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転生

 く、苦しい。息が出来ない。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。


 「おぎゃーーーーーー!!」


 ようやく呼吸できた。酸素、酸素を私にもっとくれ。


 「おぎゃーーーーーー!!」


 うるさいな。近くで誰か赤ん坊が泣いている。いや、泣いているのは私か?


 「姫様!生まれました。王子様です!!」


 そうか。私は転生したのだったな。しかし、王子様って…あぁ、眠い。少し眠ろう。考えるのはその後だ。


 「王女様!!」


 「私…の…赤ちゃんを……よく…見せて」


 誰かに体を運ばれる。視界がぼやけていてよく見えない。運ばれた先にはベットで横になっている女性がいた。この人が私の母なのだろう。とても落ち着く。心を優しく包まれている感覚だ。これが、愛情というものなのかな。久しぶりに気持ち良く寝ることが出来そうだ。


 「スズカ!!」「王女様!!」


 大きな音と声を上げて2人の男と少年?が入ってくる。うるさいな、私は眠たいのだ。


 「生まれたのだな」

 「はい…。男の子…です…」

 「ああ。よく頑張った」

 「ありが、とう…ございま…す…」


 かなり厳格な感じのする声だが、その中に優しさを感じる。この男性が私の父親なのだろう。父は私に触れる母の手に自らの手を重ねた。


 「レイス」

 「はい」


 母が少年?を呼ぶ。……もう、限界だ。眠すぎる。


 「私の…代わりに…」

 「王女様!!」

 「この子…を…ショウ…を守って…ください」

 「…はい!私の命に代えましても!」


 少年?は泣きそうな声で返事をする。待て、代わりに?どういうことだ。


 「スズカ…」

 「王様…申し…訳…ありま…せん。約束…は…守れそうに…ありません…」

 「おい!しっかりしろ!!ずっと余と一緒だと、言っただろう!!」


 ………待て待て待て!!なんだ、この状況。まるで、母が死ぬみたいじゃないか。だめだ、まだ顔をよく見ていないんだぞ!!


 「ショウ…」


 母がこちらに顔を向ける。だが、視界がぼんやりしていてよく見えない。


 見るんだ!見えろ見えろ見えろ!!頼む!私の事を愛してくれる母の顔を知らないのは嫌だ!!


 「あなたは…自由に…王族だとか…平民だとか…考えずに…自由に…生きて…ね…」


 私は目に力を入れる。途端、視界がクリアになった。


 人並みの言葉だが、女神のように美しいと思った。長くてふわっとした感じの淡い桃色の髪。透き通った翡翠色の目。大粒の汗がはじかれるようなきめ細かな白い肌。そして何より、これから死ぬというのに苦しさを感じさせないで、私を愛おしそうに微笑んでくれる表情。


 それがこの世界での、私を愛してくれた、母を見た最初で最後の瞬間だった。

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