとっての1万円は多少かも知れんけど、幼稚園児には大金やん」

「まあ、そうやな。子供の頃、100万いうたら大金の代名詞やったしな」

「やろ」

「・・・なあ、菜子」

「なんや」

「昨日、ちょっと多めにパスタ茹でるいうて大量に茹でてたけど、あれ、多少なん?」

「袋が3キロ入りの業務用やったからな」

「全部その言い訳か!」

 菜子は空を見上げ、言った。

「今日もええ天気や」

「おい。しばらく毎食パスタの言い訳がそれなん?」

「空はこんだけ広い。見てみい。パスタ並べても追いつかんで。誤差や、誤差」

「・・・それやったら、あんたがあれ食べや」

「・・・ごめん」

「・・・」

 






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