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彼女とは?

「嗚呼、世界は最高だ」


 彼女は、世の中の誰よりも世界を愛している。


 彼女は口癖のように世界は最高だ、と褒め称えていた。気味が悪く周りが引くほどに。


「あら、菊の花」


 彼女は、言わば天才だった。周りとは違う生き方をしていても天才だし美人だった。勿論、それを妬む人もいる。


 だから、彼女の机にはよく菊の花なんかが置かれているし落書きだってされることがある。


「嗚呼、最高」


 彼女は、うっとりと菊の花を眺めていた。


「虐めだろ?ソレ」


 ある日、彼女にそんなことを言ってみた。天才だけれどどこか抜けているバカなのかもしれない。そう思っていたから。


 だけどそんな予想を簡単に裏切られた。


「知っているよ」


 それは、それは、綺麗な笑顔で言った。


「少しでも浮けば叩かれる」


 そんな世界が好きなのだ、と笑っていた。


「そう」


 あの時は、そっけなくしたつもりだったが内心、彼女はバカなのかもしれないと思い直していた。


 いや、かなり度の過ぎたMなのかもしれないとも思った。


 何故かこの疑惑だけは予想を裏切らなかった。


 あれは、いつの時だろうか?確か、音楽の時間だっただろうか。


 俺の学校の音楽教師はとても怖い人だった。男だったが気に入らない事があると女だろうが怒鳴り付けていた。


「…すみません」


 すみません、すみません。ずっと謝り続けていたクラスメイトがいた。怒られた理由は、声が小さいだとかの下らない理由だった。


 確かに、声を大きく出すのは悪いことではない。そのクラスメイトは、顎関節症であまり口を大きく開けられなかった。


「お前な、だからって」


 それでも攻め立てようとする教師の声を遮ったのは彼女の声だった。


「病気が悪化したら責任持てるんですか?」


 あの時の笑みではなく、嘲笑のような笑みだった。


「持てないでしょう?」


 なら言わない方が良いと彼女が言う。その時、彼女の頬が紅くなった。


 少しの静寂があった。ぼんやり思っていたのは、彼女が打たれた事だった。


「そうやって、部活の子にも手を上げたのね」


 彼女は、にっこりと笑うと出ていった。


「大丈夫?」


 保健室に行って少し湿布を拝借してきた。流石に打たれた跡は痛々しかった。


「ありがとう」


 そう言うと彼女は、階段の影から顔を出した。晴れた日は屋上、雨の日は屋上の階段。それが彼女の隠れ家だ。


「痛くないの?」


 階段に腰を下ろした。


「逆に最高よ」


 思い通りにならないと気が済まないそんなやつが打ったのだから。と彼女が言った。


 ドMみたいだな。そう言って笑うと彼女は真剣そうにそうかもしれないと言った。


「世の中の不条理こそが最高で、ぞくぞくするわ」


 それは、綺麗な笑顔と一緒に。

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