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破滅の剣

その近くにはアルカディア王国の皇子がいて、少し遠巻きにリーリアムとシリウスとミゲルが…泣いているペルシャザルいる。


「アルカディア王国は…」


アーレフは瓦礫の中を見渡した。


アーレフの破滅の力で、王都アルカディオンと、港都市イオリアスの貴族の屋敷まで瓦礫と化した砂埃舞う世界の中心で、レティーシアと二人だ。


「人は…変わっていくわ。今を乗り越えて行けるようになった時、人はまた先に行けるの」


アーレフは


「我が剣、ソレス」


と右手を広げ漆黒剣を出した。


「俺は、全ての奴隷を解放する…そう、全てだ」


アーレフはイオリアスに、奴隷たちの解放された声に命の輝きを見た。


生まれて…死んでいく者…その全ては平等であるはずだ。


「アーレフ…私は…オリヴェールとガリアに向かうの…。貴方も…」


「俺は…奴隷を解放するために…戦う。友と…剣に取り込んでしまった友の魂と約束したんだ。だから、行けない」


レティーシアがアーレフと手を組合せる。


温かい体温が…鼓動が…感じられる。


「愛しているわ…誰よりも…近くて遠い私の弟」


そして言葉を切る。


「愛しているわ…アーレフ…」


レティーシアはアーレフの唇に、触れるだけの口づけをした。


「アディオ…アーレフ…」


「アディオ…レティーシア」


瓦礫が太陽の光を浴び、輝いていた。







クレタ島に夏の風が吹く。


「リーリアム先生、さよーなら」


最後まで書き取りをしていた元奴隷の子どもが帰っていく。


かつての広い神殿の奥には、不幸な娘達の住まいがあり、クレタ公は奴隷を保護をし、オリーブの加工や、織物をさせていた。


「ミゲル医師、僕はこれで…」


「ありがとうございます」


ミゲルが患者の包帯を取り替えながら手を挙げた。


少し坂を登り、大きな木の下に佇む。


シリウスたちが使っていた客室には、多くの奴隷が集まり文字を学ぶために机に向かう。


昼夜を問わず没頭する姿に、リーリアムが何度も休むよう声をかけにいっている程だ。


半年…伸びた金の髪を風に靡かせて、リーリアムは瞳を細める。


一夜にして瓦礫となったアルカディ城は放棄され、イオリアスはアルカディアの貴族たちが、市政を細々と行う小さな都市となり下がった。


クレタは奴隷の多くを受け入れ、漁業とオリーブ、そして貿易の要、海峡の安全を担い、流通の中心となっている。


「リーリアム」


屋敷に直接乗りつける公の港から、シリウスが上がってくる。


警備の中心として、クレタ水軍及びクレタ隊の将軍として、クレタ公を支えていた。


「シリウス、どうだった?」


ホッとして、駆け寄った。


一日の大半を海で過ごすシリウスは、更に日に焼け野性味に溢れる笑顔で、リーリアムに笑いかける。


そして屋敷に入っていった。


「近々争いが起きるかもしれん」


シリウスが呟いた。


「あちこちきな臭いが、やはりスパルタが動き出しそうだ。小さな町でスパルタとアテネが、スパルタが勢力を伸ばしつつある」


リーリアムは食事を出しながら、苦い顔をした。


「やはり…スパルタかあ」


シリウスは頷く。


「多分な…。ところでクレタ公は?」


リーリアムは


「なんやかんやで暗躍してる。屋敷にいたのを見たことないよ」


リーリアムも食べ始める。


ワインを開けて、シリウスが仕入れた玻璃の杯に注いだ。


「で、お前さん黄金の獅子の物語とやらを書いてるのか?」


リーリアムは微笑んで、ワインに口を付ける。


「だめだめ。まあ、アルカディア国滅亡の詩吟バラッドは成り立つけどね」


アルカディアが滅びたと便りに聞いてクレタ公を尋ねた人々は、織り成す人々のことを知り、喜びに泣きに泣いた。


「アーレフの姉君は無事にガリアに着いたのかな」


「どうしたの、シリウスがそんなこと気にして」


リーリアムは苦笑して、竪琴を取り出し、そっとつまびいた。


奴隷解放軍の歌はリーリアムの宝物になり、なにやらの集まりに、必ず弾き歌う一つだ。


この世界から消え去った、オーロリオン将軍を讃えて。


「弾いてくれないか?オーロリオン将軍の歌を」


シリウスの酔いに任せた言葉に、無言で弾き始める。


そこに無粋な足音が響き、扉を激しく開く音がした。


「通り雨に降られた。スパルタより、シュラクサイで奴隷解放戦争が起きるぞ。エウヌスと言う奴隷がクレタ公に接触してきた。ペルシャザルも動き出した」


真っ黒な巻き毛は肩よりも短く、瞳は金の少年から青年に変わる端境期の美しさをたたえた人物が入って来る。


「シリウスは隊を編成しろ。どうにもエウヌスと言う男、見た目にも危うい。少しでも奴隷を解放しなくては……なんだ?」


黄金の獅子と言う名は伝説になったが、別の物語が紡がれつつある。


奴隷が解放のために立ち上がる時、必ず疾風の如く現れる黒雷の使い手。


ソレスという黒剣を操り、奴隷を助け解放しているのだという。


「やれやれ、また、仕事か、アーレフよ」


シリウスが立ち上がり、リーリアムは竪琴を布鞄にしまう。


「いつ出発するの?」


黒のアーレフは、右手に黒剣ソレス出した。


まだまだ真っ黒なままだ。


「今、すぐに。全奴隷を解放する!」





〜『アルカディア国物語』より、黄金獅子叙事詩〜


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