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イオリアスの奴隷軍

政務室につくとカロルが金の武具を出して、オリヴェールに差し掛けると同時に、武官が幾ばくか武官政務室に集まる。


「第二隊は歩兵隊を率いて、他国の介入に備えろ。情報隊も連れていけ」


「はっ」


「第三隊は引き続き、マケドニアに進軍を許すな。騎馬隊中心に押し戻せ」


「はっ」


手足の武具をはめると、オリヴェールは武官を見た。


「カロルはアルカディオンへ供を。貴族連合も連れていく。陣形指揮を取れ」


「はっ」


「我らアルカディオス、アルカディアの民だ。必ず、生きてアルカディアで会おう」


オリヴェールの言葉に、武官は片手を胸にあて礼を取る。


「必ず、ご期待に答えます」


「マケドニアを押し戻したら、アルカディアに向かう。カロル、オリヴェール皇子を頼むぞ」


武官が去ると、深く息を吐き、


「アルカディオンに参る」


と厳しい声を上げた。


「はっ」


この日の夕刻、アルカディア王軍は、さらに三つに兵を割き進軍をした。





時は少し戻る。




オリヴェールが遠地にている間、奴隷解放軍は確実に進軍していた。


聖都イオリアスは眼下に港を持つ自由貿易と奴隷の町であり、アルカディア王国の膝下にある都である。


その上の山を取り巻くのが、アルカディ城を頂きに抱える王都アルカディオンであり、二つの城壁と、水路と堅牢な城門に守られた高い山を切り崩した上に建ち、『神が作りし都市』という二つ名があり、背後には山々が連ねており、容易には近付けず、難攻不落の城とも呼ばれていた。


その聖都イオリアスを、アーレフはなだらかな丘から見下ろしている。


アナトリア方面から、イオリアスに入る道は一つしかない。


その道に立った。


かつて荷馬車に揺られながら歯を食いしばり、奴隷として売られてきた道。


ソレスとリーリアムとで、レティーシアを…姉を探すために来た道。


奴隷達を引き連れ出た道。


今回はアルカディア王国を破滅させる為に、この道を戻って来た。


「…久しぶりだな…イオリアス。我等は忘れはしまいぞ。その聖都は奴隷の血によって築かれたものだ」


アーレフは騎上し、黒き刃を出現させた。


天空にミゲル隊の白い鳩が旋回する。


「突撃−−−−っ!」


騎馬隊を先頭に、一気勇猛にイオリアスに駆け降りる。


イオリアスの検問兵の首を、アーレフ自身が撥ねると、そのまま港に下がって来ていたアルカディア兵に突入していく。


ガレーで逃げようとした兵は、海峡を上がって来たシリウス隊の火矢で攻撃をされ、次々と炎上していく。


「リーリアム隊、城壁に向かって、四連勢射」


混沌を見せ始める戦場の中で、アーレフの声が響く。


迫り出す第一城壁から、アルカディア兵が弓で狙ってくるのを見て取ったアーレフは、リーリアム隊に指示をだす。


「弓、構えて、第一弓っ」


リーリアムが叫んだ。


四列に列んだ弓隊を守るように歩兵が囲む。


港では、シリウス隊がガレー軍を蹴散らして、陸に上がっていた。


クレタ隊も港の残存兵を切り倒し、第一城壁に取り付こうと、城壁に縄梯子を投げ付ける。


その奥、以前、シリウスとミゲルが首括りの刑を執行された、奴隷広間で怒声と地響きが沸き起こる。


「何事だ?」


「やったか!」


シリウスが港から合流し、列に隊に預けていた馬に飛び乗った。


「以前、アナトリアで、アルカディア軍に投降した奴隷がいただろ?三割ほど。あれは、投降したのではない」


シリウスが先頭に立ち、走りながら血路を開く。


「イオリアスに戻って、我々と一斉蜂起するために水面下で動いた、奴隷解放軍別動部隊だ」


アーレフは振って来た矢を剣で払った。


「何?」


「奴隷解放軍は自ら戦わなきゃいけない。だから、わざとイーリオンに兵を投入し奴隷解放仲間を増やしつつ、戦うときは共に、と」


「さすがだな。礼を言う」


馬を飛ばして広間につくと、奴隷解放軍が、大木を数人掛かりで抱えて城壁を破ろうとしていた。


幼い娘達の血肉を吸った、贄の城壁は頑丈で、先端を尖らせた木でもなかなか打ち破れず、アルカディア兵に後ろから切られては、別の奴隷が木を持つ繰り返しをしていた。




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