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彼女と世界

 彼女は世界を愛している。きっと彼女ほど世界を愛している人はいないだろう。


「フランス語?」


「うん、留学したくてね」


 人形を作っているうちにこれを仕事に出来たら良いかなって。


 日本人形も良いけど西洋人形も作ってみたいなぁって。いつか、フランスに行きたいなって。そのためにはフランス語の勉強しないといけない。


「辞書、あったから貸すわよ」


「良いの?」


 彼女に聞く。


「もちろん」


 彼女はそう言い大きく頷いた。


「世界が好きだから持ってるの?」


 フランス語の辞書なんて持ってるのはフランスが好きな人とか位じゃないかな?


「そうね」


 そう言った。


「世界はね、愚かで愛しいものよ」


 そして彼女は笑った。


「あっ、家に電気のない子だ」


 こちらを指差して笑う人がいる。感じ悪いな。誰の子とを言っているのだろう?


 すると彼女は、その人に近付いた。


「中学の時一緒だった野上さんよ」


 去ったあとに彼女が説明した。


「あぁ、あの子ね」


 僕は、苦手だったな。彼女、きつい子だから。


「ねぇ、電気のない子って?」


 中学の時、私の家貧乏だったじゃない?その時の名残よ。と彼女が言った。


 それって、彼女が悪い訳ではない。どうして、彼女はバカにされているのにこうも…。


「最高ね」


 貧富の差で裕福な人は貧しい人をバカにする。そんなのやっても何も思わない人がたくさんいるの。


 嗚呼、世界は最高だわ。と彼女が笑う。


「私は、そんな世界が好きだわ」


 少し影のある笑顔を作った。


「はい、これ」


「ありがとう」


 彼女から辞書をうけとった。


「どこかいくの?」


 また、出掛ける用意をする彼女に言った。


「えぇ、お婆ちゃんの家にね」


「一緒にいこうか?」


 最近物騒だし。


「別に大丈夫よ」


 でも、貴方の家まで行こうかしら。


「わかった」


 家まで彼女と一緒に行こう。


「あら、雨」


 ぽつぽつ、と地面を濡らし始めた。


「傘、貸すよ」


 家の玄関から傘を探した。


「風邪引くといけないから」


 そう言って彼女に傘を渡した。


「別に大丈夫なのに」


 彼女が言う。


 押し付けるようにして彼女に傘を渡した。風邪引いたらちょっとね。


「ありがとう」


 明日返すわ。そう言うと彼女は、雨の中を歩いて行った。


 彼女は、世界を愛している。でも、どうして彼女は、理不尽ばっかりの。差別ばかりの。平和ではない世界を愛しているのだろう?


 どうして、虐められててもオタクで差別される常識なんて破ったら人生終了みたいな世の中を愛しているのだろう?


「僕には、君がよくわからない」



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