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028,プレハブハウス



 ルトたち用に、プレハブハウスを購入してみた。

 震えるほどに感激していたリウルとは対象的に、ルトたちは装備を収納にそれぞれ仕舞うと遊びを再開している。

 彼女たちにはプレハブハウスはあまり魅力的には映らなかったようだ。

 まあ、それでも装備の収納場所として、今までのディエゴの土操作で作った簡易な置き場よりはマシだろう。

 衣類や防具に関しては、さすがにオレの部屋の隅に置いてたけどね。


 リーンが若干羨ましそうな目でプレハブハウスをみていたが、君はあのプレハブハウスなんかよりもずっとしっかりした部屋で生活しているのだが?

 まあ、最終的には全員にそれぞれ個室を与えてあげたい。

 それまでは我慢してもらおう。

 資金に関していえば、それほど遠い未来というわけでもないわけだからね。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 お昼を食べて食休みに、ルトたちを眺める。

 ディエゴが作った高層アスレチックは、日々の改良によって今や様々な地形を模したものになっている。

 それを、身体能力の高さを活かして自由自在に動き回っているのだ。

 以前日本でみたパルクールの動画を彷彿とさせる。いや、それ以上の動きだ。


 リウルでさえ、動画顔負けの動きをしているのだからすごい。

 ルトたちに比べて格段に戦闘能力が低いといっても、そこは鉄証という一人前の冒険者をやっていただけある。

 それでも、ルトたちの動きにはまったくついていけていないのだから、彼女たちのすごさがわかるというものだ。


 まあ、こういったアスレチックのレースの場合、一番はポチなんだが。


 ルトたちのレースの三周目が終わったところで、声をかけ、馬車の用意をさせる。

 今日から午後は迷宮都市への移動へ費やされることになる。


 御者はリウルが務め、護衛に騎乗したルトとポチ、ブラックオウルと狼が三頭。

 狼は、草原にいた種類よりも格段に弱い。

 それでも、三頭いれば数の利もあり、一頭だけよりは強い。


 妹神の幻術魔法のおかげで、外の世界でも下僕たちの姿は問題ない。

 明らかにスケルトンなルトも、活発そうな中学生くらいの少女に見えるし、ポチはふさふさもこもこのサモエドみたいな犬だ。

 狼とブラックオウルも若干マイルドになって親しみやすくなり、ディエゴや切り株お化けに至っては小柄な老人だ。

 リウルとリーンはそのままで問題ないようで、幻術魔法がかかっていもみたい目は変わらない。


 護衛がいるという抑止力目的のルトだが、見た目的に侮られる可能性がある。

 だが、狼とポチがいるので、大丈夫だろう。

 リウルの話では、狼や犬などをつれている人はそれなりにはいるみたいだが、四頭もいるのは稀だそうだ。

 それだけ飼いならしているのは、それだけ腕がよいという証でもある。


 まあ、ルトひとりでも護衛としては十分だけどね。

 盗賊程度ならひとりで瞬殺してくれるだろう。

 その前に、ディエゴとブラックオウルの魔法で殲滅されると思うけど。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 街道を馬車が走る。

 舗装されたアスファルトの道なんて当然ないので、凸凹が目立つ土の道だ。

 大きな穴なんかはないものの、何の仕掛けもない馬車なら揺れが酷くて死ぬ思いをしていたに違いない。


 だが、現代技術を詰め込んだこの馬車は、そこまで揺れない。

 いや、全然揺れないわけではないが、死ぬほどではない。

 それでもやはり、道のコンディションが悪いので、庭で試走したときとは比べ物にならないくらいには揺れる。


 おそらく、もっとスピードを落とせば揺れもマシになるのだろう。

 だが、我慢できるレベルでもあるので、リウルたちにはこのままのスピードを維持させている。


 ぎりぎりタブレットで読書もできるし。


 狼に跨っての移動では酔ってしまったが、元々走行中の車の中で読書ができるくらいには酔いには強い。

 なので、今まで少しずつ読み進めていた禁忌について、この移動の間に読み切ってしまうつもりだ。


 外の世界で行なってはならない禁止事項の詰め合わせが、この禁忌だ。

 もし破れば、ペナルティが待っている。

 禁忌は、基本的に通販アプリで入手できる現代日本の品の譲渡や、外の世界では革新的な技術などが該当する。

 知識チートや物品チートなどができないようになっているのだ。


 何かの拍子に禁忌に触れないためにも、しっかりと内容を理解しておくことが重要だろう。

 ただ、問題は禁忌の量がネットゲームの規約くらいあることだ。

 少し読むだけで眠くなるので、なかなか読み進めないのも問題だろう。


 別に読書が苦手なわけでもないのにこうなのだから、なかなか大変だ。


 少し読んでは外の景色を眺め、リーンと雑談する。

 たまに、馬車や荷車、大きな荷物背負った人、武装した集団などを追い越していく。

 明らかにほかの馬車よりもスピードが早いオレたちを目を丸くして見ているが、すぐに背後を振り返って警戒したりもしている。


 オレたちのようなスピードでの移動は、普通は緊急事態なのだ。

 特に馬車がこのようなスピードを出している場合は、何かから逃げている場合が多い。

 単騎での場合は、早馬や何かしらの事情があるとすぐにわかるものだが、馬車の場合は、耐久性や馬の疲労の問題もあるので、普通はもっとゆっくり走るものだ。

 なので、追い越されていく人々は慌てた様子で背後を確認し、何もないとわかると不思議そうに首をかしげる。


 まあ、その頃にはオレたちの馬車は遥か遠くに行ってしまっているわけだが。

 新たに購入した望遠鏡でなければ確認できなかっただろう。


 ちなみに、購入理由はただの暇つぶしだ。

 ルトとリウルにも同じものを持たせているが、そちらは遠くで怪しい動きをしているものを見つけた際の確認用だ。


 プレハブハウスを購入して、資金がごっそり減ってしまったので、暇つぶし用のものを購入するにも限界がある。

 禁忌を読んで、眠くなったら外を眺め、望遠鏡で気になったものを確認する。

 とりあえずは、今日はこれで大丈夫だろう。

 もう、日も沈み始めているし、あと一、二時間も走れば移動も終わりだ。

 今日だけでかなりの距離を稼げたのではないだろうか。

 基本的に、オレたちの馬車をひく馬に休憩は必要ない。

 一般的な馬には当然休憩が必要だし、乗っているものたちにも必要だ。

 一般的な馬車はオレたちの馬車よりもスピードが遅いとはいえ、負担はそちらのほうが多い。

 負担軽減のための技術がなにもないとは言わないが、現代技術の詰まった馬車とは比べ物にならないのはいうまでもないだろう。

 数時間に一度は休憩しなければ、馬にも人にも負担が大きくなるし、馬車本体の寿命も縮める。

 結果的に、一日に移動できる距離は、オレたちの三分の一。下手をすれば四分の一にもなってしまう。


 さらには、オレたちは道中の村や街をいくつも寄らずにきている。

 必要に応じて野宿をするものだが、迷宮都市への道すがら、馬車での移動の場合は一日で移動できる距離未満に街や村が点在している。

 なので、ある程度移動距離を犠牲にしてもそれらの街や村で安全に夜を過ごすものだ。

 村や街の外には、どれだけ排除に力を入れても魔物がいるものだし、夜は特に活発に活動している。

 魔物以外にも、盗賊なんかにも気をつけなければいけないし、それ以前に夜は恐ろしいものだ。


 だが、オレたちの場合は、そういった諸々を無視して移動が可能だ。

 夜になったら部屋に帰ればいいんだしね。


 おかげで、予定していた時間ぎりぎりまで移動を続けることができた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 リウルとルトに馬車の点検を任せ、ソファーにダイブする。

 ただ乗っているだけというのもなかなか疲れる。

 特に、幼女の体力しかないオレにとっては普通よりも堪えるのだ。

 元気いっぱいで底なしの体力がありそうに錯覚する子どもだが、実際には配分がうまくできないだけで、体力自体は大人より少ない。

 電池がきれるように寝てしまうのがいい例だろう。


 体は幼女でも、精神は大人だ。

 体力の配分なんかももちろんできるが、体力のなさだけはどうにもできない。

 毎日迷宮を歩いて体力づくりはしているが、成果が出るのはもっとあとだろう。

 ディエゴの悲しそうな瞳に負けて、彼の上に乗ることも多いし。


 疲労することがない下僕のリーンの料理の音と、外で遊ぶルトたちの、主にリウルの悲鳴を聞きながらのんびりする。

 キッチンから漂ってくる匂い的に、今日はカレーのようだ。

 朝にその日に使う食材をまとめて購入して冷蔵庫に突っ込んである。

 メニューはすべてリーンが考えているので、何を作るのかわからないが、リクエストすればだいたい作ってくれる。

 料理の本が増えるごとに、リーンのレパートリーも増えているので、大抵のものは作ってくれるのだ。

 もちろん、寿司なんかをリクエストしてもうまくできないので限界はあるけど。

 まあ、巻き寿司くらいなら大丈夫だった。

 どうしてもそういうものが食べたいときは、通販アプリで購入すればいい。

 かなり色んなものが売っているからね。


 ただ、やはり高いので、毎日購入できるようになるのはもう少しあとだろう。

 いや、今でも毎日何十万と資金が確保できるので、できないことはない。

 それ以上に購入したいものが多いってだけだ。

 料理のできるリーンもいるし。


 ぼへらーっとそんなことを考えていれば、カレーが完成したようだ。

 ニコニコ笑顔のリーンがテーブルに綺麗に盛り付けてくれる。

 もちろん、カレーだけではなく、サラダにデザートの果物と、バランスよくだ。


 うーん。リーンを使役できて本当によかった。

 彼女がいなかったら自分で作るか、適当なものを購入していただろう。

 そうなると、毎日ステーキ丼か、カップラーメンか、お菓子だな。

 ありたがや、ありがたや。



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モチベーションがあがります。

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