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バビロンの王

「皇子の部隊だ。シリウス、先触れを頼めるか?」


シリウスは頷き、門前の兵士になんとバビロンの言葉で叫んだ。


『こちらはアルカディア奴隷開放軍、軍長シリウスだ。我が軍の…』


大いなる出任せを言って、シリウスは後ろを向いた。


「アーレフ二つ名を使うぞ」


「ああ」


アーレフは即答する。


オルフが慌てた。


「え、アーレフ、あれを使うの?」


「お前が広めたんだろう、リーリアム」


シリウスは言上を続けた。


『オーロリオン将軍をお連れした。バビロン皇子への目通りを』


兵士達は一礼をして、城に消えていく。


城と言っても簡易式の櫓構えの粗末なもので、堅牢な造りではない。


「オーロリオン…蛮族にまで広がる…」


リーリアムは肩を竦めた。


「蛮族じゃない、バビロンだ。名付け親のお前の名誉になるじゃないか」


シリウスがリーリアムにじゃれて肩を抱くと、リーリアムがすり逃げ出す。


「なんだ、つれないな」


そんな大将たちの他愛もない掛け合いに笑いが出た頃、城門が開き、子どもが駆け出して来た。


「そなただ、余を生かしたのは」


数カ月振りに会った皇子は、アーレフの前に片膝をついた。


「余はペルシャザル。お前が将軍なのか、窓から見てびっくりした」


あの頃より少し、大人びて背も伸びた皇子が、アーレフの前でアルカディア語で話していた。


『皇子、立ってくれ。俺はアーレフ。バビロン王にお願いの義がある。連れていってはくれないか?』


黄褐色の肌に長い黒い髪、黒い瞳のペルシャザルは、髭もまだない顔を綻ばせた。


『ああ、余を頼ってくれるのだな。ああ、よいとも』


ペルシャザルはアーレフと肩を並べて、野城に招き入れる。


シリウスとリーリアムも後から従った。





「余はあれから、アルカディアの奴隷を全て開放し、アーレフの言い付けを守った」


ペルシャザルは以前、別の山岳都市侵入に失敗し、アーレフに命を救われた。


「あ…余のアルカディア語は変ではなかろう?一生懸命学んだ」


王座にペルシャザルが座り、広間でアーレフは立ち、礼儀としてシリウスとリーリアムは片膝を付き、頭を下げた。


広間には若い皇子を補佐する軍部や貴族が、数少なく固めている。


『オーロリオン将軍とやら、そなたに王を引き合わせる見返りは、あるのか?』


ペルシャザルの側近が言う。


アーレフは笑った。


『さあ…どうだろうか』


周囲がざわついた。


ペルシャザルはそれを手で控えさせて、続ける。


「しかし我がバビロンも、隣のアッシアに押され、今や採掘精製の城を残してわずかばかり。余にしてやれることはあるのか?」


『俺が欲しているのは、鉄武具と馬。見返りはアルカディア滅亡…それでは答えにならないか、緒侯達』


バビロンの歴面がざわつく。


アーレフの言葉には、その重みを感じさせるなにかがあった。


「バビロン王城に向かおう。オーロリオン将軍」


ペルシャザルは立ち上がった。


『城にすぐ連絡を、早馬を出せ。我等の馬も用意せよ』


ペルシャザルはそのまま、アーレフの手を取る。


『余を頼ってくれてありがとう』



オリヴェールが、対峙する久方振りのアルカディア城は、様変わりしていた。


第二妃と大神官の死。


体調の悪い母王に薄い水銀毒水が、与えられていたことを知った。


治水治世は手付かずだが、レェードは他国と軍事協定を結び、諸国への侵略に向かう手筈だったようだ。


「なんてことを…」


オリヴェールは政務室の机を叩く。


文官は、書類に目を通しながら、


「レェード王直属の文官は、毒盃による自決。武官はラコニアに亡命をし、今だ消息は掴めません」


と、告げる。


「ともかく、ラコニアとの件は、王の体調不良等、言い訳を頼む」


文官は、


「は?」


と、オリヴェールを見上げる。


「義兄王には、まだ『生きて』いてもらう。混乱を避けるためだ。しばらく伏せておく」


城の日の当たらない地の一角に、埋められたという消し炭のような義理兄王のかけら。


「第二妃、大神官の三名の御遺体は?」


オリヴェールはため息をついた。


「…兄の横に埋めてやってくれ。今は葬儀をすることは出来ない」


そう…直に、オーロリオンが…やってくる。


レーダーに、聞いた唯一の血縁が、この国を滅ぼすために。


オリヴェールは手を握りしめた。









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