バルルンの町へ2
俺はひたすら右へと歩いて行く。
さっきは、ゴブリンが現れたけれど今は何も出てこない。ここは、安全地帯なのかと思う。安全地帯とは、モンスターの出現がない一部の地域の事である。普通は、そこに村や町などを作るのである。ここが、安全地帯ならバルルンの町は近いということになり良いのだが、俺的には新しいスキルを使ってみたいのでモンスターが出てきて欲しい。少々複雑な気持ちである。
そんな事を考えながら、歩いていると木に激突してしまった。考えていると回りを見れなくなるという悪い癖が出てしまった。とにかく右へ行く事だけを考えておこう。
そう思っていると木の上からゼリーのような物体が降ってきた。さっきの衝撃によるものだと思う。しかし、なぜゼリーが?そう思ったが、右へと行くことだけを考えると決めたばかりなので放っておくことにする。すると、視界の端でそのゼリーが動き出した。何かと思い慌ててそちらに目を向ける。するとそのゼリーの上にスライムという文字があった。ナイフを構える。
「スライムかよ。驚かせやがって。」
思わず言ってしまう。RPGでも、スライムは雑魚キャラ中の雑魚キャラである。合体などをしなければの話だが。
スライムは驚いているようだ。そりゃそうだ。いきなり木の上から落とされたのだ。今のうちにと思い、先ほど覚えたばかりのアックスブレードを使ってみる。使おうと思ったら勝手に体が動いてしまう。これがスキルなのかと思いその動きに合わせて体を動かす。スライムまでもう少しだ。いまだに向こうをむいて、驚いている様子のスライムに蹴りを入れる。
と、同時にムニュっという感覚が足を伝わる。
「っん!」
止められてしまった。スライムがこちらを向く。かなり、警戒しているようだ。俺は動揺する。俺の考えでは、今頃ナイフをスライムに当てていたはずだ。なのに実際は、蹴りを止められてしまったのだ。動揺をみてか、急にスライムが攻撃をしてきた。軽く飛ばされる。
HPゲージがわずかに減ったのを確認する。
蹴りがだめなら普通にナイフを当てれば切れるのではと思い直す。動揺してる暇なんてない。
「てりゃー!」
と叫びながら間合いを詰め、そのままナイフを当てる。手応えはあった。これで終わっただろうと思いスライムの方へと向き直った。
「!!!」
目に映ったのは、2体のスライムだった。
スライムの攻撃は速かった。すぐさま顔に飛びかかってきた。俺の防御も出来ないままその場に倒れた。 息が出来ない。苦しい。
この世界にきてすぐに死んでしまうとは。死んだらどうなるのかを考えてみる。普通ならば、復活ポイントで復活するであろう。しかし、ここに復活ポイントは存在するのだろうか。ここは、異世界だ。最悪の場合そのまま終わってしまうだろう。現実に戻れるのだろうか?しかし、戻った場合でも俺は車にひかれたのだ。なら、病院にいるのか?それとも俺は死んでしまっているのか?なら、どうなる?
それ以上は・・・。考えたくなかった。だんだんと視界が暗くなっていく。気付けば俺のHPゲージは、赤になっていた。スライムごときで。俺は自分に失望した。
不意に顔のスライムが剥がれた。
「・・・大丈夫?」
という優しい女の子の声が聞こえたような気がする。意識がもうろうとしていく。
俺はそのまま気を失ってしまったようだ。
気づくと俺の目には、天井が映った。ここはどこだ?と思いながら体を起こす。
「大丈夫?」
気を失う前に聞いた声と同じ声が聞こえる。声の方へと顔を向ける。そこには、目や髪が炎の様に真っ赤な少女が立っていた。
「ああ、大丈夫だ。助けてくれてありがとう」
と返事した。するとその少女は
「良かった」
と満面の笑みで答えてくれた。