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011,三階層




 ネズミの王国の三階層へとやってきた。

 ここには、大ネズミと牙ネズミとネズミ人がでてくる。

 一度戦闘してみたが、ネズミ人はぶっちゃけほかのネズミと比べても倒しやすい。

 ルトたちとの相性もいいのだろう。

 だが、ディエゴとの相性はさらによかった。


 オレたちを補足して猛然と襲い掛かってくるネズミの群れ。

 そこへ、ディエゴともう一体の切り株お化けが土の剣山を作り出す。

 すると、何を考えているのか、やつらはそのまま突っ込んで自殺してしまうのだ。

 これだけで、半数から三分の一が片付いてしまう。

 避けろよ、とは思うが、これはディエゴたちがうまいのだ。

 回避しきれないぎりぎりに剣山を作り出し、後続が最初の剣山を避けて動いた先にまた剣山を出しているのだ。

 あまり剣山ばかり出すのは魔力の消費的にも効率がよくないようで、残りはルトたちが始末する。

 おかげで戦闘時間がずっと短くなっている。

 魔石回収は相変わらずだが。


 道に関しても迷う要素がない分岐ばかりで、二階層と大して変わらない。

 そうなってくると、どんどん進んでいくわけで、歩く時間も増えていく。

 すでに草原を結構な時間歩いているので、割りと疲れていたりするのだが、ここでも新人たちが活躍してくれた。


「楽ちんだなー。これはいい」


 切り株お化けは、腰掛けるのにちょうどよい高さであり、切り株部分も平らになっているのでクッションを置いておけば座り心地も悪くない。

 さらには自走してくれるので、座っているだけで移動もしてくれるのだ。

 攻撃手段も、土魔法オンリーなので前に出る必要はない。

 まあ、さすがに戦闘中は何があるかわからないので、降りているけど。

 それでも自分で歩かなくていいのは助かる。


 ただ、さすがにこれでは運動不足一直線なので、おでぶな幼女にならないように疲れない程度には歩こうとは思っている。

 ちなみに、乗っているのは自由意思のないほうの切り株お化けだ。

 さすがに、自由意思のあるディエゴに乗るのはどうかと思ったしね。

 ディエゴも、最初は切り株お化けにクッションを置いて乗っているオレをガン見していたが、少ししたらそれもなくなった。

 おまえには乗らないから安心していいぞ、ディエゴ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 しばらく進むと、行き止まりに初めて行き当たった。

 ただ、分岐してからの行き止まりで、しかも行き止まりには宝箱があったので問題はない。

 迷宮は勇者を育成する場だ。

 延々と魔物を倒していくわけだが、それだけではさすがに飽きが来る。

 そこで、姉神はご褒美を用意した。

 それがこの宝箱である。


 ただ、中に何が入っているのかは完全にランダム。

 その上、ランクが高く、深い階層のほうがいいものがでる。

 最低ランクのネズミの王国では、入っているものもお察しなので期待はできない。

 しかし、ランクの低い迷宮にある宝箱は罠がほぼ仕掛けられていないので安全に何かしら手に入れられることになる。


 それでも絶対に罠がない、というわけではないので、一応気をつけるけど。


「ポーション、なのかな?」


 狼ズの一匹に宝箱を開けさせてみると、中には百ミリリットル程度の量の陶器っぽい小瓶が入っていた。

 ……命令したのはいいが、本当に器用に開けたな。


 コルクの蓋を開けてみると、青汁のような匂いが鼻を突くが、毒などではなさそう。

 もちろん、毒などだった場合に危険なので、蓋をあけたのはルトだ。

 そのルトがこちらに小瓶を渡してきたので、まず大丈夫なものなのだろう。


 この世界には、魔法があるように、魔法で効果を増幅した薬品――ポーションが存在する。

 その効果は凄まじく、完治に一ヶ月はかかるような怪我ですら数秒で治してしまう。

 ただ、ポーションにもランクが存在し、一番低いランクのポーションでもそれだけの効果を持っている。

 さらにその上のランクとなれば、瀕死の重症でも瞬く間に治してしまうらしい。

 その分入手は困難であり、価値はものすごく高いのだが。


 今回手に入れた小瓶も、そのポーションである可能性がある。

 そう、あるだけで、本当にポーションかはまったくわからないのだ。

 むしろ、最低ランクの迷宮の浅い層で出てきたものなのだから、ただの青汁である可能性のほうが高い。

 だが、それはそれ。もしかしたら本当にポーションかもしれない可能性だって残っている。


 では、どうすればポーションだとわかるのか。

 それは実際に使ってみて効果を確かめるか、魔法の道具で鑑定するか。

 ほかにも、ポーション鑑定人と呼ばれる専門職についている人がいるとかいないとか、そんなことがガイドブックに書いてあった。


 とりあえず、オレたちの場合は魔法の道具もないし、専門職の人なんて知らないので、実際に使ってみるしかない。

 でも、誰も怪我なんてしていないし、アンデッドにポーションが効くのかもいまいちわからない。

 オレ自身で試すのは、正直なところ遠慮したいというのもあるので、これは死蔵決定だろう。

 冷蔵庫に入れておけば、そこそこは持つんじゃない?

 ポーションに賞味期限があるなんてことは書いてなかったし。


 ポーション以外には、特にめぼしいものもなかったので、分岐まで戻って先に進む。

 しかし、大して進むこともなく四階層への階段を発見した。

 時間的にもまだおやつ時。


 切り株お化けに乗っていたこともあり、あまり疲れてもいないので、四階層を探索することにする。

 さすがに階段まで切り株お化けで移動するのはどうかと思ったので、降りて下っていく。

 だが、この階段で思わぬことが起きた。

 なんと魔物が階段を上ってきてそのまま戦闘になったのだ。


 やはり、今まで通りにネズミの数は多い。

 その上、階段での戦闘は足場が悪く、ルトはなんとかなっているが、狼ズはかなり戦いづらそうにしている。

 しかし、土魔法を使う切り株お化けにとっては関係がないようで、次々と仕留めることができた。


 なので、ここはディエゴたちに少し無理をしてもらうことにした。

 これまでは最初に魔法を使ったあとは、魔力の節約のために様子見をしてもらっていた。

 だが、今回は節約などせず、ドンドン魔法を使ってもらう。

 その結果、階段を上ってきた大量の魔物の群れはなんとか殲滅することができた。


 転がっている魔石の量を見ても、三十や四十では利かない量がいたのがわかる。

 ただ、種類は三階層のものばかりで、新種はいなかったと思う。

 これが魔物が溢れる現象の一端なのだろう。

 こういったことを繰り返して、増えに増えた魔物が外へ押しやられていくのだ。


 図らずしも、迷宮の恐ろしさを体感する結果になったが、いい経験でもあった。

 これからは不用意に階段を降りてはいけない。

 低ランクの迷宮の浅い階層であったのは、本当に運が良かった。

 これがもっと難易度の高い迷宮であった場合、苦戦では済まなかったかもしれないのだから。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 四階層へ降りきると、今日はここまでにして部屋に戻ることにした。

 ディエゴたちに無理をさせたので、魔力がかなり減ってしまっているそうなのだ。

 ディエゴ自身がわたわたと枝の腕を揺らして報告してきたのでわかったが、魔法を使える下僕は便利だが、魔力量を把握するのは難しい。

 自由意思を持っているディエゴだからこそ自己申告してくれたが、当然ながら自由意思のないもう一体の切り株お化けは何もしてくれない。

 ディエゴもルトたち同様有能なようで、もう一体の切り株お化けの魔力量を把握しているそうだ。

 そして、二体とも魔力が枯渇しかけている。

 不思議な踊りに近いジェスチャーだったが、なんとか解読できた。

 部屋に戻ったら、もっと簡単な合図を決めておかないといけないな。

 ルトと違って、指が五本じゃなくて枝だからハンドサインはなかなか難しいし。


 部屋へ戻ると、いつものように前衛組はお風呂に直行だが、後衛組は返り血などまったく浴びていないので、足を拭いたらさっさと庭へと行ってしまった。

 オレもローブを脱いで、だいぶ重くなったゴミ袋を持って、ゲットした青汁……じゃなかった。ポーションのようなものを冷蔵庫に保管すると魔石の処理を始める。

 道中、切り株お化けに座ってかなり処理していたのに、まだまだある。

 殲滅力がかなり上がっているせいで、時間単位の魔石入手率が相当高くなってしまっているのだ。


 最終的な本日の迷宮探索の結果は、22,730円

 お昼を食べて食休みをしっかりとってからの出発だというのに、まだ四時前。

 およそ、三時間程度でこの収入ということになる。

 最後の階段戦が大きいとはいえ、それでも昨日の倍近くは稼いでいる。

 戦闘時間が短いおかげで、探索のほうもさくさく進んでいたし、切り株お化けに乗っていたので全然疲れてもいない。

 これからの迷宮探索が楽しみになる結果だな。


「ルト、お疲れ様。自動補充されるやつだけで大丈夫? 血落とし系の専用のやつ買おうか?」


 明日からは四階層になるため、もっと強い魔物がでてくる可能性が高い。

 だが、今の戦力から考えても苦戦するとはとても思えない。

 最低でも今日以上は稼げるだろうし、そうなると多少小物を揃えても問題ないだろう。


 血は落としにくい、とどこかで聞いたことがある。

 毎日返り血塗れの狼ズを洗浄してくれているルトだが、使っているのは自動補充されるシャンプーや石鹸のはずだ。

 実際に見たことはないので、何を使っているのかはわからないけど。

 それでも、それなりに時間もかかっているし、せめて専用のものを使って時間短縮できるのならそれくらいはしてあげたい。

 その分、お風呂を使える時間も早くなるしね。


 ルトも血落とし系の専用のものがほしかったのか、ぶんぶんと縦に頭骨を振っていたので購入決定だ。


 ただ、通販アプリで検索したところ、シャンプーや石鹸のようなタイプのものはなかった。

 どれも漬け置きして血液を分解させるタイプらしい。

 しかし、ルトはそれでもよかったようで、購入は決定した。

 ついでに、大きいタライも追加で購入したので、さっそくジャケットやパンツなどを漬け置きし始めた。

 確かに買ったばかりなのに、ジャケットとパンツが酷いことになってたものな。

 手袋やスパイクブーツは、防水加工がしてあったのか拭くだけで問題なかったみたいだけど。


 ああ、そういえば洗濯しないとなぁ。

 替えがたくさんあるから溜まったらやろうと思ってたけど、思い立ったが吉日だよな。

 まだ夕飯までは時間があるしね。


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