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深窓のオリヴェール

「何故、オリヴィエール皇子の御座がレェード皇子より下なのです」


オリヴィエールの側近で年若い武官が、年輩のレーダーに食ってかかった。


「この宴が第二妃様の主催となったからだ。あとは増させたぞ。皇子失礼します」


と、レーダーはオリヴィエールに頭を下げて退出をしていく。


オリヴィエールの留守を政務室で預かるためだ。


石造りの宮殿には多くの人が集まり、床に並べられた豪華な食材と酒に舌鼓を打ち、歓声と叫声に溢れ満たされていた。


石段の高みには、着飾った第二妃レェードの母が一段高い玉座床に毛皮を敷いて座り、傍らに大神官を侍らせている。


そのきざはしにレェードが見目麗しい侍女を何人も侍らせて、坏を重ねていた。


豊満で色香の高く酒を召して賑やかしいのだが、今日は美酒だったらしくおもむろに立ち上がった第二妃が、


「我がアルカディアは神から頂いた神域。その神域のきざはしを土足で踏み荒らした蛮族を蹴散らした、我が息子レェードに坏を」


と、高らかに声を上げる。


「坏を」


広間の全てが坏を上げた。


「オリヴィエール皇子」


義母に流し目で促され、オリヴィエールは立ち上がる。


父譲りの青の瞳でレェードを見つめて、静かに坏を上げた。


「神から賜わり申した神聖アルカディア王国を守った武勇に」


と、声を上げる。


「武勇に!」


「勝利に!」


「レェード皇子に!」


唱和があり、宴はさらに盛り上がる。


オリヴィエールは静かに坏を進め、侍る女を控えさせた。


「オリヴィエール皇子は神女しんめを娶られておられるかのようだ。俗世の女などいらぬらしい」


誰か彼かの失笑が沸き上がり、オリヴィエールは笑みを称えつつ、しばらく後に席を立った。


「オリヴィエール皇子、お待ちを」


「役は果たした。政務に戻る」


慌てて追い掛ける武官を制しようとして、オリヴィエールは目前にいる人物に目を留めた。


先程の宴の主役が、女を連れ廊下ですれ違う。


「『世界を全きに統べる神王』…父王の系譜は、そなただけではない。重荷ならばいつでも代わろう。いや、変わらせてもらう」


低く恫喝するような声の後のレェードの高笑いに、オリヴィエールは会釈のみで立ち去った。


レェードにこの国を任せば、軍事の国に成り下がるだろう。


神々の与えられしアルカディアを、そんな国にしたくはない。


しかし、他国からの侵略は苛烈で、守りに徹する意見しかもたぬオリヴィエールに、レェードは嘲り笑う。


父王の政務を全てを代行して行うオリヴィエールは、聖都を離れることは出来ず、バルバロイを打ち晴らすレェードの名声が上がり、今ではレェードを王にとの声もあちこちである。


「お前はいいな、自由で…」


「は?」


「いや、いい。政務につく」


年若い武官の間の抜けた声に、オリヴィエールは微かに笑った。


「私には…荷が重い、この国も、あの義兄あにも…」


「は…あ」


武官が頭をかいたところに、宴には参加していなかった、レーダーが慌てて走ってくる。


「オリヴィエール皇子。山岳神殿に、バビロンの侵略です」


「なに!」


山岳神殿に忍び寄るのは、豊かな鉱物資源を常に狙う隣国バビロンだ。


「どうなさいますか、国軍は…」


レーダーの言葉に一瞬戸惑ったが、オリヴィエールは言い放つ。


「……山岳神殿には神殿奴隷軍がある。そちらに対応させよ。先ほど帰ったばかりのアルカディア王国軍を出すわけにはいかない…」


アルカディア国に、レェードの無理な進撃のために、疲弊した兵士をこれ以上無理はさせられないと、オリヴィエールは苦々しく言い放った。


「…はっ」


年若い武官を率いて、側近のレーダーが足早に伝達をしにいくのを、眉をひそめて見送るだけがオリヴィエールの精一杯の政務だ。


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