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007,通販アプリ



 空中に鍵を差し込み、部屋へのドアを潜る。

 オレは汚れていないけど、戦闘していたルトや狼二匹はかなり返り血に塗れている。

 足も通路をそのまま歩いていたので、結構汚れてしまっている。

 やはり雑巾を用意しておいてよかった。

 そして、戦闘組は足を拭いたらそのままお風呂場で血を落としてもらう。

 お昼を食べて一休みしたら迷宮探索の続きをするので、部屋が汚れない程度で構わないとちゃんと言っておいた。

 そう言わないと、ルトが完璧に汚れが落ちるまでお風呂場からでてこないだろうからね。

 昨日狼二匹を綺麗にしたときの時間のかけっぷりがすごかったし。


 ポチは護衛に徹していたので足を拭くだけで済んでいる。


 ローブを玄関に移動させたポールハンガーにかけ、鍋ヘルメットはもういいかなと思いつつ、手を洗う。

 実際、相当な数の大ネズミを倒したが、オレまで到達した大ネズミは一匹たりとていなかった。

 ポチも護衛についているし、正直なところ鍋ヘルメットは邪魔だったので、午後の探索に被っていくのはやめよう。


 冷凍庫から冷凍ご飯を取り出してレンジに放り込み、補充されていたステーキ肉と野菜を適当な大きさに切って炒める。

 汁物も欲しかったので、インスタントの味噌汁を探したがなかった。

 味噌はあったので、仕方なく大根とジャガイモの味噌汁を作ったが、数日くらいなら持ちそうだし、よしとしよう。


 お昼が完成する前にはルトたちの洗浄も済んだようで、狼二匹はルトとポチに連れられて庭に出ていた。

 あれだけ戦闘しても、遊んでいる余裕があるのだからすごいな。

 まあ、アンデッドに疲労の概念があるのかどうかは知らないけど。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 お昼を食べて、片付けも済ませた。

 そういえば、ルトって料理や片付けとかもできるのだろうか。

 でも、あの有能なルトが率先してやらないところをみると、そうでもないのかな。

 なにせ、狼の洗浄やら風呂掃除やらは率先してやってくれている。

 そのうち部屋の掃除なんかもやりだしかねないけど、綺麗になるならそれもありだろう。


 午後の探索はもう少し食休みをしてから行うことにして、まだ残っている魔石をすべてタブレットに押し付ける作業を再開する。

 午前中の成果は、なんと7,500円。

 大ネズミ一匹で30円なので、二百五十匹も倒した計算になる。

 ずいぶんいたなぁ。


 これだけあれば、少しいいものが買えるかな?

 いや、そうでもないか。

 いいものは高い。それは日本でも通販アプリでも変わらない。

 でも、防御力や攻撃力が書いてあるわけでもないから、値段や商品説明、使われている素材なんかからしか判断ができない。

 ちなみに、出品者の欄はない。

 ブランド名で検索もできないので、ちょっと面倒だ。

 もちろん、レビューも評価もない。


 こうやってみると、密林や某カードマンでお馴染みの通販サイトは便利だったのがわかる。

 もちろん、レビューや評価を鵜呑みにはできないが、目安にはなるしね。


 オレひとりで選んでも仕方ないので、肝心の使用者に選んでもらおう。


「おーい、ルト! ちょっときてー!」


 ちょうど庭でバク宙して足で骨をキャッチしていたルトを呼ぶ。

 なにやってんだあいつ。

 一緒に遊んでいたポチと狼ズもやってきたが、君たちの分はさすがに無理だと思うぞ。


「ちょっとお金貯まったから、ルト用の武器買おうと思ってね。どれがいい? 好きなやつ指差して。いいのなかったら首振って」


 棍棒で検索してでてきた結果を、安い順にソートしてルトに見せる。

 だが、ルトは今のところ買えるものの中からは選んでくれなかった。

 むしろ、防具のカテゴリー欄を指で差して、武器はいいから防具を見せろと催促までしてくる。

 そんなにあの骨がいいのか。このスケルトンめっ。


 まあ、いい。

 防具も大事だし、そっちがほしいというのならそれでいいだろう。


「そんで、どの部位がほしい? 全部は無理だし、買えても一部位だけだぞ?」


 防具のカテゴリー一覧を表示させ、どれが欲しいのか選ばせると、ルトは靴を選んだ。

 靴にも色々とあるので、さらに細かく選ばせていくと、バトルブーツという戦闘用に様々な補強やギミックがついた靴のカテゴリーに最終的に行き着いた。

 さらに安い順にソートすると、今度は予算内のものをきっちりと選んでくれた。

 ルトが選んだ靴は、つま先に鉄板で補強してあり、靴底のスパイクがかなりエグいものだった。

 名前は、スパイクブーツとある。

 お値段、5600円。

 素材は、牛の魔物の革を使っているみたいだ。

 デザインも結構かっこいいし、いいんじゃない?


「あ、でもルトの足のサイズってどうなるの、これ?」


 今まで気にしていなかったが、ルトはスケルトンだ。

 普通の人間のサイズのものを買っても、肉がない分小さくなってしまうだろう。

 そのことに思い至ったが、ルチがなにやらタブレットの画面を指差したことで問題は簡単に解決した。

 なんと、サイズの欄にフリーサイズ(魔法)というものがあり、ほかのサイズと比べて追加料金が発生するが、最初に履いた者のサイズに自動調整してくれるというものがあったのだ。

 一度サイズ調整されると、そのサイズで固定されるがこれならルトにもぴったりのものが買える。

 追加料金も、1000円とお手頃だ。

 日本でもこのサービスやってくれないかな、ほんと。


 ちなみに、通販アプリでの購入は消費税とかかからない。

 そもそも、ここ日本じゃないしな。


 さっそく購入して、すぐさま届いたスパイクブーツをルトに履かせる。

 庭を歩くには靴底のスパイクが地面を削りすぎている気がするが、本骨はかなり嬉しそうだ。

 ポチもルトの喜びように釣られて骨の尻尾をはちきれそうなほど振っているし。

 狼ズは、まあ自由意思ないしね。仕方ない。


 あんなに喜ぶとは思わなかったので少々驚いたが、買ってよかった。

 防御力や攻撃力が明記されていないから、次々強力な装備に買い換えるということも少ないだろう。

 ただ、ルトは蹴りも使うからそれが心配だ。

 あんなに喜んでいるので、傷ついたり破損したりしたら悲しみそうだからね。

 だが、それを嫌がって攻撃しないのも本末転倒だ。

 そこは有能なルトのことだから、しっかりわかってるとは思うけど。


「ルト、ちゃんと蹴りも使って攻撃してくれよー」


 念のため、庭を飛び回っているルトにそういうと、声が聞こえた瞬間のポーズのまま止まってしまった。

 ……おい、大丈夫だろうな。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 午後の探索を開始すると、オレの心配は杞憂に終わったことがわかった。

 ちゃんとルトがスパイクブーツを有効利用していたからだ。

 特にエグいスパイクを活かした踏みつけがすごい。

 二階層からは、大ネズミのほかにも鋭い牙を持った一回り小さいサイズのネズミ――牙ネズミもでてくるようになった。

 だが、ルトたちにかかれば牙ネズミが増えても大した違いはない。

 違いは大きさと牙の有無だけだし。

 一切被弾していないルトたちにかかれば、少し的が小さくなっただけのネズミだ。

 むしろ、スパイクブーツで踏み潰すのにちょうどいいくらいだった。


 一階層と二階層の違いはほかにもあり、ほぼ一本道だった通路に分岐が増え始めた。

 とはいっても、迷路のようになっているわけではなく、どちらを通ってもつながっていたり、ちょっと遠回りになっていたりといった程度のものだった。

 分岐している意味があるのか、いまいちわからない。


 今回は一階層とは違って、階段の位置が読めなかったので、分岐もどちらも通って確認したりしていた。

 無論、二階層も魔物は大群で襲い掛かってくる。

 だが、スパイクブーツ以外にも慣れがでてきたのか、ルトの殲滅速度はどんどん早くなっていっている。

 対して狼ズは、全然変化がない。

 相変わらず淡々と噛み殺しているし、前足なんかで器用にネズミの背中を抑えて動きを封じたりもしている。

 しかし、それらは一階層でもやっていたことなので、特に驚きはない。


 いや、初めてきた迷宮で、もう慣れて処理速度が早くなっているルトがおかしいのだ。

 ほんと、この子有能すぎる。


 ちなみに、ポチは相変わらずずっとオレの側で護衛をしている。

 ルトと狼ズで戦線を支えきれなくなるような状況になるまでは、ポチの出番はないのだろう。


 それにしても、オレのやることが地味すぎる。

 戦闘で役に立つことはまずないし、魔石を拾ってタブレットに押し付けてばかりだ。

 マップをみてはいるが、進む方向はポチに頼んでいるし。

 最初に思っていた感じと違うのは否めない。

 でもそれはきっと贅沢な悩みというものなのだろう。


 ああ、でも攻撃魔法とか使ってみたいなぁ。

 死霊術師だから、闇系の攻撃魔法とか似合いそうだよな。

 褐色ダークエルフっぽい幼女なんだから、使えるようにならないかねぇ。


 おっと、そんな妄想をしていたら戦闘が終わっていた。

 ルトたちはすでに魔石の回収を始めているし、オレもボケっとしているわけにはいかない。


 ちゃちゃっと拾って進むぞー。



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