039,防具
投稿頻度を週二に変更します。
フレイムリンクス戦の後処理を行ったあと、グンドたちと別れてドユラスの街へと帰還した。
前回とった宿とは別の宿に部屋を確保すると、とっとと部屋へと戻り、事前に部屋に入れておいたイリーたちフレイムリンクス二頭の洗浄などをさせる。
さすがに、あれほどの巨体になるまで成長したイリーたちなので、体についたノミや汚れなどもすごいものかと思ったが、火魔法を得意としている上に、山猫ということもあって、思っていたほどではなかったようだ。
それでも、狼たちを洗ったときにも使ったノミ取りシャンプーが十本は必要になったが。
まあ、巨体なのでこれくらいは覚悟していたし、今となっては大した出費でもない。
入念に綺麗にしたかいあって、イリーたち二頭はふかふかの毛で実にもふりがいがある姿になってくれた。
特に二頭とも見上げるほどに大きいので、オレが全身でその毛を堪能してもしたりないぐらいだ。
実によい下僕を使役できた。
戦力もすごいだろうし、最高じゃない?
氷室に確保してあるアーマーリンクスの死骸だが、いくら冷やしてあるとはいえ、早急に処理すべき案件には変わりない。
庭の温度は暑すぎず、寒すぎず、春のような麗らかさではないが、適温といえる温度だ。
通販アプリで大量購入した氷のおかげで、冷凍庫というほどではないが、かなり冷やせているが、それでもやはり冷凍庫には及ばない。
しばらく放置していれば、当然影響がでてくるだろう。
今日は残った魔力はギリギリまで使って使役と解除を行ったので、あとは明日だ。
ちなみに、使役したアーマーリンクスの中で、自由意思持ちは三頭ほどいた。使役枠にまだ余裕があるので、この三頭はキープしてあるが、数が数なのでもっと増えるだろう。
そのときは仕方ないが使役を解除していくしかない。
自由意思持ちのアーマーリンクス三頭には、これまで通り名前をつけてある。
見た目はほとんど変わらないが、よく見れば若干タレ目な子がポーリ。
少し鋭い目つきの子が、ケーリ。
山猫のくせに糸目な子が、クーリ。
イリーが率いていただけあって、イリーに特に敬意を払っている感じが伝わってくる。
この三頭はそのままイリーに率いてもらう形でいいだろう。
もう一頭の自由意思持ちではないフレイムリンクスについても同じだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
グンドたちが戻ってくるまでに、あと二、三日はかかる。
ただそれは、話がスムーズに済んだ場合の話だ。
岩山からフレイムリンクスが撤退した確証を得るための調査や、鋼要塞がふたりを残して壊滅したことについても冒険者ギルドから色々聞き取りがあるだろう。
特に、実質的な最高ランクである魔法銀証級の鋼要塞の壊滅は大きなニュースだ。
魔法銀証級は最高ランクというだけあって、それほど人数は多くない。
鋼要塞だけしかいないわけではもちろんなく、彼ら以外にもこの国だけでほかに五つのパーティがいるそうだ。
迷宮都市には、もっといるそうだが、冒険者全体からみれば圧倒的に少ない。
そんな魔法銀証級パーティのひとつの壊滅だ。
冒険者にとっても、それらに依頼を出す貴族や豪族にとっても大きなニュースとなる。
特に、パーティの壊滅はほかのパーティや貴族たちにとってみれば、引き抜きのチャンスでもある。
ここぞとばかりに、取り込もうと躍起になるはずだ。
だが、その辺に関しては、グンドが仕えるべき主を見つけたと報告することで問題はないだろうと言われている。
もちろん、詮索はされるだろう。
だが、誰に仕えるかなど、話す必要性はない。
しかも、仕える、という言葉から連想されるのは、ほとんどが相手は貴族だ。
封建社会全盛期のこの国で、冒険者程度が貴族相手に余計な詮索をするというのは、かなり分の悪い賭けになる。
ただ、その代わり、貴族が相手となるとまた話は別になってくる。
だが、貴族は貴族で上下がはっきりしているので、相手次第だが、黙秘するかどうかは決められる。
先に名乗らなければ無視するかギルドを通せばいいし、名乗った場合も上下を見極めて返答すればいい。
こちらは、バードッグ伯爵家の家紋入りの短剣をマクドガルからもらっている。
迷宮都市を納めているバードッグ伯爵家当主に謁見するために、もらったアレだ。
それを見せれば伯爵家未満の勢力は引くしかない。
もし、伯爵家以上、つまりは同じ伯爵家やそれ以上の貴族や王族なんかがでてきたら問題だが、ドユラスの街にそんな大物が滞在しているという情報はないそうなので大丈夫だろう。
そういった貴族の手のものが接触してきても、魔法銀証級の冒険者というのはそれ個人で冒険者ギルドの後ろ盾が大きく得られる存在だ。
まずは冒険者ギルドに話を通し、部下ではなく、当主かそれに準ずるものが直接顔を出すのが慣例になっているらしい。
魔法銀証級というのは、それだけ特別なのだ。
さすがは、腐っても最高ランクというわけだ。
これだけ聞くと、戦力としてとてもすごそうに思える。
しかし、うちの子たちをみればわかるように、魔法銀証級であっても主力をはれるとはとても思えない。
魔法銀証級といっても、その中では下から数えたほうが早いらしいし。
それでも、リウルやリーンよりは遥かに強いのは確定している。
まあ、鋼要塞というパーティ名通り、防御能力に特化したパーティなので、火力ではなく、防御力に期待したい。
今回のフレイムリンクス戦でわかったように、熟練した魔法使いが相手だと、後衛のオレたちが狙われるとなかなか厳しいことになる。
今まではなんとかなったし、魔法障壁の魔道具もあるから大丈夫だとは思うが、それでも今後力を入れるならここだろう。
守りを固めるはいいことだ。
守りといえば、防具関連も充実させるべきだろう。
特にオレはあまりそちら側には頓着せずにここまできてしまった。
資金にも余裕ができたわけだし、この辺でオレ自身の防具をきっちりと固めることにする。
イリーたちの戦力を確認するために、迷宮に突撃したいところを我慢して、通販アプリでいろんな防具をみていく。
知っての通り、オレは柔肌ぷにぷにの正真正銘美幼女だ。
その柔肌ぷにぷにっぷりは筆舌に尽くしがたいほどの幼女っぷりなのだから、普通の防具ではちょっときつい。
鎧下を着用して金属鎧に身を固める、なんてことをやったら動けなくなるのは必至だし、鎧下があっても肌を痛める。
なるべくなら遠慮したい。
普通に防御力を求めるなら、金属鎧が最適解となるが、それは資金次第でいくらでもなんとでもなるのだ。
そう、魔法障壁の魔道具のように、魔法の力を使った防具を購入すれば!
「ソラ様、こちらのローブはいかがでしょう?」
「キツネ耳と尻尾付きか。尻尾に土壁の魔道具が内蔵してあるのか。でも土壁かぁ。せめてそこは石壁クラスがほしいところじゃない?」
「それはそうですが……。ほら、お値段的な問題もありますし」
「まあねぇ……」
金属鎧のような、金属による防御力を期待する場合、どうしても重さや摩擦によるダメージが問題となる。
なので、オレが購入すべきは初期防具でもあるフード付きローブみたいな軽くて肌にも優しい繊維でできたものだ。
魔道具のような魔法の力で防御力を高めているタイプであれば、下手な板金鎧も防御力があるし、今回みているようなタイプなら魔道具としての機能まである。
ただやはり、魔道具としての機能はおまけ的要素なので多くを期待することはできないようだ。
どうしても期待したいならもっと高いのを選ぶ必要がある。
とはいっても、土壁の魔道具が仕込まれているローブですら、百万単位だ。
しかも、ディエゴたちが使う土壁のような強度を期待してはいけない。
彼らの魔法は、オレの下級下僕使役によって強化されているのだ。
ただの魔道具で使える魔法と同じだと思っていると足元を掬われることになる。
「では、こちらのクマ耳のローブはどうでしょう? 魔道具としての機能を省いて防御力に特化させているようです」
「んー。やっぱりこれかぁ。予算的にも防御力的にも妥当だしなぁ」
予算として考えている金額の範囲内では、大抵のものに魔道具としてのおまけ機能がついている。
だが、そういう機能を省くと、少しだけ防御力が上乗せされるタイプがほんの数点だがあった。
おまけ機能を使えば、簡易的な魔法幼女ができるので渋っていたが、やはり当初の予定通りに防御力重視でいこう。
おまけ程度の魔道具では無双は無理っぽいしね。
魔法障壁の魔道具やなんやかんやの出費で、残りの資金も約百四十万円くらいになっていたが、今回のクマ耳の魔法ローブの購入で、一気に底をついた。
ただ、グンドたちを待っている間に迷宮探索を進めれば簡単に取り返せる額でもある。
普段は五時間から六時間程度しかしていない探索も、ドユラスの街に滞在するのだからがっつり行える。
リウルは情報収集のために街で行動してもらうが、元々戦力としては期待していないし、イリーたち、フレイムリンクスやアーマーリンクスが追加されたことで火力はさらに向上している。
殲滅力は今までの比ではないはずだ。
防具はローブのほかにも腕輪や指輪、首飾りなどのアクセサリーでも魔法のアイテムなら十分な効果を持っている。
重量物を装備できないオレの防御力向上目的としてはこれらが候補だろう。
百万単位のお金を払うだけの価値はある。
そのためにも、ガンガン魔物を殲滅して資金を稼ぐとしよう。
いくぞ、みんな!
気に入ったら、評価、ブクマ、よろしくおねがいします。
モチベーションがあがります。