001,始まりの物語
新作第二弾です。
第一弾同様のペースで投稿されていきます。
割烹に書かれているように、第三弾のストックがきれるまでに一番多くのptをとった作品の続きを書く方式です。
始まりは、一通のメールだった。
迷惑メールの類いかと思ったが、なぜだかこのメールを確認せねばならないという不思議な欲求を感じたのを覚えている。
今思い返せばその時点で明らかにおかしかったのだが。
ただ、当時はまさかこんなことになるとは思っていなかったのだから仕方ないと思う。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
とある世界に二柱の姉妹神がいた。
まっさらな世界に協力して様々な生物を生み出し、安定させた姉妹神たちは交代で創生で失ったエネルギーを回復させつつ、管理を続ける。
長いときをかけて世界は発展し、姉妹神たちの力も回復していったころ、姉神が管理しているときにイレギュラーが発生する。
イレギュラーは姉神の目を盗み、安定していた世界を徐々に崩壊へと導きは始めた。
巧妙に隠された動きに姉神が気づいたときには、世界は崩壊一歩手前という最悪の状況に陥っていたが、こういったことがあっときのための緊急システムを姉妹神たちは構築していた。
姉神が起動した緊急システムにより、世界を覆っていたシステムは改変され、別の世界から力持つ存在が召喚された。
世界救済システム、勇者と魔王の誕生である。
しかし、召喚された勇者が持つ力は潜在的なものであり、徐々に解放していくタイプであったため、さらに姉神は世界救済システムに手を加えることになった。
勇者育成の場――迷宮の出現だ。
勇者は姉神によって生み出された迷宮ですくすくと成長し、無事魔王の討伐に成功する。
だが、話はここからおかしくなる。
勇者の成長を影から、ときには直接現地の生物に憑依することにより介入し、手助けしていた姉神は、いつしか勇者に恋をしていた。
神と勇者。
定められたルールにより、ふたりの恋は世界そのものが認めることができないものだった。
故に、姉神は神であることを捨て、使命を果たした勇者が送還される際についていってしまった。
駆け落ちである。
こちらの世界が許さないのなら、違う世界で一緒になる。それが姉神が出した結論だったのだ。
世界は救われた。
しかし、姉神が消えた世界は管理者不在となってしまった。
姉神は妹神を起こさずに別の世界へ去ってしまっていたのだ。
しかも、勇者育成のために世界中に生み出された迷宮は、姉神が勇者の成長に介入したせいで、予想以上に余ってしまっていた。
迷宮は勇者育成のための魔物と呼ばれる戦闘生物を無限に生み出す。
結果として、迷宮から魔物が溢れ、無秩序に発展した文明と衝突した。
魔物の力は凄まじく、世界を破壊できるほどに力をつけた文明でさえ、滅ぼされることになる。
あとに残ったのは死滅した大地と、そんな劣悪な環境にさえ適応してしまった魔物たち。
そして、未だ魔物を生み出し続ける迷宮。
そんなタイミングで妹神は目覚めることになる。
勇者と駆け落ちして世界を捨てた姉神。
問題だらけの世界。
目覚めたばかりの妹神が途方に暮れてしまっても仕方がないだろう。
だが、妹神は頑張った。
死滅した大地をなんとかし、しぶとく生き残っていた魔物以外の生物を全滅しないように慎重に管理した。
それなりの時間をかけて行われた世界復興は、成功したといっていいだろう。
だが、代償として妹神の神としてのエネルギーの大半を失うことになる。
元々二柱で交代で管理することになっていた世界だ。
それを一柱だけで復興できたのは奇跡に等しい。
だが、もう妹神は疲れていた。
エネルギー不足で完全には機能しない世界救済システムを起動してしまうくらいには――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「いや長いな!」
手にしたタブレットの電源を入れると始まった動画は、かなり長かった。
ぶっちゃけ、ただの世界観設定の説明だが、当事者としては戦慄すべき内容だ。
そんな滅亡後の世界を救うためにこの世界にやってきたのが、オレたちなのだからやばい。
あのメールは、不完全な状態の世界救済システムが送ってきたものだったのだ。
メールを開いたあとに始まったのはキャラメイク。
ずいぶん細かく設定できる内容に惹かれて進めてしまった。
おかげで今こうして設定したアバターがオレの体になってしまっている。
まあ、数時間かけて凝りに凝ったアバターだから完璧なんだけど。
オレはゲームでは基本的に現実とは逆の性別を使う。
一番見ることになる主人公なのだ。見目麗しい女性にするのは当然だろう。野郎のケツを眺める趣味はない。
ゲームの内容やキャラメイクの細かさによって作るアバターはそのときそのときに応じて変わるが、今回は体形などもとにかく細かくいじれた。
よって、迷いなく絶世の美幼女が完成したのだが、やはり完璧だ。
膨らみかけのちっぱい。
顔を埋めたくなるイカっ腹。
短い手足は非常にプリティ。
銀髪朱眼に少し長めの尖った耳。
小さな鼻にふっくらほっぺ。
適度に日焼けした健康的な小麦色の肌。
そう、美幼女ダークエルフが今回のモチーフなのだ!
……長くて頭を抱えたくなるような内容の動画を見せられたが、気分転換に姿見で完璧過ぎる現在の自分を観賞したことにより心に平穏が訪れた。
うむ、素晴らしきかな美幼女ダークエルフ。
もうちょっと色々ポーズとってみよう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
大興奮の幼女鑑賞会を終え、タブレットにインストールされているアプリの確認を始める。
まず最初に見るのは、報酬確認。
不完全な世界救済システムによって召喚されたオレたちは、勇者として呼ばれたわけではない。
オレたちがやるべきことは、姉神が残していった迷宮の駆除。
つまりは尻拭いだ。
世界中に残された迷宮からは今現在も魔物が溢れ、世界を脅かしている。
妹神が頑張りに頑張ったおかげで、魔物以外の生物もなんとか生きている状態だが、根本的に増え続ける魔物をなんとかしないとどうしようもない。
姉神が生み出したものだけあって、迷宮は正規の手段以外での駆除が難しい。
力ある勇者を呼び出すにはエネルギーが足りないので、苦肉の策として不完全な世界救済システムが選択したのが、迷宮を駆除するための才能を持っていると思われる者たちの召喚。
本来は報酬などもない召喚だが、不完全なエネルギーではそこまでの強制力をもたせることができなかったらしく、オレたちにだいぶ有利な召喚条件となった。
その条件がこの世界で活動するためのアバターの作成であったり、迷宮を駆除するごとに発生する報酬だったりする。
アバターが死亡すると、地球に強制送還され、発生した報酬を受け取れる。
迷宮をひとつも駆除できなくても、地球には帰れるので嫌になったら死ねばいいのだ。
しかも、痛くも苦しくもなく死ねる安楽死アプリまで用意しているのだから、エネルギーがない状態の世界救済システムさんの腰の低さ半端ない。
さて、肝心の報酬だが、基本的には金銭のようだ。
迷宮にも難易度に応じてランクが設定されており、最低ランクの迷宮駆除でも日本円で百万ほどはもらえるらしい。
最高ランクの迷宮なんて駆除できた日には、数代は遊んで暮らせる額になってしまう。
金銭以外にも一応報酬はあるみたいだが、こちらはレートがかなり渋い。
その代わり、こちらの世界のものを地球に持ち込んだりできるようだ。
その中でも魅力的なのが、製作したアバターの持ち込みだろう。
好きな人格を入れてもいいし、地球の体と交換してもいいらしい。
実に魅力的だ。
もちろん、魅力的なだけにレートはとんでもないが。
そのほかのアプリは、自身の現在のステータスや、攻略中の迷宮の到達階層やマップ、魔物の情報などのほかにも、迷宮駆除に役に立ちそうな情報誌――迷宮ガイドブック+α ~外の世界の情報も添えて~、長いのでガイドブックだ。
現在のステータスはこちら――
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Name:ソラ
Class:死霊術師Lv1
Skill:下級下僕使役Lv1 使役数増加Lv1
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ClassやSkillはアバター製作中には確認できなかったし、あることも知らなかった。
こちらの世界にきてから発現したものらしい。
ただ、ダークエルフっぽい見た目で死霊術師って結構はまり役ではないだろうか。
どうみても幼女なので、力も体力もないから迷宮駆除なんてどうしたものかと思っていたけど、代わりに使役した下僕を使えばいいのだから少し安心だ。
さすがはエネルギー不足とはいえ、世界救済システムが選んだだけあるオレだ。なんとかやっていけそうな気分になってくる。
でもまずは使役する下僕を用意しないといけない。
外へ出て調達する必要があるが、まだ召喚された直後にいたこの部屋の探検も済ませていないのだ。
急ぐこともないだろう。
それに外には魔物がいるわけだし、ふわふわもこもこの犬耳フード付きローブのほかはワンピースの下にフリル付きタンクトップインナーと女児パンツ、靴下しか着ていないのだ。
もうちょっと何か装備がないと心もとない。
ちなみに女児パンツはくまさんパンツである。
ワンピースをめくって覗き込み、さらには脱いで確認もしたので間違いない。
さあ、ではでは何かないかなぁ?