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009,死霊術師Lv2



 買い物を済ませたあと、一旦装備をすべて着用してもらって、ルトには様々な動きをしてもらった。

 スパイクブーツは今日実際に使っていたのでいいとして、防振・防滑手袋鉄板仕込みは、大きな骨をしっかりと保持できるようになり、いつもより力強く振れているような気がする。

 さらに、胴体には防刃仕様のタクティカルジャケット。

 下半身には、同タイプのタクティカルパンツを購入してみた。

 おかげで、骨が見えるのは首から上だけとなっており、ジャケットに付属しているフードを深くかぶれば、なんとかスケルトンにはみえないくらいにはなった、たぶん。


 いや、別にスケルトンであることを隠す必要はないんだけどね。


 ジャケットとパンツはフリーサイズ(魔法)は必要なかったので、ちょっと安く済んだが、それでも両方合わせて7300円したので、残金は110円だ。

 ジュースが一本買えるぜ! 消費税ないからな!


 だが、これで頭骨を除いて装備が揃った。

 ジャケットとパンツは間に合わせ感が強いけど。

 でも、一応防刃だし、日本で買えるようなタイプとは違って、かなり本格的なものなのでそれなりに使えるだろう。


 カルピスソーダを飲みながら、軽快に動くルトを見ていたが、幼女の舌に炭酸はちょっときついらしい。

 飲めないほどではないが、しゅわしゅわが響く。

 次からは炭酸じゃないのを選ぼう。


 動きに支障もないようなので、ルトに確認作業の終了を告げたが、本骨はまだまだ動き足りないご様子。

 装備が汚れるのが嫌なようで、全部脱いで綺麗に畳んでからポチたちとともに庭を駆けずり回り始めた。

 本当に、君たちは庭で遊ぶの好きよね。


 まあ、寝るまでは好きにしたらいいさ。

 オレの就寝時間になってもやめなかったら、また怒るけどね。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 初日に怒ったからか、寝るときにはルトたちも庭で遊ぶのはやめてくれたので、ぐっすりと眠れた。

 迷宮探索で疲れていたのもあっただろうけど。


 朝の諸々を済ませ、出かける準備を整える。

 今日は昨日の続きで迷宮探索……と言いたいところだったが、ちょっとやることができたので、外の世界へ行く。

 ルトたちにもそのことは昨日のうちに伝えてある。


「そいじゃ、新しい下僕をゲットしにいこー」


 幼女の元気な掛け声に合わせて、ルトとポチが反応してくれるけど、狼ズは無反応だ。

 やっぱり命令がないと何もしないんだな。

 まあ、だからこそ名前つけてないんだけど。

 ルトとポチは自由意思があるから名前をつけたのだ。

 新たな下僕を手に入れたら、ルトたち同様に自由意思があったら名前をつけることにしている。

 まだ、半分の確率でしかないからね。

 検証しながらやっていこうと思う。


 ちなみに、新たな下僕が使役できるようになったことがわかったのは、タブレットのステータスが変動していたからだ。

 Classの死霊術師がLv2となっていたのだ。


 ===

 Name:ソラ

 Class:死霊術師Lv2

 Skill:下級下僕使役Lv1 使役数増加Lv1

 ===


 これにより、使役可能数が二体増えて、最大で六体になった。


 死霊術師のClassは、Lvが上がることによって最大使役数が上昇していく。

 Lvは魔物を倒すことによって上がっていくが、当然ながらオレは戦闘に参加していない。

 使役している下僕が倒した魔物でも、Lvが上がるのが死霊術師なのだ。

 というか、それ以外に魔物を倒せないしね。

 何にせよ、これであと二体下僕を増やせる。

 数は力だよ、兄貴!


 ぞろぞろと引き連れて玄関に向かうと、いつもの手順でルトが出て行く。

 問題ないというジェスチャーを受けて、狼ズが出て、オレ、ポチと続く。

 今日の草原は少し薄暗い。

 空を見上げてみれば、かなり曇っており、雨がいつ降り出すかわからないような状態だった。


「晴れててくれてもよかったのに……」


 ちょっと愚痴りながらも、草原を宛てどなく進んでいく。

 使役数が増えたとはいっても、使役する対象がなんでもいいというわけではない。

 ネズミの王国の通路は、ルトと狼ズが並んでちょうどいいくらいの幅しかない。

 ほかの迷宮も同じくらいの通路の幅なのか、と問われるとそうでもないみたいだが、基本的には勇者と数人の仲間が探索するサイズで作られている。

 姉神も現地の生物に憑依したりして参加していたしね。


 前衛は足りている感じなので、今回は後衛がほしい。

 特に魔法とか使えたりすると、オレの中のファンタジーが満たされるのでぜひ欲しい。

 だが、そんなにうまいこと出会えるとは思えないし、もし出会えても倒せなければ意味がない。

 オレは死霊術師だしね。死んでないと使役できない。


 それに、狼でも無駄ではない。

 Classの死霊術師はLvアップしたが、Skillのほうは変化がない。

 ガイドブックには、Skillの成長させ方も載っていて、成長させたいSkillに関連する行動をとることによって成長するそうだ。

 オレの持っているSkillは、下級下僕使役Lv1と使役数増加Lv1。

 どちらも下僕を使役する以外に関連する行動など思いつかない。


 だが、使役は結構魔力を使うので、一日にそう多くやれるわけではない。

 それでも、十回くらいならやれそうな気がする。

 なので、狼とか目的以外の魔物を仕留めたら、使役するだけしておいて確保しておくのも手だ。

 目的の魔物を倒せたら、使役を解除してしまえばいいのだ。

 ちなみに、使役解除は魔力消費なしで可能。

 間違って解除しないように、手順はちょっと複雑だけど。


 ガサガサと、ルトが踏み潰して歩き易くしてくれたところを歩いていく。

 スパイクブーツは今日も絶好調のようだ。

 ただ、狼ズは草の中をスイスイほとんど音も立てずに進んでいる。

 ここがあの子たちの元フィールドだったんだから、動きやすいんだろうな。


 そのまましばらく進んでいると、空がゴロゴロと言い始めた。

 まだ雨は降ってないけど、時間の問題だろう。

 傘もないし、ローブにはフードがついているけど、耐水仕様なのかどうかちょっとわからない。

 雨の心配をしていると、ルトから止まれの合図があり、数秒後には腕を振りかぶっていた。

 草の海に放たれたのはお馴染みの大きな骨。

 重い激突音と同時に獣の悲鳴。

 さらに、間を置かずに何匹もの獣が争う音が聞こえてくる。

 ルトとポチはオレの側を離れず、静観の構えのようだ。


 そのまま一分もしないうちに争う音は聞こえなくなり、狼ズが彼らと同じ狼の首を咥えたまま戻ってきた。

 毛並みの良さや汚れ具合で、狼ズとの違いはすぐわかった。まあ、多少返り血で汚れていたけど。

 何より、ルトが警戒していなかったからね。

 狼の死骸を持ってきた狼ズは、また草の海に入り、もう一匹死骸を持ってきた。

 どうやら、今回は三匹の群れだったようだ。

 群れというには少ないので、たぶん狩りに出ていたのではないだろうか。


 それにしても、ルトの先制と狼ズの奇襲攻撃は強いな。

 数が少なかったのもあったが、戦闘開始から一分も経たずに殲滅が完了しているのだから。


「ほいほいっと」


 予定通り、狼二匹に下級下僕使役を行使し、一匹は解除して、最後の一匹も使役する。

 今回は損傷もひどくなかったので、魔力を追加徴収されることもなかった。

 残りの魔力は全体の八十パーセントくらいだろうか。

 意外と消費しなかったな。


 ちなみに、どうやら使役を解除すると灰になってしまうようだ。

 魔石が取れたらラッキー程度に思っていたが、それも無理だった。

 持ってきたタブレットでステータスを確認したが、変化はない。

 マップも真っ黒で反応していないので、やはり迷宮専用の機能のようだ。


 自由意思があるかどうかの確認も行ったが、三匹ともだめそうだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 雨が降りそうで降らないまま、草原を移動する。

 遠くでなんども稲光が確認できたが、ここに落ちるということはまずないだろう。

 あれから、合計十六匹の狼に襲われたが、そのすべてを奇襲で殲滅できている。

 狼ズの数が増えたのがかなり大きい。

 狼の群れも、最大で五匹くらいまでしかおらず、一体ずつ仕留めることができているからだ。

 途中、新参の狼が反撃を受けてダメージを負ったが、動きにまったく支障はなさそうだった。

 治療手段がないので、すぐに使役を解除して新しい狼と交換したけど。


 さすがに十六匹もの狼を全部使役していては、魔力が尽きてしまう。

 途中からは目的の後衛用下僕のために、魔力を温存していくことにした。

 魔石を取り出した死骸に関しては、持っていっても意味はないので放置だ。

 狼が共食いをするのかは知らないが、しなくてもそのうち地に還るだろう。


 かなり草原を移動してきたが、まだまだ草の海は広がっている。

 遠目に見える山さえも近づいた気がしない。

 一体どれだけこの草原は広いのか。


 そして、狼しかいないことに少し落胆しながらも先へと進む。


 何度目になるだろう、ルトの停止の合図が見えたのだが、今回は様子が異なっていた。

 なぜなら――


「ぐえっ!」


 いきなり、ポチに引っ張られて変な声をあげてしまったのだから。



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