幼馴染2
お久々にございます!
幼馴染君たちぼりゅーむ2ですがな。
今回は普通っ子目線。落ち着いた感じにしようと思ったら何故か普通に真面目っ子になってしまいまして……orz
後悔はしています、反省はしていません!!
今日、啓悟が早退したらしい。
何も珍しく、目新しい事でもない。高校生になってから、俺の幼馴染は変わってしまったのだ。
まあ、そんな事何処を見ても良くある話だし、まず啓悟が俺と同じ学校に入った事自体がそもそも間違いだったのかもしれない。無理して入った学校の授業に付いていけなくて勉強が嫌になってしまうなんて、本当、何処にでも転がっていそうな話だ。
それでも前は勉強教えてやったり、時々は一緒に遊びに行ったりはしていたのだが。最近はさっぱりだ。何週間も話した記憶がない。まあこれもある種仕方の無い事か。生きる道が違った、只それだけの事だ。
「……もうすぐ、啓悟君誕生日でしょう? 母さんケーキ焼いたの。最近遊んでないみたいだし、持って行ってあげてくれない?」
お菓子作りは多忙な母の唯一の趣味であり息抜きだ。だからか何か知らないが、母はよく誰かの誕生日となるとケーキを焼いて俺に持って行かせる。見た目も味もなかなかの物だと友達連中には大変好評で、俺も恥ずかしいながらも鼻が高い。
最近啓悟とも話してないし、調度良い機会だろう。早退の事もやっぱり何だか気になる様な気もするし、久々に会いに行くのも良いかもしれない。……まあ、家にいたらの話なのだが。
「啓悟ー? お前何で早退なんてしたんだよー?」
啓悟の家の前に立ち、取り敢えずチャイムを鳴らした後呼び掛けてみる。
「啓悟ー? いないのか?」
いないかもな。今頃繁華街で女の子引っ掛けてたりして。……うん、目茶苦茶有り得そうだ。
勝手に自己完結させて、家に帰ろうとくるりと踵を返す。
「わ、待った待った!」
ドタドタと慌ただしい音と一緒に、バン、と扉が開いた。俺は肩越しに振り返ってそれを見る。
「……何だ、居たのか。早く出て来いよ。」
「寝てたんだよ! 見たら分かるだろ!?」
確かに啓悟はスウェット姿で、髪もボサボサ、普段の姿とは一風違うのだが。
「……そんなの分かる訳ないだろ。それより、コレ。母さんから。後お前いい加減だらしない生活やめろよな。」
ケーキを入れた箱を啓悟に渡しながら小言を言う。俺は母親か何かか。そう思わない事もないが、昔からこれは俺の役目の様な物なのだから仕方がない。
「お! ケーキじゃん! やった、おばさんのケーキ旨いんだよなー!」
俺の小言は聞き流して、啓悟はケーキを見て喜んでいる。相変わらず見た目と中身が比例していない奴だ。ぱっと見、甘い物なんて食べなさそうな外見をしているのに。
………変な奴。
否、昔から変わっていないないんだ、性格とか、中身とかは。変わったのは見た目とか、喋り方だけ。だから、変なんだ。だから、違和感があるんだ。
「入ってけよ、久々に遊ぼうぜ。」
これまた見た目に似合わずニコニコした笑顔を見せて、啓悟が俺の腕を引く。
「………あーいや、今日はちょっと塾があるから……。」
俺が言葉を濁すと、啓悟は思いっ切り顔をしかめた。
「はぁーあ!? 何でだよー、良いじゃん良いじゃんんなモンサボれよー!!」
掴んだままだった俺の腕をぐいぐい引っ張って、啓悟は家の中に入った。
中はシン……と静まり返っている。いつもの事だ。俺の母さんと啓悟の母親は、仕事仲間で親友、二人とも働く事に誇りを持っている……よって、今は仕事中なんだろう。俺の母さんは久々の休暇だった、という訳だ。
「こら、引っ張るな啓悟! それにテスト近いんだから休める訳無いだろ!」
腕をぶんぶん振り回して抵抗してみるが、全く意に介していない様だ。何故だ。
「ムッリーむりムリ無理〜! 今日はオールで格ゲー決定ー!!」
「はぁ!? ちょ、おま、冗談キツいぞ!!」
半ば引き摺られる様にして玄関にあがる。……コイツ、こんなに強引だったっけ?
「なんで、だよぉー…、お前……最近、冷たい、じゃねぇかよぉ…。」
「……啓悟、いい加減にしとけ。流石に呑み過ぎだ。」
結局、塾には行けなかった。今日、数学の講座だったから絶対に落としたくなかったのに。
で、試験前の貴重な時間を割いて俺が何やってるかって、酔っ払いの介抱だぞ!? さっきまではオールだとか言って帰ってきたおばさんに宣言してまで部屋に籠ってゲームしてたのに、飽きたからってそれは無いだろう。
全く、冗談じゃない!
もう既にチューハイとビールの缶を何本も床に転がせているというのに、啓悟は未だ足りないとでも言うかの様に新しい缶のプルトップを開ける。
「もうやめろよ、明日も学校あるんだぞ。」
「休むー……。一緒に休むから…良いだろーー…。」
「何がだ、この酔っ払い! ほら、その缶放せ!」
俺は啓悟から缶を取り上げると、手の届かない様に俺の後ろの積み上げられた漫画雑誌の上に置く。
「あー、無くなっちゃったー。」
言うが早いか、啓悟は俺に抱き付いてきた。
「!」
ぎ、ぎゅう。
絡み酒かよ、タチ悪ィな。ギリギリと加えてくる啓悟の力は、俺が知っていた時のものより大分、変わっている様だった。
「いってぇ! 止めろ、放せこのバカ!」
俺が怒鳴って頭を殴っても、啓悟は一向に腕の力を弱める気配も無い。
「………ほら、放せよ。愚痴なら聞いてやるから。」
無理矢理引き剥がすのは諦めて、頭を撫ぜてやりながら優しく言ってみる。幼児的精神状態へ退行しているのなら、たしかコイツは甘やかされるのが好きだった筈だが。
「…………。」
啓悟は俺の胸に顔を押し付けたまま首を振った。それどころか更に体を密着させ、俺に全体重を預けてくる。
「わ、やめっ、ちょ!」
俺はその重さに、まだ啓悟の頭の上を彷徨っていた手を床について、体を支える。
「……あ、あー?」
啓悟はふらふらと抱き付く腕を緩めて下にずり落ちていく。相当酔いが回ってきたらしい、腕に力が入らない様だ。
「ああああ」
啓悟は俺の足までずり落ちて、それでも腰にしがみつこうと腕を延ばしてくる。
「……啓悟。」
そのまま寝てくんないかなァ……。体を起こし、派手な色の髪を梳く様に撫ぜてやると、薄く目を瞑る。
「ん………。」
「寝ても良いぞ……。ベットにくらいあげてやるから。」
出来るだけ優しく微笑み、頬に触れる。少し優しくするとすぐに甘えだすまだ大人になりきれない俺の幼馴染の腕は、力を失い、俺の腰からだらり、と床に落ちた。
「ん……まだ…。」
膝の上の顔はもう半分夢の中にいる状態を表す程ふやけているというのに。これ以上何があると言うのか。
「………寝ろよ。」
ベットがある方向に軽く体を押してやる。
「…てゆーか、……お前、一口もー…呑んでねぇー……じゃん?」
ああ、またか。また忘れてやがる。酔っ払いが。
「俺明日朝学校早く行って勉強する約束してるって言っただろ?」
啓悟は、本日何度目かの渋い顔をした。床に落ちていた腕が、また俺の腰を掴む。
「………。」
「……拗ねるなよ。ほら、もうベット入れ。」
俺は啓悟の腕を無理矢理引き剥がしそのまま腕を引っ張って立たせてベットの上にダイブさせた。
「わ!」
「あ、コラ引っ張るなバカ!」
ぼすん、と二人してベットに倒れ込む。
「……んー。」
啓悟はそのまま俺を抱き込むと、首筋に顔を寄せてきて、目を瞑る。……って、このまま寝る気か!?
「こら、啓悟! 起きろ、放せって!!」
自由の無い腕をバタバタとさせても、芋虫かの様に体をくねらせても啓悟の腕が緩む事は無く。
「………ハァ…。」
溜め息を吐きだすと共に、俺は抵抗を諦めた。今コイツに何を言っても無駄だ。ならば明日の朝、啓悟が起きやしないような時間に叩き起こしてやってねちねち言ってやる方がよほどすっきりするだろう。
そうと決まれば俺はすぐに目を閉じた。男二人でベットは正直狭いしムサいし暑苦しいが、ここは我慢だ。
目さえ瞑ってしまえば、今日一日の疲れがどっと押し寄せてきて、俺の意識は急降下していった。
だから、
「祐介……好きだ。」
とかいう声は、勿論聞こえている筈もなかった。
さて、お疲れ様でした。
取り敢えず言い訳させてください。前作のちび子とふくかいちょの終わり方が自分でもムカつく程に気持ち悪かったんで、今回は正面にしようと思ってのこれです!
結論、やっぱりふりょ君目線でおわりたかったんです。
本当すんません。
続きをお送り出来るかはテンションに寄りますが……。
………ああ、わんこも書かないとなぁ…。