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星環調整師 メアリー  作者: ぺっこり
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5話 我々は何でも知っているのさ


「いったぁあああ!うわっぷぷ・・ぺっぺ!!」


口の中がジャリジャリして気持ち悪い、どこかにぶつけた様であちこち痛い。

一体何が起こったのか、メアリーは混乱していた。

ぼやけた視界に荷物が散らばっているのが見える。

なんとなく状況がわかってくると、怒りが沸いてくる。


「ああああもぉ最悪です!何なんですか!」


苛立ちながらも、とにかくメガネを探す。


「もぉメガネどこですかぁ!!」


散らばった荷物の中を探してみるも見当たらない。


「もぉおおおメガネどこぉおおお!!!・・・・ってズレてただけでした」


斜めにズレていたメガネをかけ直すとようやく状況がわかる。


どうやら盛大に転んだようだ、悔しいような、情け無いような気分になる。

幸い機械類や重要なものはしっかりと収納していたので、散らかっているのは衣類などの日用品だ。

念のために重要なものが故障していないか急いで確認する、中には危険なものもあるので最優先だ。


「・・・大丈夫そうですね、はぁ・・・着替えがよごれちゃいましたよ・・・」


オド雨ではぬかるまないようで、泥だらけにはならずにすんだが、雨で跳ねた砂でかなり汚れている。

とぼとぼと荷物を回収しながら何があったかを思い出す。


「たしか・・・何かを踏んで転んだ・・・と思いますが・・・妙にやわらかかったような」


『キミは空が何故青いか知っているかい?』


「へ?」


唐突に何か問われる、全く別のことを考えていたため、思考がとっさのことで切り替わらず、間抜けな声が出てしまった。


「え、空ですか?それは大気の屈折であおの・・」


『空はね、みんなの悲しみが行き着く場所なんだよ、だから青いのさ』


メアリーの返答にかぶせながら、何かは自分で答える。


『我々は何でも知っているのさ』


この瞬間、メアリーは内心キレた。

盛大に転んだあげく、着替えは砂まみれになり、濡れはしないが雨にうたれながら、何か問われたかと思えば、答えは聞いていないとばかりにメアリーにかぶせてキザなセリフ吐いてくる。

止めは”何でも知っている”だ、ただでさえ空腹でイライラしていた彼女の怒りのボルテージは限界点を突破した。


変なことを言っているのはどこのどいつだと、いぶかしげに辺りを見回す。


すると、そこには何ともいえないが、何かが立っていた。


見た目は人の形をしているが、全体的にのっぺりとしていて、なんだろうか、パンのタネを人の形にしました!といったかたちだろうか、体に比べて頭が大きく、二頭身くらいだろうか・・・顔は・・・無いように見える、そして何かフラフラしている、色は全体的に黄緑だが、まだらな感じだ。

大きな頭は下の大きな雫のような形をしていて上の先端は小さく膨らんでいる、そして先端は淡くゆっくりと黄色く点滅している。


これは・・・なんだろう?


つい先ほどまで怒り心頭といった状態だったメアリーだが、職業病なのか、不可思議なものを見つけると興味が先行してしまう。


汚れや雨や空腹といったものをとりあえず横に置いといて、目の前の何かに興味津々である。

話しかけてきたのはコレなのだろうか?と考えていた時に


『雨が何故降るかしってるかい?』


また質問が聞こえる、今度は後ろからだ、振り返るとやはり良くわからないものがいる。

見た目は同じだが体のまだら模様が違う。


『雨は空の悲しみがいっぱいになったら降ってくるのさ』


『我々は何でも知っているのさ』


またキザなセリフを吐いてくる、この生き物はそういうものなのだろうか?

沸いていた興味も疲れもあって若干うんざりし始めている。


その時、気づいてしまった、どうやらキザな決め台詞を言うと頭の先端が点滅し始めるようだ。


これは・・・いわゆるドヤ顔みたいなもの?


そう考えると置いておいた怒りが思考のドアをノックし始める。


メアリーは見てしまった、ドヤ顔しているヤツの後ろの地面にキザなやつの頭の先端が生えている。


メアリーの眉間にシワが寄り始めた頃、再び質問が聞こえてくる。


『キミは雨が何故木々を揺らすかしってるかい?』


また質問が聞こえてくる、おそらくだろうと思っていたが、生えている先端が揺れたかと思うと、

ふわっと浮くように地面からキザなヤツが新たに現れる。


『『『 キミは・・・ 』』』


気がつくと周りにはたくさんのキザなやつが・・・


あぁウナギルスが言っていたのはこいつらのことだったのか。


(困るって・・・こういうことなの!?)

心の中でメアリーは叫んだ。


なんだか帰りたくなってきたメアリーの周りには、ワラワラとキザなヤツが生えてくる。

質問を無視して急いで荷物を回収する。


(木に登ればいいって言ってましたね・・・)


独り言すら出てこなくなったメアリーは、かなり疲労していた。

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