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四月①

四月十八日 木曜日 晴れ


今日から私、日記をつけることにします。とてもとても困ったことに、私は一年前に戻ってしまったようなのです。あの憎っくき転校生がやってくる前日にタイムスリップしてしまいました。退学して、私を庇ってくれた家族と共に路頭に迷う筈の昨日はなんだったのかしら。一体これからどうしたらいいのかわかりません。でも、これって人生をやり直すチャンスなの?



四月十九日 金曜日 曇り


朝のホームルームであの転校生が来ましたわ。一年前と全く同じ挨拶をした立花さん。席に座ろうとして、転んだ彼女を遥貴様が助け起こした所も同じですが、前とは違って嫉妬はしません。一年前の私は彼女のことなんてなんとも思っていませんでした。顔も家柄も普通なあの子に何の感想も持たないのは当然でしょう。まさか、あの子に私の婚約者がとられるなんて思いもしなかったあの頃が懐かしい。遥貴様とのこと、私はどうしたいのかしら。今日は避けてしまったけれど、一緒に帰らないと言ったらとても不思議そうなお顔をされていたわ。タイムスリップする前も含めて私がそんなことを言ったのは初めてなのだから、驚くのは当然ですけど。そういえば、怒った顔や軽蔑した顔以外を見たのは久し振り。



四月二十日 土曜日 曇りのち晴れ


私立は土曜日も授業があるなんて。立花さんの顔を見るのは嫌だわ。嫉妬に狂った醜い自分を思い出してしまう。そういえば、今日は不思議なことがありました。遥貴様が立花さんにお願いされた校舎案内を断っていたの。記憶が間違っていなければ、遥貴様が立花さんに校舎の案内をしたことがきっかけで仲良くなりましたのに。タイムスリップしたとはいえ、皆さんの行動も話していることも、一年前と全く同じというわけではないみたい。結局、遥貴様は立花さんよりも生徒会のお仕事を優先したのかしら。今日も一緒に帰れなくてごめん、なんて言いに来てくれましたけど…。頭を撫でられたのも久し振りです。



四月二十一日 日曜日 晴れ


三日坊主にならなくて良かったです。今日は久し振りに家族でゆっくり過ごしました。私の愚かな行いのせいで家族に迷惑をかけたことがとても心苦しかった。またお父様やお母様、お兄様と一緒に笑うことが出来るなんて夢みたい。本当に嬉しい。一年前に戻ったのは、また同じことを繰り返さないように神様が与えてくれたチャンスなのね。



四月二十二日 月曜日 晴れ


今日は朝から立花さんに会ってしまいました。なんだか待ち伏せされていたようです。私が立花さんにしたことを考えると、友好的に話しかけられてしまうのは気まずいです。でも私の勝手な事情で立花さんを避けるのもおかしな話だと考え直しました。立花さんは私と仲良くなりたいのだそうです。彼女にそんなことを言われるなんて思いもしませんでした。タイムスリップする前は始めから怯えられていましたし…。先週一度もお話しなかった私と何故仲良くなりたいのかはわかりませんが、これは償いのチャンスなのかもしれません。

立花さんとお話してみると、とても不思議な方と感じました。タイムスリップする前の立花さんとは随分印象が変わりました。穏やかで、少し泣き虫で、私の嫌がらせにも一人で耐え忍ぶような方でしたのに。今日の立花さんは元気で、積極的に行動していて、まるで別人のようでした。あんなに憎らしいと思っていたから、彼女を偏見で見ていたのかもしれません。正直、一人では何も出来ない方だと思っていましたし、自分さえ我慢すれば上手くいくと思っているところが嫌いでした。私はやり直すと決めたのだから、今まで見ようとしなかった立花さんのことを知っていきたいです。

ひとつだけ困っているのは、立花さんが朝から放課後までずっと私から離れないので、遥貴様に全く話しかけられないことです。遥貴様と立花さんを近付けたくないと思ってしまう私は、やはり心が狭いです。



四月二十三日 火曜日 晴れ


遥貴様と立花さんはお隣同士の席なのに、殆どお話をしていないみたい。タイムスリップする前は私が嫉妬してしまうくらい仲良くなっていた筈ですのに。まだ立花さんが転校して一週間も経っていないからかもしれません。これから仲良くなっていくのかしら…。



四月二十四日 水曜日 晴れ


立花さんと仲良くしない方が良いと、百合ちゃんに忠告されました。百合ちゃんは初等部からずっと仲良くしてくれて、わたくしが愚かな行いをしていた時もずっと側にいてくれて、時折私を諌めてくれました。そのせいで巻き込んでしまいましたが、最後まで私の味方をしてくれた大切なお友達です。他でもない百合ちゃんの忠告ですから、私の為でしょうし、きっと何か考えがあるのだと思います。自分の意見ばかりを押し通すことが愚かだと学んだばかりですが、仲良くしたいと言ってくれる立花さんを邪険にしては償いが出来ません。私はどうすればいいのかしら。どうしたいのかまだわかりません。私がこんなに優柔不断になるなんて。また失敗するのが怖い…。


遥貴様とは今日も殆どお話出来ませんでした。生徒会長として忙しいからなんて言い訳して避けてる自分が嫌になります。幸いなことに休み時間もずっと忙しそうですから、避けていることは気が付いていないのね。毎日送られてくるメールがとても嬉しい。当たり前だと思っていたことが当たり前ではないと理解出来ただけ、成長していると思いたいです。



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こちらの都合で申し訳ありませんが、投稿済みの小説をまとめさせていただきました。詳しくは活動報告をご覧ください。

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