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アーレフの悪夢

あ、短い!

痩目立つ体躯のアーレフを寝藁に布を敷いた即席寝台に寝かせて、したたかに酔っているソレスも横になる。


母が死んでからは初めての自宅は他人の家のようで、埃っぽさも含めて住んでいる人がいないと生きている家ではない気がした。


しかし気持ちは高揚している。


俺は…勝ったんだ…。


完全な勝利は初めてだった。


奴隷を少しだけ解放できたし、しかも、多少の負傷者はいたものの、死者がいないのにホッとした。


隣で眠っているアーレフを見つめる。


まるで初恋の子どものように心が踊るのは酒のせいだ、多分…。


長い睫毛をけぶらせるアカシア蜂蜜の瞳、黄金の豊かな髪。


ソレスより華奢なくせに、不思議な剣を軽々と操る。


あのコロセオですらそうだった。


石切場の腕自慢を軽くいなす彼はどこか闘い慣れていて戦場では冷静な判断をする闘将のようなのに、今日のアーレフは人あしらいが不器用で、酒を断りきれず杯を重ねた。


俺は…そうだアーレフに惚れたのだ。


ソレスは素直にそう思う。


あの剣技…ソレスの矢を使った神の御技みわざのような雷光。


そしてアーレフをさやにした白銀の剣が煌めくのを、黄金の獅子のような気高いアーレフの進む道を見て見たい。


もちろんアーレフの姉を見て見たいのもある。


アーレフがこれほどまでに美しいのだから、双子の姉はどれたけ美しいのか。


アーレフはこの山岳神殿の奥神殿に姉を探しに来たと話していた。


それが空振りに終わったのならば、アーレフはこの場から出て行くだろう…ならば着いていきたい…そう思いつつソレスは眠りについた。






うとうとしていた夜半、ソレスはアーレフの絹を引き裂くような細い悲鳴で跳び起きた。


もがくような手を握り、ソレスはアーレフを揺り起こす。


「アーレフ、しっかりしろっ」


アーレフは暴れて抵抗して、しばらくして目を開けた。


「ソレス…」


アーレフは息を着き、そしてみるみるうちに、金の瞳に涙を溜め、


「すまない…」


と鳴咽した。


「アーレフ…」


「胸を貸してやんなよ」


「え?あ、あんた…」


「アーレフの馴染みのリーリアムだよ」


酒の席で竪琴を爪弾いていたこれまた綺麗な男だが、なんだか飄々としており、ソレスは言われて促されるままにアーレフに胸を貸してやるつもりで、腕を広げアーレフを包み込んだ。



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