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飛ばされた先は山賊地帯

「んぅ……」


暖かく差し込む光で目が覚めた。


最初のうちは、頭がボーっとして何があったか思い出せなかったが、じきに意識がハッキリしだし、先ほどまでの出来事を思い出した。


「ハッ、カイル!!って、えっ!?」

「気がついたか」


ガバっと起き上がろうとしたが、私の体は縄に縛られてて動けなかった。辺りを見渡すと、山の中で沢山の男達に囲まれていた。


1人の男が私が起きたのに気づくなり、他の仲間であろう男達に知らせる。


服装、場所、そして武器からして山賊だろう。


「これはどういうこと?」


状況が分からず、とりあえず全力で山賊達を睨むが、鼻で笑われてしまった。それどころか、髪を乱暴に掴まれて、こう脅された。


「死にたくなかったら俺たちの言うことに答えろ」


それは本物の山賊の威圧。騎士達の高潔な威圧とは違い、覇気が淀んでいた。


それもあってか、私は怯えてしまい、嫌々ながら頷いた。おそらく山賊の長であろう男が、私にいくつかの質問を始める。


「さて、聞こう。お前は何者だ?服装からして行き倒れした旅人でもなさそうだ」

「私は……」


本当のことを話していいものなのかと戸惑った。ここで話すとカイルに迷惑がかかるんじゃないかと思ったが、ギロリと睨まれて怖くて話してしまった。




「これ、本物のアルデン王国の貴族の紋章っすね」


1賢そうな山賊の1人が、私の身につけていた紋章を鑑定していた。結果は、本物のアルデンの貴族の紋章だということが判明したようだ。


「あのアルデン王国の国王カイルの愛人……通りで容姿が綺麗なわけか。だが、なんでこんな辺境の森に王妃様がいる?」


山賊の長の形相は睨みつける様子から疑問の表情に変わった。それもそのはず、国の最重要人物がこんな危ない森にいるのだから疑問を持たない者はいない。


ここまで話したら後には引けないと、最後まで話すことにした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ーーこれが私のここまでの経緯よ」

「信じがたい話だが、本当なんだな」


それを聞くなり、山賊たちは私には聞こえないような距離で何かを話し始めた。良からぬことを企んでいるのは間違いなかった。


私はこれからどうなるのかという不安と、カイルへの愛しい想いが交差していた。どっちかというと、不安よりカイルに会いたいという願いの方が強かった。


やがて、山賊たちは話を終えると、先ほどまで話し合っていた内容を私に伝えてきた。


「本当は、お前を奴隷商人に売る予定だったが、気が変わった。お前をアルデン王国への取引材料にする」

「ど、奴隷って、え?取引材料?」

「簡単に言えば、お前をカイル国王に合わせてやる」

「!???」


最初は言ってる意味が分からなかった。なぜ、素性も知れない小さな山賊団が、国王陛下と面会が出来るのか。そして私をカイルに合わせるメリットは特にないはずだ。


私は最初、からかわれていると思っていた。ムスッとした顔をしていると、私が理解できてないことを理解したのか、ため息をつきながらも、きちんと説明してくれた。


「王妃であるお前を助けたという名誉を使ってアルデン王国称号やら財宝やらを貰うんだよ。だから一度お前をカイル国王の元に連れてく。つまりは金のためだ。悪い話じゃないだろ?」

「!!ならーー」

「ただ、連れてくには1つ条件がある」


私の希望に満ちた声は山賊に遮られた。


ーー条件。

そう言われ、最初はビクッとしたが、私は例え心であろうと、体であろうとカイルにまた会えるのなら全て捧げる覚悟だった。故に躊躇いはない。


「条件を言って。カイルに会えのならなんだってする」

「なかなか肝が座ってるな。なら問題ないはずだ。条件は簡単、生きる為に必要なことを習得することだ」


ーー生きる為に必要なこと。


私がまだ幼い頃、私の村を散策しに来たカイルに魅入られ、直接王都に連れてこられ、王宮暮らしだった私は外の世界について何も知らなかった。


だからレイラにも嵌められたし、戦い方すらも知らなかった。


「ここから王都まではかなり距離がある。外の世界を知らないお前を、俺ら山賊ごときが守りきれるわけがない。自分の身は自分で守れ」


その通りだ。戻るにしても、私は強くならねばならなかった。


故に私の返事は1つ。


「わかったわ、あなたたちに従う」

「良い返事だ、縄を外してやれ。……それと、名はなんという?」


山賊の長からはすっかり嫌なオーラが消え、悪そうな笑みだけが残っていた。


下っ端っぽい山賊達に縄を解かれながら、私は今の名を口にした。この頃の希望に満ちた私の名前。いつも名乗っていた私のセリフ。


「私の名前はアリア・エスタニア。カイルの恋人にして、アルデン王国の継承者の妻よ」


かなりのドヤ顔でそれを言ったため、そのセリフを聞くなり、山賊達はどっと笑った。



ーーこの後のひと時は本当に楽しかった。もしかしたら、今考えればここで私の旅路を終わらせてた方が、良かったのかもしれない。


だけど、私はーー


あの日、運命の分岐点まで残り30日

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