6話 雨宿りとキザなセリフ
何とか荷物を集め終わり、メアリーは手ごろな木の上に腰を下ろしていた。
「あまり木登りは得意ではなかったので、そんなに登らなくて済んでよかったです・・・」
キザなセリフを吐く謎の生き物はどうやら自分の身長以上のところには行けないようだ。
メアリーのいる木に何とか登ろうとはしているものの、頭が重いのかすぐに転んでしまう。
「全く、何なんでしょうねコレは・・・増える一方ですよ・・・」
謎の生き物はドンドン数を増やしていく。
そして何故かメアリーの木へ向かってトボトボとやってくるのだ。
「ああもおお・・・うっとうしいですねぇ・・・もう少し登りましょうか・・・でも降りるのが大変ですし・・・参りました・・・」
メアリーは何か良い方法は無いかと考えをめぐらせながら、散らばってしまった荷物を丁寧にカバンに戻していく。
衣服をたたみながら謎の生き物の話に耳を傾けてみる。
どうやら話している内容は大体同じ様で、いくつか質問が終わると最初の質問に戻るようだ。
話を要約すると、こうだ。
・空が青いのは悲しみが集まっているから。
・雨は悲しみがいっぱいになると降ってくる。
・雨が木々を揺らすのは話を聞いてと叩いている。
・長い旅をしてたどり着いたけども、残ったのは寂しさだけ。
・寂しくて友達を作ったけどもむなしいだけだった。
・それでも少しは寂しくなくなった。
この話以外にも、この森の生き物の話だったりが出てくるのだが、良く挙がるのはこの6つだった。
この話から察すると、寂しいから話しかけてくる、というものになるのだろうか、
作った友達では満足できなかったらしい、メアリーにとっては迷惑な話だった。
「そろそろ時間もなくなってきたので急ぎたいんですがね・・・」
そう呟きながらあたりを見回すメアリーだが、所狭しと溢れかえる謎の生き物によって地面が見えない状態となっていた。
「本当にやっかいですね・・・ウナギルスの言うとおりでした・・・彼の言う通りならしばらくすると何とかしてくれる生き物が現れるはずなのですが・・・」
既に溢れんばかりの謎の生き物によって埋め尽くされている地上だが、天敵のようなものの気配は全く感じられない。
「いつになったら来てくれるんでしょうね・・・」
雨音とセリフを聞きながら、メアリーはため息をついた。
何とも歯がゆいものである、時間は確実にせまっているものの、また転ぶのはお断りだった。
おそらく地面から出てきたばかりのアレをメアリーは踏んで転んだのだろう。
そう思うと蹴散らしたくなる衝動に駆られるが、倒せる保障も無く、数が数なので考えるまでに留めていた。
「それにしても変な生き物ですね・・・これはどういうものなのでしょうか」
生物は自然界において、大抵何かしらの役割がある。
今の所この生き物は、雨が降ると生えてきてキザなセリフを吐くというだけに思える。
ウナギラス情報ではコレを食べる生き物がいるらしいが、食べられる為だけに発生するような
生物というものは中々考えにくい。
この生き物にも何かしら役目があるはずなのだが・・・
そう考えていると遠くからゴウゴウと強い風の音のようなものが聞こえてくる。
「あの音はなんでしょうか・・・」
メアリーは立ち上がり辺りを見回してみた。
変わらず降り続ける雨の中、遠くの茂みに何か動くものが見えた。
「アレがコレの天敵?なんでしょうか」
動きからするにコチラへ近づいているという訳では無さそうだ。
「うーん早くここのコレを何とかして欲しいんですが・・・」
少しがっかりしていたメアリーにひらめきが降りてくる。
「そうだ!何か当ててコチラに興味を引きましょう!」
ゴソゴソとタスキ掛けのカバンをあさり、短い輪になった紐のようなものを取り出す。
「この距離なら・・・何とか届きそうですね。」
メアリーは足元を見渡し、散らばった荷物にまぎれていた小石を見つける。
ソレを手に取ると、紐をV字にした2本の指に掛け、パチンコのように石を引っ掛け紐を引く。
「あたってくださいよ・・・!」
V字にした指がプルプルと振るえ狙いが定めにくい。
体のどこかに当たればいいやと大まかに狙いを付け石を飛ばす。
ッヒュン
何ともしょぼい見た目からは想像も出来ない速度で石が飛んでいく。
バシィ!と石が何かに当たる音が雨音の中確かに聞こえた。
「当たりましたかね・・・?」
よくよく観察すると、先ほどガサガサとしていた茂みの動きがピタリと止まっている。
外したかな・・・と2つ目の石を探そうと辺りに視線を移した時に。
「いっでえええええええええええええええええええ!!!!」
結構な雨の中、雨音に負けずに確かにその声は聞こえた。
メアリーはウナギルスに言われたことを思い出す。
“『おう、そうそう、あいつらが食われてる時には手を出さんようにな、食事の邪魔をせんかったら
手を出しては来んから、あんたもご馳走食べてる時に邪魔されたら怒るやろ?』”
メアリーは雨とは別の冷たいものが首筋から背中を伝っていくのを感じた。
モチベーションだだ下がりしてたので投稿が遅れました。




