義兄弟の戦い
「あなたは私の部屋で待っていてほしい」
「でも……はい…」
アテネーを政務室に入れてからそのまま階下に降り、オリヴェールを待っていたカロルが、城の城門を見渡せるバルコニーで、聖剣を渡してきた。
その瞬間、雷鳴と雷光が城門に起こる。
バルコニーから見ると、悲鳴と焦げ臭い臭いが充満する城門には、編成を終えた兵士の一部が焼け焦げ絶命していた。
城門上に登った女子供が槍を持ち、槍の全てから稲妻が出ており、その左右には弓隊が一斉に掃射をし、縄ばしごを登った鉄鎧のバビロン兵が、城門の閂を開ける。
「アルカディ城門、解放ーーっ!」
城門が開くと、肩で息をするアーレフは黒剣から黒光を放ち、立っていた。
「アルカディアに突撃−−−っ」
シリウスの号令で兵士が入り込み、城門の奴隷が鉄槍を城門内に落とす。
そして城門から降りていった。
「応戦しろーー!」
城門の槍を手にした奴隷解放軍が戦列を組み、そう崩れしたアルカディア兵に切り掛かる。
「負ける…奴隷がやってくる」
「大神殿から外へ」
「女神神殿門からも奴隷が!」
貴族達は城に逃げ込み、指示系統を失ったアルカディア兵は、次々に切られていき、それを静かに見ているアーレフと、オリヴェールは目があった。
金の豊かな髪に、金の瞳がアテネーに…イオリアスで見た『神』に酷似している。
だが、アテネーと双子であるはずの彼にはアテネーのような柔らかさはなく、精悍に面変わりしており、どれだけ死線をくぐり抜けたがか容易に想像できた。
彼も…また、義理弟なのだと、オリヴェールは理解する。
「奴隷解放軍オーロリオン将軍とお見受けする!」
オリヴェールは着衣を翻すと、バルコニーから飛び降りた。
そして、アーレフのところに歩み寄る。
「アルカディア王国のオリヴェール皇子だ。私が相手になろう」
アーレフは手を広げ破滅の剣を呼んだ。
「ソレス、上等な獲物だ。これを手土産に復讐を果さん!」
アーレフは走り込みながら下から剣を奮う。
オリヴェールが長刀で受け止め、その反動で横に薙ぎ掃い、アーレフはそれを飛んでかわし、剣の交差を両手で押さえると後ろに飛び去り、黒発光を剣に乗せ一気に振るう。
「オーロリオン将軍、やはりただ者ではない…のか」
カロルは呟き、混乱する城内からやっと出たカロルは、アーレフとオリヴェールの戦いに圧倒され、戦闘が止んでいることを知った。
「強い…」
クレタ公がオリヴェールの攻撃を、僅差でかわすアーレフに思わず零す。
「オーロリオン…黄金の獅子…本当の名前は?」
「聞いてどうする、いや…冥土の土産に知らしめよう。俺はアーレフだ」
ギィ…ンと剣を唾せりながら叫ぶ。
「アーレフ…そして奴隷達よ。お前達が祖国を裏切り、バビロンの侵略になぜ加担するのだ」
オリヴェールがアーレフに、奴隷達に、力強く告げた。
それにシリウスが鼻で笑って、答える。
「同胞を守り、その他を蛮族と抜かす勝手な選民思想に腹が立つ。侵略した国の民を奴隷として蔑み、一部の者が肥え太るこの国に飽きたからだ!」
アーレフも剣を交えながら、咆哮した。
「アルカディア…祖国と思ったこともない。愛するものを俺から全てを奪っただけではないかっ!」
オリヴェールの剣を一気に、剣で跳ね飛ばした。
アルカディアの聖剣は音を立てて、アーレフの足元に落ちる。
アーレフは剣を手にした。
ぱりぱりと音がし、怒りに雷鳴がほとばしる。
「笑わせるな!」
その剣を天に掲げ、そしてオリヴェールに投げ付けた。
剣は金の光を帯び、オリヴェールの頬を掠め、オリヴェールがよろめいた瞬間、アーレフの黒雷の剣が胸を貫こうとする。
「やめろっ!」
カロルが叫ぶのと同時に、白い疾風が走り込み、オリヴェールを抱き伏せた。
「やめて!アーレフ!」
雷光と雷鳴は爆音を轟かせ、とオリヴェールをかばう者をも貫いたかのように見え、天からの稲妻を呼びアーレフ共々地に臥した。
「もうやめて…やめて…こんなことは見たくはないの…アーレフ…お願い…」
雷は二人を逸れるように石畳を抉り取り、瓦礫の中からアテネーが呆然とするアーレフに抱きついた。




