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イオリアスの人柱

リーリアムが隠し私財を投げ打ち、シリウスのかつての部下を集めさせ、来るべき時のために配置をしている。


来るべき時…それは、アーレフの行動次第。


アーレフはイオリアスに行きたがらず、しかしソレスはシリウスと共に、何度かイオリアスに出向いていた。


イオリアスからはまるで渦巻く塔のような先端に白亜の城があり、棟が日光に当たり煌めいて見える。


それが奴隷たちのしかばねの上に建っているのだ。


「ほら…また、目眩がしてるだろう?」


アーレフは貧血でふらつきソレスが支える。


「大丈夫か?」


「ああ…大丈夫だ」


アーレフの部屋に行き、アーレフを寝台に横たえると、シリウスの話しをした。


「俺は…」


アーレフが寝台に座り込む。


そんなアーレフの金髪をくしゃりと触った。


「様子を見てくるだけだから」


「うん」


アーレフは振り向いて、ソレスの後ろ姿を見送った。


「え…」


明るい夕日に揺らめく黒い影が、ソレスに纏わり付く。


地から湧き出る影は…。


「オリーブの若い味をもらって来たよ…食べると…栄養…ええ?」


「リーリアム、ソレスを止めてくれっ…」


寝台から立ち上がり、ふらつきながら追い掛けようとした。


アーレフの様子にリーリアムは寝台に座らせると、オリオンを追い掛ける。


死の…影…ここのところ見たことがなかった…なのに…。


ソレスを乗せたガレーは岸を離れていった…。





ガレーがイオリアスにつくと、港は騒然としていた。


「なんだ、この騒ぎは」


ガレーから奴隷が降りると、元ガレーの持ち主の商人がやってきた。


「ガレーの子どもはいるか?」


ガレーから降りることの出来ない『ちび』はガレーのへ先に座っている。


「降りるんだ。お前に素晴らしいお役がやってきた」


商人は役人と一緒に『ちび』を連れ出すと、あまり早く歩けない『ちび』をせき立てる。


「なんなんだ…」


他にも奴隷の中で、小さい女の子達が連れていかれている。


「シリウス隊長〜」


城壁の方から男が走ってくる。


完成した新しい第一城壁の回りは、奴隷と、奴隷の飼い主と、兵士でごった返していた。


「隊長はやめとけ。なんだ、この騒ぎは」


男は


「はっ」


と礼を取りそうになるのをこらえて、


「人柱…です。子ども…を主柱左右の脇に生きたまま埋める…ってやつです」


ソレスはシリウスと顔を見合わせた。


「奴隷たちの多くは無関心で、奥の振る舞いを食ってますが、一部の奴隷はいきり立ってます。もうじき国王が来ますが…」


「そうか…」


シリウスは難しい顔をした。


「アーレフを呼ぶか?」


シリウスはソレスの肩を叩く。


「主人はまだここには必要ない。だが、ソレスは、奥に…」


ソレスは首を横に振る。


奴隷は惨めだ。


城壁前の広場に、小さい女の子と『ちび』達を連れた兵士がいて、イオリアスの城のバルコニーには真っ白な髪の老人、そして黒髪を結わえた体格のいい男が現れた。


かなり近くに黒い男が立っており、国王たる老人は震える身体左右を兵士に支えられている。


「国王様は…もうダメだな。ああなっちゃあ」


シリウスは肩を竦め、


「王っていえば『英雄』だったのになあ…」


国王が羊用紙の文面も読めず、震えながら立っているのを眺めた。


黒い髪の男が国王に代わって文面を読み上げる。


「黒い悪魔だ」


吐き捨てるように言った奴隷の誰かの声に、ソレスは血が逆流する音を聞いた。


…この男が…アーレフを傷つけた…


奥歯を噛み締める。


何日も束縛され、体内外からの腫れと傷はなかなか治らず、アーレフは苦しんだ。


この男が…消えない傷をアーレフに…。


「やめてくれ、まだ小さい子どもなんだっ」


奴隷の中から、痩せた茶髪の男が出て来た。


兵士が男を殴り倒し、宣祀ののち子ども達は主柱の横の堀に投げ入れられ、泥土を被せられていく。


「やめてくれ、まだ子どもだ、本当に…頼む…!」


「貴様…奴隷の分際で…」


兵士が剣を抜いた。





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