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ペルシャザルの 誘い

バビロン王の居城は、山の上のものだった。


山の中腹からは、鉄精製のための蒸気があふれ、ペルシャザルによると、十の集落があり鉄精製の仕事も請け負っているという。


バビロン国王は、父王がアッシアの暗行により弑虐され、その子が跡目を継いだという。


外側は無骨な石造りだが、中側はバビロンの極彩色に満ちた華やかな色合いを見せている。


「国王が会うという」


ペルシャザルは嬉しそうに話す。


城内には先ほどから同行している護衛兵士数名のみで、ペルシャザルによく似た少年と…いや、ペルシャザル国王…が、玉座に座っていた。


「王…とは…」


「余が、国王なのだ。余にとってアーレフは特別の存在だ。助けてもらって礼をいう」


シリウスとオルフは後方に、アーレフはペルシャザルの前に片膝を付き、礼を取る。


「奴隷解放軍よ。ついては、鉄武具と、馬の所望だが」


ペルシャザルはしばらく黙った。


「後払いというものには、手付がいる。アーレフよ、ひと時、余に身を預けぬか」


「は…?」


アーレフは意味が分からず、戸惑った。


「余のアルカディア語は、伝わらなかったか?アーレフ、聞けば、奴隷上がりだとか。ならば奴隷の作法は心得ておろう」


これにリーリアムが食いついた。


「ああ、いえ、国王。オーロリオン将軍は、花奴隷ではありませんっ。それはっ…」


アーレフはリーリアムの慌てぶらりに、微笑んだ。


「国王の言い分は、正しい。そして俺には何もないのだから…。謹んでお受けする」


と、頭を下げた。


「では、後ほど使いをやる」


との、退出したアーレフは一つため息をつくと、控えの部屋に向かおうとする。


「アーレフ、あまりにも…。僕がもう一度話しにっ」


リーリアムが剣幕食らいつくが、アーレフは首を横に振った。


「無体な事はするまい。ただ、兵士たちには言わないでくれ。ミゲルは特に心配する」


エレフは静かな笑い顔で、部屋に入ると、シリウスとリーリアムが一緒に入って来る。


「アーレフ、その…な」


シリウスがずい…と前に出てくる。


「余のもの云々はともかく、もう一度会談がある。それ次第だろう…。今日は客間を与えられた。それがまずの答えだろうな。チャンスがある」


シリウスの話しにリーリアムははぐらかされたことを知り、仕方なくも頷いた。


「まずは…それからだね…」




食事をとり、一人部屋へ案内されたアーレフは、しばらくして侍女に呼び出しを受けた。


マントを置いていくように慇懃丁寧に頭を下げられ、地下へと案内されていく。


巨大な風呂に入るように言われ、香草で洗われ全身に香油を塗られた。


裸体に、見事な透かし織りの絹布を羽織る。


『こちらへ…』


何人もが一斉に入れる共同風呂のような贅沢な造りから、ほのかに暖かい石畳と狭い通路を上に上がっていく。


『どうぞ』


侍女は扉を開くと、王の寝室に繋がっていた。


布をたっぷりと使うのが、バビロン風なのか、寝台の天蓋からは紗が何枚も下がり、寝台にも柔らかな布が幾重にもあった。


「奴隷解放軍将軍よ。突っ立つのが、礼儀か?」


「は…失礼して…」


侍女に逆らう事なくたっぷりと香油を塗られた身体から香り立ち、布を払い寝台に上がる。


ペルシャザルがいた。


漆黒の髪をすべらかし、褐色の肌に薄衣を着たその胸は…


「ペルシャザル…皇女ひめ…」


うっすらと胸が膨らみ、それを隠すことなくペルシャザルが笑った。


「ふふ…もう、よい。オーロリオン将軍…いや、アーレフ。そなたの矜持、理解した。すまなかった。そなたを試してみたのだ。我が父も兄も、寝屋の暗行にあったのでな。アッシアの女将軍に殺された」


ペルシャザルが小首を傾け寝台に座り、アーレフも座るように横をぽんぽんと叩くので、アーレフはその横に座る。


「ただの性奴ならば、手順を踏むだろうし、暗行者ならば、侍女に体を触らせはしない」


アーレフは


「なるほど…」


と、苦笑いをした。


「そなたを試してすまなかった」


寝台にうずくまるペルシャザルが、顔を上げる。


「ペルシャザル王…」


「ペルシャザルでよい。余はまだ子どもだ。アーレフも子どもであろう?今宵は語り合いたい。我らが国を本当に動かすことができるか」





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