表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ネット仮想世界シンドローム

作者: 薫姫

「逃げ」がテーマです。(ややマニアックな単語も出てきますがそこまでコアな話ではありません。)

深夜2時ジャスト!という訳ではないがやや時間が経過し

2時過ぎといったところか。猛烈な喉の渇きによって目が覚める。

冷蔵庫に赴き中にあるアクエリアスを飲み干す様にがぶ飲み。


「なんでこの家こんなに暑いんだよ。ありえねえだろうが・・・。」

余りの蒸し暑さに軽く、いや吐き気を催す程の怒りの感情が湧いてくる。

その怒りの矛先・・・。「暑いのに人が寝てる時に風呂なんか入りやがって。」


風呂に入った後に風呂場のドアを全開にしてサーキュレーターを

回している。この家の換気扇は壊れていて直すのに何十万もかかる為

壊れたままにしてあるので風呂なんか真夏に入ったら居ても立っても居られない

ぐらいの蒸し暑さで軽く、本当に軽く「死にそう」になる。

熱中症になるのってこういう家だな。と「有子ゆうこ」は思った。


「有子」は風呂に入った後に寝ている自分の母親の姿を見て

何とも言い難い感情に「また」とらわれている。

「台風きそうで蒸し暑い日に夜中に風呂入って自分は寝てんのか。」

「有子」は最近母親と反りが合わなくて苛立ちを隠せないでいた。

「何でこの親から自分は生まれたのか・・・どうしてこの親を

許せないでいるのか・・・。」苛々してたまに殴りたい衝動に駆られるが

拳握って「グッ」と堪えて歯ぎしりしている。そんな日常だった。


「あの世界に逃げ込みたい。此処は自分の居るべきところじゃない。」


そう思い立ち、踵を返して部屋にあるパソコンに向かう。

「ネット世界」とはいっても様々あるだろうが、「有子」が

毎日どっぷり浸かっている世界は「自身のブログ」だった。

立ち上げる。暫し時間経過。既に「謎の高揚感」から

「早く繋がれよ・・・。苛々すんだよ!!」とパソコンという

機械に向かってまたしても苛立つ。

「有子」は以前ブログと併設してTwitterアカウントも持っていたが、

憧れであった筈のバンドマン(バンドの種類は察してください的な)に

毎日リプを返していたら某掲示板でファンのやっかみからズタボロに

叩かれて晒された経験があり、「二度とするか!」と苦々しい感情で

いっぱいになっていた。憧れの存在であるバンドマンに対する想いも

それにより若干薄らいでいた。


「稀薄」



真っ白になった頭で「脳裏にいつまでも刻まれている歌詞やメロディー

が何度も何度も再生されて蘇ってくる。」この複雑な感情からも

「逃げたかった」・・・・・・・・・・。

母からも憧れの存在からも「逃れたかった」。


立ち上げ完了。

「ようこそ」の文字に心が躍る。

いつものブログにログインしてトリップの開始だ。


「おはよう。今起きたよ。全然なんてことない話だけんども。

ねえねえ。今日の深夜アニメもう見た?感想待ち中~www」


ほぼ同時刻に既にログインしていたブロ友からコメントが来る。

華凛かりん」さんだ。

多分同年代だと思われる「少女」(だと思う。顔が見えないから

実はネカマのオッサンによる成りすましじゃないのかと嫌な想像も

よぎるのだがそんなことは考えない様に普通に接する。)


「よっすはよ~ん♪今日も早いね~。深夜アニメ?あーまだ見てないや。

暇な時にしか「ガーッと」見れないじゃん?でもさあ。最近のアニメも

廃ってきた感じしない???前はもっと面白かった気がしてさー。

ほんとそれ最近思うんだけどね。うーん、まあぼちぼち消化して見てく。」


「華凛さん」とネットを通じて喋るのが楽しくて仕方がない。

(ここからの会話はメッセージ機能を利用している)


「華凛さんは今自分の中で「何ジャンルがキテるの?」あたしはさ、

前は萌えアニメ好きだったし原作ラノベとかコミカライズ版の漫画とか

集めてたんだけど最近それもだるくなっちゃって・・・。もういっそ

「百合」とか「BL」とかのジャンルに移ろうかなって考えてるんだー。」


「有子さんどうしたーwwwwwwwいきなりジャンル変えっすかー?(笑)

でもそれですらあんましジャンル変わったジャンル変わった言ってもほぼ

同じようなもんじゃないすかーwwwいやむしろ「よりコア」になった?(笑)」


「いやあ、リア友と話してても「BL」には理解あるんだけど「百合」は

流石にないわあ~て本気で引かれるの(笑)多分ガチで「百合」な人間だと

思われちゃったのかもしれんwww女友達に怖がられちゃったんよ~w

そんなわけないのにね~wwwリアルでは「百合」は求めないでしょふつー。

ましてや「友達相手」によー?(汗)あくまでも趣味の範囲内っしょwww」


「・・・いや、でもさ、有子さんはそう言うけどさ。私は少しわかる気がした。

私有子さんが相手だったら「抱かれてもいい」よ?(笑)むしろ「抱いてくれ」的なw

まあ冗談だけどね~wwwいやでも半分は本気かもにゃwww(にゃだって、

あっし「キモーwww」。発言のすべてがキモイよね~あっしwwww)」


「さすがにそれは「ドン引く」わあーーーwwwwwww華凛さんそれ、

ネタで言ってるのかマジに言ってるのか・・・。ネタだよね?(苦笑)」


「うーん。「察してくれ!w」うそうそwwwまじに言うわけないわーwww

・・・はあーあ。あたしら真夜中になにに盛り上がってんだろーね~?(笑)

てか、何の話から「百合」ネタにすり替わったんだーwww」


「ああ、ごめんごめんwww深夜アニメのネタから私の「ジャンル変え」の

話に移っただけだよーwwwごめん!すまん!混乱させたよね???(汗)

で、華凛さんは今何にハマってるの?」


暫くの静寂の中真夜中の狂気の様なハイテンションで会話してたせいなのか、

深くトリップしすぎたせいなのか若干「疲れ」が出てくる。

華凛さんからはメッセ機能の返事が来ない・・・。

(どうしたのかな・・・???)とやや不安に陥る。


「ごめんね~。ちょっと疲れたから寝落ちします。」

一言だけ返ってきて一瞬固まる。

私だけが楽しかったのかな???でもハマってるジャンル聞いただけで

なんでいきなり「逃げられた」のかが分からない。



暫しの間シンとした部屋の空間内で椅子にもたれて背中反らして

溜め息をこぼしながら「呆然」としていた。

「私は結局「何」からも逃げられないんだなぁ・・・。

お母さんに対しても(そりゃ会話は嚙み合わないわ、時間も合わないわ、

顔合わせたら私の顔見るなり逃げ出す始末だから呆れてるだけだけど)

なんであんなに反抗心むき出しで苛立って「ほんのり殺意」湧いてたんだー?

熱狂的なファンの筈だったバンドマン様ですら見るのも苦痛になってたし。

アニメだってあんなに大好きでどっぷりハマってたというのに今は

「それすらも虚しい」・・・。現実世界でもリア友と最近あんまし仲良くないし、

じゃあ「何処」に逃げるのって話になれば「ネット」(しかも過疎ってるブログ)。

おなかすいたな・・・。ポテチ食べたいわ・・・。」


別段「バンドやアニメ」だけに絞らずにドラマやバラエティーも見てることは

見てるんだけど・・・。


「漫画原作のラブコメ映画」を途中から再生してポテチとりんごジュース、

もう片手に菓子パンを持って視聴しながら食べている。

「もうネットもやめようかな・・・。」という感覚にとらわれて、

バリバリ「ポテチ」をこぼしながら食べて「心の飢餓を埋めている」。


一方の「華凛」も、げに恐ろしきかな「有子」と同じようなことを

頭に浮かべていたのである。

「このままネットに浸かってても人生同じじゃん・・・」

テレビに映っていた海外ロケの「世界番組」を偶然見ていた「華凛」は、

「こういうところでのんびり過ごせたら実は人生ってもっと生きやすくて

楽なのかもしれないなぁ・・・。」だとか脳裏に浮かべながらこっちはこっちで

りんごチョコレートなる甘いお菓子を頬張っていた。

疲れた心を癒したかったのかもしれない。明日の朝にまたコンビニで

100円で売られている無印良品ぽいお菓子を買おうかと思案中。



「ネットはもうやめようか・・・」(2人同時に同じことを考えていた。)



この様にして社会から隔絶された少女たちの現実からの「逃避行」は終わる。

・・・・・とは言っても何かしらにつけ別の趣味を見つけてまた走り出すのは

どうしてもやめられないのであろう。

ネット社会で常に誰かと関わらなくては「生きていけない病理」。

其処はとても稀薄で曖昧な線引きの実に危うい世界。

「リアルに生きる」ことが難しい世の中なのであれば「仮想世界」に

しがみつくしか術がない。


「絶望」と「幻想」の間で揺れるのは「人間が本来誰しも持っている脆さ」

なのかもしれない・・・。

作者の実際の「心理」と「見つからない答え」が主なテーマです。

そこに架空の人物を照らし合わせて「生きることから逃げてはいけない」と

浅く、拙い「描写」ですが、考えてみた「結果論」になりました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ