ボーイズ・ビー・アンビシャス
「あの子ね、すっごく強くなったのよ」
「へぇ」
「あんた、今会ったらぶっ飛ばされちゃうかもね」
酔いの回る、濁りのある酒だった。
「ぶっ飛ばす?あいつが?俺を?」
「昔から正義感っていうの?強かったじゃない。あんたが私を瓶でぶっ叩いてる時とかさ」
「あぁ」
灰皿にポトんと灰を落として続ける
「母ちゃんをいじめるなだとかなんとか」
「そうそう」
「もう子供じゃないんだし、そういう愛情もあることくらい、気付いてもいい歳じゃないのかねえ」
「調子の良いヤツー」
ちぇ、と口を鳴らす
「すっかり歳をとったな」
「お互い様にね」
「もう随分とババアだな」
「あんたもジジイだ」
「口の減らないババアに変わりはないな」
飾り気のない居酒屋で
良くいえば味があるだろうか
遠くで老いた夫婦が何かを話している
何を話しているかは聞き取れなくて
私達に重ねたけど
そこまで綺麗ではなかったのでやめてしまった。