らららァ、アンタは俺の口に、
なんや関西弁のこーこーせーのお話。
自分でもよぉわかりません。
一応私関西人なんですけどね。文章にすると似非っぽくなりますよね。
昔、ゆうても子供ん時、俺には変なクセがあったらしい。
好きなもんなんでも口に入れてまうんや。
まあ、子供の頃の話やから、たいがいゴムの指人形とか、タオルとかがええとこやったらしいけど。
………いつだったか、そんな話をおかんから聞いて、なんか妙に納得してもうた。
大きゅうなっても、子供ん頃のクセって残っとるもんなんやろか。
いや、流石に今気に入ってるタオルムシャムシャ食うたりはせんわ。
その代わり、違うもん口に入れたくてしゃあなくなるんやけど……。
………ゴメンな、神野。俺、ホントはこんなキモい奴やねん。
朝、俺は家を出て学校に向う。もうすぐ進路とかも考えなあかんくなるような、高校は2年生や。
でも俺大学行けるくらいの頭あらへんから、おかんの言う通り、このまま就職かなぁ。まだまだ遊びたいんやけどね。
最近では進学組と就職組でクラス内が分れてきて、来年はクラス分け自体が変わるらしい。今年で、神野ともオワカレ。
つまらんなぁ。
電車を待ちながらケータイを弄る。クラスの奴からメールが来てたから返す。……今日はちゃんと遅刻せんと行くで、っと。
ほんっま、つまらん。
はよ、学校つきたい。んで、はしゃぎたい。でも、つまらん。
……何で俺もっと神野ん家近くに住んで無かったんやろ。そしたら、一緒に学校行けたんやろうけどなぁ。そしたら、遅刻なんて絶対せえへんのに。
電車が音たてながらホームに入ってきて、ドアがぷしゅーっ、って、開いた。
神野に会いたいねん。だから今日も学校くんねん。
ガラガラ、ガラ
「あ、水谷クンおはよー。」
あ……!!
「オ、オハヨ、神野……!」
やった、今日始めての挨拶が神野や。テンションめっちゃ上がる! このままもっと話してたいなぁ。
「おっ! やァっと来たんか水谷ィー!」
「俊哉君ご到着やでー!」
あかん、俺のダチや。畜生、お前ら空気よめや。只でさえ普段から神野とは滅多に話されへんのに。
「じゃーな神野。」
「うん。」
泣く泣く神野に手を振ると、神野もにっこり笑って振り返してくれた。…………何か、俺、今めぇっっちゃ幸せや!!
俺はな、神野の手が好きやねん。だから、朝みたいに手ェ振ってくれたらめっちゃ嬉しい。
神野の手は大っきい。俺の方が身長8センチくらい高いのに、手だけは俺の一回りくらいデカいねん。一回比べっこしてな、分かってん。……で、それからやねん。
何かドキドキすんのも、あったかい気持ちになんのも、嫉妬したり色々神野の事想像(妄想?)したりすんのも。
……あの手、食うてまいたい、思うのも。
まず親指から舐めてな、次は人差し指や。そうやって全部ペロペロすんねん。神野の手、味わうねん。でな、その後出来るなら拳全部口の中に入れてもうて、はむはむして、食べてまうねん。
流石に本当に食うてもうたら、俺の大好きな神野の手が無くなってまうからあかんけど。
でも、最近神野を口ん中入れてまいたいなぁ、ってよく思う。それも、神野がベタベタになってまうし、嫌われてまいそうやから到底出来ないんやろけど。
あー神野と仲良なりたい。
そしたら、指くらい咥えさせてくれるやろか? そしたらきっと今朝なんかと比べ物ならんくらい幸せなってまうんやろなぁ。
……って思う度に俺きっしょいなぁ、って自己嫌悪やねんけど。
でもな、それでも俺、神野とそーゆう風になりたいってずっと思っとるねん。もしかしたら口入れんかったって、めっちゃ幸せかもしれんやん。
告白なんか、絶対出来へんやろけど。神野完全にノーマルやろうし。ウチのガッコ、男子校でもないから「そーゆう人種もおるんやなあ、こういう所にはよくおる聞くけどなあ」じゃすまへんやろし。
そう考えたら、俺ってほんま何もでけへんのやなぁ。嫌われるの覚悟で何か行動してみるなんて勇気、俺にはあらへんねん。
……だって、もし神野に嫌われたら、俺死んでまう。
神野のためなら何でも出来る自信あるけど、嫌われたら多分生きる意志無くなってまうやろうな。
神野……。
大好き、や。
「あれ、水谷クン、今帰り?」
「あれ、神野……。」
せんせーに呼び出し食らって、職員室行ってる間に、俺のダチ、皆そろって帰りよった。薄情やなあ、ホンマに。
でも、ラッキー。ホンッマ、ホンマ!
「俺も一人やねん、いっしょ帰ろ?」
ホンマ!!
「おう! ありがとォ。」
「なしてありがと? 別に帰るだけやん。」
神野はそうやって笑ったけど、俺は緊張してちゃんと笑えたか分からん。
んでもって、駅まででバスに乗る神野とサヨナラした後、緊張し過ぎて何話したかとか覚えとらんしな。
好きなマンガの話とかした記憶はあんねやけど、ああ、もう! 肝心の中身覚えてへんとかもう俺死んでまえ!
って、改札入らんと落ち込んでたら、バス停の方に向かった筈の神野が帰って来た。
「あれ、水谷クンまだいたの?」
「んー? 神野、どしたん?」
話を聞くと、当分バスが出ないから何処かで時間を潰したいらしい。ああ、ホンマ、今日俺ついとる。
「じゃあ、俺今腹減っとるからマクドいかん?」
「あー、俺クーポン持っとるよ。」
ホラ、少しづつ、俺に神野が増えてく。
ホラ、少しづつ、神野に俺が増えてく。
……いつもは夢の中やから。いっしょの時間を共有すると、まるでホンマに通じ合っとるみたいな感覚になる。
「水谷クン何にする?」
「あー、俺金無いから100円のヤツやな。」
やって、話が繋がる。
「水谷クン、バイトとかやっとる?」
「いやー、この前辞めた。」
「なんでぇ、もったいない。」
「何かバイト先の先輩……あ、女な。に、迫られてさ。ダルなって辞めた。あ、勿論付き合ってへんで?」
なに言い訳しよるねん、自分。なんか、勝手に仲良し気分になってもうて、あかんなぁ。
「えー、でも水谷クンモテるやろー、カッコええもん。」
ホンマ、あかんわ。舞い上がってもうて。やって、神野優しいねんもん。
「んことないわ。」
「いや、あるやろ。俺が女やったらほっとかんよ。」
神野はどーやったら俺が喜ぶんか知っとるんやね。でも、コーラのストロー回しとるその指、差し出してはくれへんのやろ?
「あー、何か付いてんで。オトコマエ台無しやろ。」
くれんの?
大好きな、神野の指。
近付いてくる、少しおっきい手。
あんま焼けて無い腕。
なんや細い首と、撫で気味の肩。
優しげに笑った目尻と、少し薄い唇。
そのまま、俺に、くれんの?
……そっからは、なんや、あんま覚えてへん。
気付いたらベッドの上で号泣しとった。
傷つく事は無かったけど。
俺は作ってもたみたいや。
悲しいな
哀しいわ
んで、寂しい。
……それだけ。
それが、俺の恋の全てでした。
はい、ちゃんちゃん。
もう、嫌やわ。
神野……。
ごめんな、こんな気持ち悪いのが、神野の事、好きになってもうて。
ごめんな。
ああ、
……指って、ちょっと、しょっぱいんやね。
ちゃんちゃん。