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【完結済】ンディアナガル殲記  作者: 馬頭鬼
参・第八章 ~疫殺の朽腐林~
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参・第八章 第五話



「この世界と同じく、腐れ果てて滅びよ、小僧っ!」


 その叫びと右腕を上げる動作を合図に、破城槌ほどもある凄まじい蚊の群れが、一斉に俺目がけて襲い掛かって来た。

 耳元で飛ばれると不快極まりないあの音を何重にも重ねたような、脳髄を揺るがすような羽音を周囲にまき散らしながら、腐神の使徒共は俺へと突っ込んでくる。

 ……だけど。


「……ざけるなっ!」


 所詮、飛んできているのはただの「蚊」でしかない。

 権能を纏わせた右腕を俺が軽く振るうだけで、数百を超えていただろう蚊の群れは、あっさりと塩の塊になって足元へと落ちる。

 その足元は、俺の権能によって塩で固められた地面である。

 蚊共は地面と衝突するや否や、あっさりと砕け散っていた。


「流石は、『聖樹』を切り落とすだけのことはある、のぉ、小僧」


「へっ。

 なら、さっさと諦めたらどうだ、糞婆ぁ。

 その程度じゃ、俺に触れることも出来ねぇぜ?」


 感心したような老婆の声に、俺はそう肩を竦めて余裕の態度を見せつける。

 ……実際のところ、そう大きな余裕がある訳でもなかったが。


 ──負けることは、ないんだろうけどなぁ。


 あんな蚊如きが幾ら集まろうが、俺にはかすり傷一つさえもつけることは叶わない。

 そう確信しているからこその余裕の態度であり、だからこそこの俺が……破壊と殺戮の神ンディアナガルが敗北することはあり得ない。

 だけど……あの鬱陶しい蚊の羽音は精神をがりがりと削ってくる。

 老婆の面も、あの狂気そのものの言動も、ただただ不快指数を増すばかりで……正直、倒してやろうとか殺してやりたい以前に、「戦いたいとすら思えない」のが実情だった。

 ……そう。

 コイツは、そういう類の敵なのだ。

 とは言え、腐神ンヴェルトゥーサの化身にしてみれば、俺という存在は『最期を締めくくる素晴らしい生贄』なのだろう。

 老婆の腐りかけた眼球は、未だに俺への敵意を失っていない。

 まだ、何かをやらかすつもりのようだ。

 俺は少しだけ気を引き締めると……両拳を握って静かに権能を集め始める。


「くくくくく。

 完全に儂を、見誤っておるの、小僧。

 まだ分からぬのか?

 ……この、圧倒的な力の差が」


 俺の抵抗の意思も、このイカれた老婆にとっては美味しい御馳走のスパイスに過ぎないらしい。

 腐神の化身は相変わらず狂気めいた笑みを浮かべたかと思うと……ゆっくりと両腕を広げ、周囲を仰ぐ。

 その動作に釣られた俺が、視線を周囲に向けた、その時だった。

 薄霧に覆われているとは言え、視界に困らない程度には明るかった筈の周囲が……突如として、曇り始める。


 ──馬鹿、な。


 その世界中を覆うような蚊の群れ……いや、雪崩そのものに、俺は思わず目を見開いていた。

 気が付けば、四方八方……見渡す限り一面が、蚊の群れで覆われていたのだ。

 百とか千とか万じゃない。

 ……億や兆を使ってもまだ足りない。

 そういう類の、まさに「数え切れない」としか表現出来ない大群が、周囲を飛び交っていたである。


 ──何処に、これほどの……


 絶句している俺に気付いたのだろう。

 腐神ンヴェルトゥーサの化身は、その腐った面を笑みの形に歪ませて、哂う。


「くくくく。

 まだ分からぬのか?

 ……儂は、腐神なのじゃよ、小僧?」


 世界を滅ぼす腐神、世界を覆う腐泥、腐神の使徒。

 ……そして俺と重なっている破壊と殺戮の神が告げる確信が、自然と俺に彼女の告げる言葉の意味を教えてくれる。


「つまり……『腐泥』全てが、てめぇ自身、だったのか」


 俺の確信が導き出した答えは……そんな、途方もない代物だった。

 早い話が……『腐泥』は腐神の権能の集合体であり、だからこそ『腐泥』は使徒へと変わることが出来るし、腐神ンヴェルトゥーサの身体を再構成する材料にもなる。

 そして……


「今、この世界は『腐泥』で覆い尽くされている……」


「そうじゃよ、小僧。

 さぁ、絶望するが良い。

 何せ、今見える使徒など、一部に過ぎぬ。

 今や、この世界(・・・・)()なのじゃから、のぉ」


 腐神ンヴェルトゥーサの化身が、絶大な余裕を持って笑うのも、無理はないだろう。

 俺がこの糞婆を殺すためには、まず使徒を全滅させなければならず……そのために殺さなければならない使徒は、世界中の『腐泥』と同じ質量だけ存在している、と思われるのだから。

 つまり……俺が腐神を滅ぼすためには、この世界の腐泥を全て消し去らなければならない、という方程式が成り立ってしまう。

 幾ら何でもソレは……無茶苦茶にも程がある勝利条件である。

 尤も、「『腐泥』と使徒とが同じ質量で変換される」と断言する根拠はないのだが……俺の権能でも、殺した相手は同質量の塩と化すのだ。

 そのルールからは、俺と同類である筈の腐神も逃れられない……と、信じたい。


 ──どうやって、こんなのを、倒せってんだ。


「くくくくく。

 ようやく……格の違いを思い知ったかの、小僧?」


 腐神という桁違いのスケールを持つ相手を前に、俺が気圧されてしまったのが理解出来たのだろう。

 俺の怯みを見て取った腐神の化身は、手を叩いて喜びながらそう笑う。

 その老婆の笑みに呼応するかのように、周囲に飛び交う蚊の群れは、俺たちと一定の距離を保ちながらも、右へ左へ上へ下へと蠢き続ける。

 ……まるで、個でしかない俺を嘲笑うかのように。


「言ったじゃろう?

 ……百年かけたと。

 さぁ、儂の百年に埋もれて滅びるが良いわっ!」


「くっ?」


 腐神ンヴェルトゥーサの化身が放つ狂気そのものの具現化したような、蚊の津波が叩きつけられるその光景に、俺は怯みを隠せない。

 ……いや、所詮は蚊、でしかない。

 ゼロを何倍、何十倍、何百倍、何千倍しようと、所詮はゼロにしかならず……蚊の津波は俺に触れるどころか、十センチほどの距離に近づいただけで、あっさりと塩の塊と化して地に墜ちる。

 ……だけど。


 ──コイツは、ヤバい。


 権能を込めた右手を振るい、数百ほどの蚊を一気に塩へと化した俺は……それでも内心でそう判断していた。

 蚊によって俺には傷一つ付かなくとも……俺に内包されている権能は、徐々に徐々に削られているのだ。


 ──勝てる、のか?


 殺しても殺しても一向に減る気配を見せない使徒の群れに、俺は焦りを隠せない。

 ……消耗戦。

 このまま続けば……どっちの権能が上かを比べ合う、どろどろの消耗戦にしかならないのが分かる。

 そして……その消耗戦に勝てるかどうかすら、現状ではさっぱり分からないのだ。


「くくく。

 随分と粘るのぉ、小僧」


「……くっ」


 そんな中、腐神の化身は余裕ありげに笑う。

 ……いや、実際、コイツにはまだ十分すぎるほどの余裕があるのだろう。

 何しろ、コイツにはこの世界全てを覆うほどの『腐泥』……使徒のストックがあるのだから。


「黙れぇえええっ!」


「本当に活きの良い小僧じゃな。

 ……ますます気に入った。

 その心根を、根本からへし折ってやるわ」


 俺の右拳によって周囲の蚊が消し飛ぶにも関わらず……腐神ンヴェルトゥーサの化身は事もなげに立ったまま、そう告げてくる。


 ──畜生。

 ──キリがねぇっ!


 幾度も腕を振り回した所為で僅かに荒くなった息を整えながら、俺はそう毒づいていた。

 どうやらあの糞婆が何やら思いついたらしく、蚊の津波は一旦止まってくれている。

 幸いにして……未だに俺が負ける兆しはない。

 権能はまだまだ十分に使える確信があるし、若干の疲れはあるものの……動きに支障を来すレベルじゃないのだから。


 ──だが、勝てる兆しもない。


 潰しても潰しても、まるで世界中から群がって来ているかのように、トンボほどの大きさをした蚊は、俺という餌に向けて尽きることなく群れ集ってくる。

 このまま戦い続ければ、先の見えないマラソンと同じで……体力や権能よりも先に、気力の方が尽きてしまうだろう。


 ──だけど、戦いを決め手がお互いに、ない。


 本体を攻撃しようとも、使徒がいる限り、コイツは何度でも復活してくるのだ。

 つまり……


 ──いや、違う、か。


 不意に。

 俺と重なり合っている破壊と殺戮の神ンディアナガルによる『確信』が俺に囁く。

 ……あの『爪』を使えば、あの吐き気を催す『中枢』なんざ、あっさりと貫くことが出来るだろう、と。

 だったら、もうこれ以上、この不快な世界に居続ける必要もない。

 そう決断した俺は、右手の『爪』に権能を込め……


「そう言えば、お主はあの腐泥にまみれて腐れ死んだ小娘が、妙に気に入っておったようじゃの?

 願いを叶えてやる、などとほざきおって。

 かと言って、手を出すでもなし。

 ……かかかっ。

 もしかして、その年でまだ、女も知らぬのか、小僧?」


「……何をっ!」

 

 腐神の化身が放ってきたその一言に、つい激昂し、権能を手放してしまう。

 まぁ、図星だったのが理由の一つではある。

 だけど、あの女神のような少女を知りもしない癖に、好き勝手なことをほざくこの糞婆を、たかが『爪』の一撃なんざであっさり終わらせてしまって構わないかと……そんな疑問が頭を過ぎった所為もあったのだ。


「かかか。図星か。

 だったら、ほら、幾らでも創ってやるぞ」


 俺の躊躇いに気付くこともない老婆は、そう笑いながら近くにあった蚊の群れに手を突っ込むと……その群れへと権能を注ぎ込む。


「~~っ?」


 その光景を見た俺は……驚きを隠せなかった。

 さっきまで飛んでいた蚊の群れが集まり、腐泥となり(・・)……その腐泥は徐々に人の形へと変わったのだから。


 ──ふざけ、る、な……


 俺は怒りの余り、声すら出せない有様だった。

 何しろ、腐神の造り出した『その人の形をした何か』は……俺が助けようとして助けられなかった、あの女神のような少女の姿を模していたのだ。

 自身の身体を再生させられる腐神ンヴェルトゥーサの化身からしてみれば、腐泥を人間と同じ質感を持つ肉にするなんざ、そう難しいことじゃないのだろう。

 そうして現れた全身を腐泥で塗りたくったような少女の人形は、俺の方へとゆっくりと近づいてくる。


「ほら、待望の肉の孔じゃ、小僧。

 幾らでも突っ込むが良い。

 儂は優しいからの。

 ……精根枯れ果てるまでは、待ってやるぞ?」


「くそったれがっ!」


 人の想いを嘲るような腐神の言葉に、激昂した俺は右拳を振るい、腐泥で出来た人形を四散させる。

 少女の形をしていた肉人形たちは、どうやら本当にあの少女の姿を再現していたらしく、臓物と血と肉と骨が周囲に飛び散り、自然と塩へと化していた。


「……てめぇ」


 そうして返り血を浴びた右拳を力強く握りしめた俺の口から、自然とその呟きが零れ落ちていた。

 確かに、この糞婆の境遇には少し同情したし、復讐に取り憑かれ歪んでいるのだから、寛容な心で接してやろうとは思っていた。


 ──だけど。


 今のは、ダメだ。

 今のだけは、許せない。

 ……許せる、筈がない。

 俺の身体に、殺意が充満していくのが分かる。

 俺と重なり合っている破壊と殺戮の神ンディアナガルが、俺の放つ『本気の殺意』を喜んでいるのが分かる。


「なんじゃ、気に入らぬのか?

 なら……儂が教えてやろうかの。

 手足を腐らせ、身動きできなくなったお主を、儂が可愛がってやる。

 共に最期を迎える伴侶として、なぁっ!

 かかかかかかかかかっ!」


 俺の逆鱗に触れたことに気付くこともなく、腐神の化身は虫唾が走るような言葉を繰り返す。

 だが、もうこの糞の言葉に付き合う気はない。


「……いい加減、黙りやがれ」


 そして……『中枢』を破壊して終わらせてやるつもりも、もう完全になくなった。


「かかかっ!

 相変わらず威勢が良いのぉ、小僧。

 だが、相手との力量差も読めぬようでは……」


「ああ、もういい。

 ……これ以上、その腐った口を開くな。

 反吐が出る」

 

 腐神の権能によって偉ぶっているコイツに、見せつけてやらなければならないだろう。

 圧倒的な力を。

 圧倒的な恐怖を。

 絶対的な存在というものを。


 ──この、破壊と殺戮の神ンディアナガルの存在を。


 俺はゆっくりと右手を挙げ、口を開く。


「……破壊と殺戮の神、ンディアナガルが命じる」


 実のところ、ソレに必要なのはイメージであり、言葉ではない。


「我が屠りし、創造神ランウェリーゼラルミアの権能を用い……」


 だけど、イメージを脳裏に固めるためには、やはり言葉が必要だった。


「我が敵を、討ち滅ぼす刃よ」


 だから、言葉と共にイメージを頭に思い浮かべる。

 この敵を、圧倒的な力によって滅ぼす光景を。

 この敵に、圧倒的な恐怖を見せつける光景を。

 この敵に、抗えぬ絶対的な存在というものを知らしめる光景を。


「この怨敵の、何もかも、奪い尽くすため」


 世界中に散らばる、腐泥を、使徒を……この糞ったれの婆が調子付いている、その根源全てを滅ぼすために。

 億どころじゃない。

 兆では遥かに足りない。

 京をまだ超越し。

 垓という単位に届くほどの。

 この腐神というゴミの、全てを一瞬で滅ぼす力を……


「こ、小僧っ?

 な、何じゃ、この力はっ?」


 今になってようやく「俺」がどういう存在かに気付いたのだろう。

 腐神ンヴェルトゥーサの化身は慌て怯みを見せ始める。

 だが……もう遅い。


「さぁ、腐った糞婆ぁっ!

 てめぇの傲慢さの源なんざ、ただの糞でしかなかったのを思い知らせてやらぁああああああああああああっ!」


 俺はそう叫ぶと、脳裏に浮かんでいたイメージ通り、権能を発露させる。


「……槍よ、貫けぇええええええええええっ!」


 俺のその呟きと同時に。

 世界中を、俺の権能が覆い尽くす。

 腐泥を、蚊にしか見えない使徒を、枯れ木を、泥鰐を……その他数多の生物全てを滅ぼす、塩の槍が。

 俺のイメージ通りの……地表から数兆、数京、数垓、もしくはそれ以上の塩で創られた紅の槍が世界中に現れ、何もかもを貫いたのだ。


 ──やった。


 自分のイメージ通りの結果が出たことを頭の片隅で確信した俺は、知らず知らずの内に安堵の息を吐き出していた。

 実際……自分でイメージして実行したとは言え、半信半疑だったのだ。

 世界中の全てを権能で覆うという……常識を覆す無茶をしでかしたのだから当然だろう。

 破壊と殺戮の神ンディアナガルは「それが出来る」という確信を訴えていたにしろ……俺の人間としての常識は、やはりそれを信じ切れていなかったのだ。

 だけど、俺のイメージは現実となった。

 目を閉じて世界中に意識を飛ばせば……もはや世界中に腐泥など、一欠けらも存在しないのが分かる。

 とは言え、その代償はかなり大きく……全身にずっしりと、水泳の授業後のような疲労感が圧し掛かってきていた。

 ……尤も、腐神ンヴェルトゥーサの残りカスを潰すのに、支障が出るほどの疲労感とまでは言えないのだが。

 

「……ば、馬鹿、な。

 儂の百年が……儂の呪いが、儂の恨みが……」


 自信の源が……いや、存在の全てが一瞬にして根底から失われたことが信じられないのだろう。

 腐神は……いや、ただの腐った顔面をした一人の女は、首を左右に振って眼前の光景を否定しようともがいている。

 俺はその無力なただの女に向けて一歩足を踏み出すと、現実を突きつけるよう、優しく笑いかける。

 

「貴様の百年なんざ、俺の一秒以下だったってことだ。

 無駄な努力を百年間も、ご苦労様でした、なぁ、おい」


 俺のその笑い声に、腐神の化身だった女は、ようやく何が起こったかを理解したらしい。

 怯え始め、震え始め……尻餅をつきながら、俺から離れようともがき始める。


「ひ、ひっ。

 一体、な、な、何なんじゃ、お主は……」


「……破壊と殺戮の神ンディアナガルの化身。

 この世界を通りすがっただけの……てめぇと同じ、ただの化け物さ」


 怯える腐神ンヴェルトゥーサの化身に、一歩一歩近づきながら、俺はそう肩を竦めて見せる。

 ……正直な話、一度冷静になってみれば、こうなるのは必然だった。

 塩の世界と砂の世界を滅ぼし、創造神ラーウェアとランウェリーゼラルミアを滅ぼし、蟲皇ンまでも取り込んだこの俺と。

 百年もかけてたらたらと、こんな腐った世界でもたついている雑魚と。


 ──例えあのまま消耗戦をしたところで、俺が負けていた筈がない。


 とは言え、終わりのないあの消耗戦を続けた場合、権能が尽きる前に俺の心が折れていた可能性もあったのだが……

 そうして怯える腐神ンヴェルトゥーサの化身……いや、既に名前すら知らない堕修羅の女に近づいた俺は、ゆっくりと自分の右足を持ち上げる。


「……何か、言い残すことはあるか?」


 俺のその問いかけに、朽ち果てた女は顔を上げる。

 怯え、震え、恐怖に染まった腐れ果てた顔で……それでもなお、引き攣った無理矢理っぽい笑みを浮かべると。


「儂は、この腐れ果てた世界を滅ぼした。

 儂の願いは叶ったのじゃ。

 じゃが……こんな形では、死にたくなかった、のぉ。

 あのまま、生きて……もっと色んな、楽しいことがしたかった、の」


「……ああ、そうだろな」


 その最期の呟きとして放たれたのだろう堕修羅の女の言葉に、俺は軽く頷くと……


「だが、腐泥の毒で死んでいった奴らも、そう思っていただろうよ」


 そのまま持ち上げていた右足を、その病と腐泥によって腐れ果てた女性の顔に、欠片の容赦もなく叩きつけたのだった。



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