参・第七章 第七話
──嘘、だろう?
動かなくなった少女の姿を目の当たりにしても……俺はまだ眼前の景色が、腕に抱いたまま動かない少女の身体が、現実のものだとは思えなかった。
何と言うか……出来の悪い映画か漫画を見ているようで、どうにも現実感がない。
目を覚ませば、この悪夢が覚めてくれるような、そんな期待をするものの……俺が目覚める予兆などは、見当たらず……
「こい・よっ!
こっち・だ」
「この・クソども・がっ!」
そうして俺が呆けている間に、何かがあったのだろう。
仮面を被った二十数名の『泥人』が……俺の前に一〇人余りの『泥人』を連れてくる。
連れてこられたのは、七人の男と、二人の女、そして一人の少年だった。
ソイツらは全員傷ついた上に拘束されているにも関わらず、ただ不敵な笑みを浮かべるばかりで……なかなかに胆が据わった連中らしい。
ただ一つだけ……その『泥人』たちは、どいつもこいつも酷く痩せこけているのが印象的だった。
拘束している仮面を被った『泥人』……食料難でどうしようもない状況にまで追い込まれている『仮面』と比べても、哀れに思えるほどに。
……この連中は、どうやら随分と長い間、まともな食事にありつけなかったのだろう。
「……どうしたんだ、そいつら?」
「コイツらは・『双斧』の連中の・生き残り・です。
ぶん殴っても・死んでなかったので・連れて来た・訳ですが……
……如何・しましょうか?」
その言葉を聞いた俺は……静かに立ち上がると、口を開く。
「……コイツらが、『双斧』、か」
自分の口から出たその声は……冷静極まりなく、欠片の怒りすらも含まれてない、静かなものだった。
……そう。
『聖樹』攻略を邪魔をされたというのに、あの少女の兄を殺されたというのに……俺は、コイツらを見ても、何の感情も浮かんで来なかった。
「お・俺に、こ・殺させて・下さいっ!
コイツらが、族長代理・をっ!」
「お・おい。
よせ・って!」
そう叫ぶ周囲の『仮面』の連中のように「ベーグ=ベルグスの仇を討つ」という意欲すら湧かず……それどころか、アイツを殺したこの連中に対する怒りすらも不思議と湧き上がってこない。
ただ……それでも、何故コイツらが襲いかかって来たのかだけは、知りたかった。
「……何故、俺たちに襲いかかって来た?」
俺のその問いは、コイツらにとっても予想外だったのだろう。
『双斧』の連中は一秒ほどの間、瞬きをしたものの……正面の一人が、へらへらと軽薄そうな笑みを浮かべ、口を開く。
「餌が・目の前に・あったんだ?
狩るのは・当然・だろうが?
こっちも・もう・餌が・残ってない・からな」
「弱い・から、喰われるんだ・よ。
死んだヤツは・ただの・肉だ」
「けっ・雑魚が。
お仲間が・死んじゃって・悲しい・ですってか?」
正面の一匹が放った言葉が契機となったらしく……他の『双斧』の連中も口々にそんな言葉を吐き出していた。
……まるで、俺たちを挑発するかのように。
「こ・コイツ・らっ!」
「こ・殺すっ!
殺して・やるっ!」
当然のことながら、族長代理を殺された『仮面』の一族が黙っている筈もない。
手にしていた石斧や槍で、捕虜たちをとっとと殺そうと動き始めるが……
「う・うぅっ」
「くっ・ぐっ……」
俺が左手を前に軽く突き出すだけで、『仮面』の一族はあっさりと怒りを鎮めていた。
少なくともコイツら『仮面』の連中にとっては、親兄弟の仇へと湧き上がる怒りと殺意よりも……破壊と殺戮の神ンディアナガルの化身であるこの俺への恐怖の方が遥かに重いらしい。
「へっ・上手く・調教されて・いるなぁ、この・家……」
それを見た『双斧』の連中は、そう囃し立てるが……俺が静かに歩み寄るだけで、その口を噤む。
周囲が静かになったところで、俺は軽く笑みを浮かべて見せる。
……眼前の捕虜たちを安心させるように。
「お前たちの言っていることは……間違いじゃない。
弱ければ、好き勝手にされるという、その理屈は……まぁ、分かり易い」
「……っ・なっ?」
俺のその言葉を聞いて、捕虜の周囲を固めていた『仮面』の一族がざわめくものの……俺に反論を向ける愚は承知しているらしい。
彼らはただ歯を食いしばって……必死に反論を呑みこんでいた。
仮面の奥から聞こえてくる、歯ぎしりの音が、彼らの不服を伝えてくる。
「……あ・ああ。
話が・分かるじゃねぇかっ!
だから……」
俺の言葉を聞いて安心したのだろう。
完全に頭がおかしいとしか思えないこの戦闘民族たちでも、こうして捕虜になっている状況は緊張を伴うものだったらしい。
そんな俺の言葉に『双斧』の連中は少しだけ顔の力を抜いて……何やら口を開こうとする。
……だけど。
「だから、俺が憂さ晴らしにお前らを潰しても……別に問題ないんだよな?」
俺は静かにそう問いかけた直後、一番最初に口を開いたウザいゴミの顎を、握力で毟り取る。
「かっ・こぉはぉぁ・あああああああ・ああっ?」
顎がなくても、人間ってのは悲鳴を上げられるらしい。
そうして涙を流しながら声にならない悲鳴を上げ、じたばたとのたうち回るその『双斧』のアホの右手を掴み、引き千切る。
「ひぃ・ふゃぃいい・いいいいい・ぃいいっ?」
軽く力を込めたソレだけで、悲鳴は奇声に変わり、瞬間で血の泡をぶくぶくと蟹のように噴き出し……すぐに動かなくなる。
ショック死か、窒息死か……まぁ、どっちでも構わないだろう。
俺はその死体から引き千切った腕を適当にその辺りに捨てると……次に解体するゴミへと視線を向ける。
……そう。
俺は『双斧』の連中に怒りも憎しみも感じない代わりに……このゴミ共を憐れむ気持ちも、飢えて死ぬ寸前だったらしき境遇に同情する感情すらも抜け落ちてしまっていたのだ。
だからこそ……何の感情も抱かずに、こうして「壊せる」。
いつものように武器を手に襲い掛かってくるから殺すのではなく、怒りに任せて殺すのでもなく……「ただの憂さ晴らし」という何の意味も持たない下らない理由で、飽きた玩具を潰すかのように、何の感情も伴わずに壊してしまえる。
「ひ・ひぃいいいっ?
た・助け・助けて……」
「分か・った。悪か・った。
降伏・するっ!
お前に・従う・からっ!」
男が血まみれのゴミへと変わったことで、俺が捕虜を利用するような人間ではなく……「本気で殺す」類の人間だと分かったのだろう。
ここに至ってようやく『双斧』の捕虜たちは、そんな悲鳴を上げ始める。
……もしかするとコイツらは、俺が『盾』や『槍』の連中を懐柔したことで、自分たちも俺の配下に加えて貰えると思い込んでいたのだろうか?
それとも、単純に「負けたらどうなるか?」ということを考えず、ただ獣のように飢えに耐えかねた挙句、『仮面』の一族の非戦闘員という名の『餌』へと襲い掛かっただけ、だろうか?
彼らの動悸がどっちにしろ……もう遅い。
何の価値も持たないゴミを捨てることに、躊躇するヤツなどいないのだから。
「お・俺は、美味く・ないっ!
た・食べないで・くれっ!」
人間を狩って食べるという『双斧』の一族らしく、ゴミが解体されたのを見て男が一人、食べられると思い込み、そう叫んでいたが……
「……ああ、気にするな。
お前らを食べる気なんてない。
本当に……これは、ただの憂さ晴らしに過ぎないんだから」
その哀れな男の誤解を静かに解いた俺は、胃の上辺りに溜まる重しを吐き出すように、軽くため息を吐くと……
残り九つのゴミを潰すことで、少しでも憂さが晴れるのを祈りながら……じたばたともがく捕虜たちに向けて、ゆっくりと左手を伸ばしたのだった。
翌日。
『聖樹』から少し離れた場所に建てられた簡易な天幕の中……俺の前には四人の『泥人』が立っていた。
『盾』の一族の代表であるタウル=タワウ、『槍』の一族の代表であるラング=ランセル、そして『仮面』の一族の新たなる族長代理らしきバス=バレスと、戦士長であるアクセル=アークだった。
バス=バレスは鰐のような仮面をつけた細身の男で、アクセル=アークは猪のような仮面をつけた、ベーグ=ベルグスと比べると少し横に広い感じ、だけどアイツに勝るとも劣らない巨漢である。
何故『仮面』の代表が二人になっているかと言うと……一人では一族を統率し切れないから、らしい。
食料の備蓄はもう一欠けらもなく、怪我を洗うどころか飲み水すらもろくにない有様で……早い話が一族全員が崖っぷちギリギリに立っているにも関わらず、内部で派閥争いをする暇はあるらしい。
……実に平和なことである。
それだけで「現状が分かっているのか?」と、全員の臓物を蝶結びにしてやりたい気分が湧き上がってくるが……
俺はその衝動を押し殺しながら、眼前の男の言葉をもう一度聞き直すことにする。
「……んで、何だと?」
「ですから・もう、『聖樹』を攻めるのは・無理だと・言っているの・ですっ!
堕修羅・さまっ!」
僅かに苛立ちを見せる俺に向けても、『仮面』の一族代表であるバス=バレスは意見を翻すこともなくそう叫ぶ。
その表情は仮面に覆われていて見えないものの……その声の震えから、コイツが怯えを必死に押し殺して声を吐き出しているのは分かる。
それほど怯えていても意見を翻そうとしないのだから……コイツは一族の代表になっても不思議ではないほど、胆の座ったヤツなのだろう。
「戦士で・怪我を・していない・者など・一人も・おらず。
昨日と・比べ……数は・半数以下に・なって・いるのですよっ?」
鰐の仮面を被る男が告げたその声を聞き、俺は頭の中で思い出す。
昨日の戦いは……確かに激戦だった。
最前線で弓と蟲の脅威に晒された『盾』の一族が一番被害が大きく……五〇いた筈の戦士は既に二〇を切っており、一〇〇を数えた『槍』の一族も、もう五〇程度になっている。
一番損耗が小さかった筈の『仮面』の一族も、予期せぬ『双斧』の強襲により、二〇〇ほどいた兵士が一五〇まで削られている。
──半分以下は言い過ぎだな。
実際のところ、『双斧』の強襲で出た被害は怪我人と女子供老人が主で……『仮面』の一族の兵数はそう大きく減ってはいない筈なのだが。
まぁ……しっかりと計算すると面倒だし、捨て駒や弾除けにすら使えない非戦闘員共なんざ、正直、どうでも良いのだが。
──しかし、どうするべきか?
正直な話……俺はもうコイツらに肩入れする動機なんてない。
帰りたいなら『爪』を使ってさっさと帰れば良いし……願いを叶えてあげようと思った命の恩人ももはやこの世にはいないのだから。
と言うか……
──コイツら全てを、皆殺しにすべき、か?
──でも、なぁ。
少女の告げた、最期の願い。
あの一言を……俺は未だに消化し切れずにいた。
信じられない……いや、信じたくないのだ。
俺を助けてくれた、あの女神のような少女が、世界の滅びを願っただなんて。
血と臓物臭が漂い、悲鳴と嘆きが響き渡る……もう二度も経験したあの光景を望んでいただなんて。
──彼女は……死ぬ間際で、錯乱していたの、だろう。
──多分、恐らく、間違いなく。
俺は内心でそう繰り返し……何とか彼女の最期の声をかき消すことで、俺の中のべリス=ベルグスという「女神のような少女」の記憶を綺麗に保とうとしていた。
だからこそ、こうして『泥人』たちの指揮を取り、『聖樹の都』を落とそうと……彼女の願いを叶えるため、「争いのない平和な世界」を築こうとしているのである。
その争いのない平和な世界を築き上げたところで、見届けてくれる人がいなければ、何の意味もない行動だと知りつつも……
──それでも他にはもう、やることもないしなぁ。
本来ならばとっとと『爪』を使って日本へと変えるべきなのだろうが……耳の奥に残った少女の最期の言葉が、未だに俺をこの世界に留まらせていた。
耳の奥で響き続ける、「この世界の全てを滅ぼして」という少女の願いを否定しては、再び聞こえるその声を聞いて思い返し、実行しようとしては、あの優しい少女に命を助けられた事実を思い返し……その繰り返しが続くのだ。
どちらを選んでも……後悔からは逃れられない、だろう。
かと言って、このままこの世界を見捨てて帰ってしまうと……どちらを選ぶよりも、遥かに目覚めが悪くなりそうなのだ。
……エンディングまで見届けずに途中で止めた映画が、そしてそれが二度と見れないと分かると、何故か非常に記憶に残ってしまうように。
その自分の感情を思い通りに出来ない現状が……ますます俺を苛立たせる。
「しかし・我々には・もう・水も・食料もっ!」
「だから、集団自殺に・付き合えと・いうのかっ!
そんな・義理など、我らには・ないっ!」
自分の考えに浸っていた俺の意識を、周囲に響き渡るような『槍』の族長の声と、それに呼応したらしきバス=バレスの叫びが現実へと引きずり戻した。
──ったく、いつまで水掛け論をしてるんだか。
唾をまき散らしながら騒音公害を発生する『泥人』を眺めながらも俺は、苛立ちと不快感を鎮めるように大きなため息を吐いていた。
俺が彼ら『泥人』たちの叫びを聞き流しているのは、彼らの現状を知っていれば、もう当然と言えるだろう。
何しろ……現実問題として、彼ら『泥人』は、もう完全に「詰んで」いるのだ。
水も食料もない癖に、『聖樹の都』を攻め落とすだけの戦力と士気が保てない。
つまり、放っておけば『泥人』たちは……そう遠くない未来、確実に死に絶える。
だからこそ、彼らが大声で喚いている言葉は、結局のところ「今日死ぬ」か「明日死ぬ」か「一週間後に死ぬ」か……そういう、何を選んでも意味もない選択肢について、必死になって議論しているに過ぎないのだ。
──結局のところ、俺に与えられた選択肢は三つ、か。
俺は静かに「すぐさま帰る」のと、「『聖樹の都』を攻め落とす」のと、「コイツらを今すぐ皆殺しにする」という、三つの選択肢を脳裏に浮かべ……
……決断を、下す。
──あの馬鹿に、借りを、返す。
俺は『聖樹の都』から叩き落とされたあの屈辱を、痛みを、恐怖を……未だに精算していない。
……これを放ったまま帰るなんて、出来る訳がない。
アイツの下らない策を力で押し返し、押し潰し、叩き伏せて……泣かして屈服させて負けを認めさせ、そして俺を追い出したことを後悔させてやれば……
そうすれば……多少は溜飲も下がるだろう。
──なんて、な。
そう思えれば、この世界で活動する動機にもなるのだろうが……生憎と今の俺は、そんな気力すら湧きもしないのが実情だった。
あの光景を……眼前でシュールな映画かアニメのように、非現実的な終わりを迎えたべリス=ベルグスの最期を見たあの時から、何かをしようという気持ちも、何かをしたいという欲求すらも俺の裡からは湧き上がって来ないのだ。
何と言うか、ガソリンが燃え尽きた後のように、怒りも憎しみも悲しみも、一切の感情が湧き上がることもなく、自発的に何かをやろうという気すらも起こらない……そんな状況である。
それでも……まぁ、さっき思いついた「復讐」って動機はそれなりに使える、だろう。
尤も、それは惰性でゲームをやるような……そんなどうでも良い感じではあるが。
それでも何か目的があれば……胃の上に圧し掛かるような、この嫌な気分から少しでも逃れられるに違いない。
──なら、コイツらを、何とかするか。
そう決断すれば、後は簡単だった。
正直な話、少女の死を目の当たりにした所為で、この世界の価値を見限った今ならば……この腹の中に埋め込まれた不快な重しのような、静かな殺意が身体中を埋め尽くしている今ならば……
……もう弾除けも必要ないと、何故か、分かる。
幾ら『聖樹』があろうが、こうなった俺には、何の意味もないと……
例え聖剣の一撃だろうとも、機甲鎧の一撃だろうとも……今の俺には傷一つつけられないと、俺の中の確信が叫んでいるのだ。
その確信に背を押され……俺は、すぐさま決断を下した。
静かに懐に手を伸ばすと、そこにしまったままに忘れていた、半分が砕けた、少女が造ってくれた泥の『仮面』をゆっくりと被る。
──せめて、形だけでも、な。
これは、俺なりの意思表示だった。
……少女の願いを叶える、という。
仮初だったとは言え彼女の「身内」へと贈られたこの『仮面』を被ることで……あの少女の願いを叶える筈だった『少女の望んでいた自分』を演じようと。
尤も……本当にこの選択肢が正しいのかという疑念は尽きない。
間違えているんじゃないか、後悔するんじゃないかという恐怖は拭えず、さっさと家に帰りたいという欲求は捨てきれない。
だからこそ……仮面を被る。
自分の行動を決断したというのに、未だに自分の選択に疑問が残る俺は……半分に砕けたこの『仮面』程度が似合うのだろう。
内心でそう自嘲した俺は……決心が鈍らない内に、自分の決断を実行に移すため、ゆっくりと立ち上がる。
そのまま眼前の男へと、静かに左手を伸ばした俺は……
「だからこそ・今は・戦力を温存し……ぱっ?」
……俺の悩みにも決断にも気付くことなく、ただ大声で厭戦を訴えていたバス=バレスの首を掴み、軽く力を込めてねじ切ったのだ。
細身だった『仮面』の男の首は、俺が左手にちょっと力を込めるだけで、あっさりとあり得ない方向を向き……
ちょっと力加減を間違えた所為で、頸椎ごと頭蓋を引っこ抜き……天幕中が真っ赤に染まったといううっかりミスをしてしまったが。
……まぁ、それほどの問題もないだろう。
「……俺に従うか、この場で死ぬか。
とっとと決めろ」
静まり返った『泥人』の長たちに向けて、俺は淡々とそう告げる。
自分なりの決断を。
……そう。
俺は、選んだのだ。
──「争いのない世界」を望んだ、あの女神のような少女の願いを叶える。
という、その選択肢を。
「……もう一度繰り返す。
俺に従うか?
それとも、この場で死ぬか?」
だから、静かにそう呟く。
声を荒げて怯えさせ、反抗する気力をへし折る必要すらもない。
……逆らえば、ただ殺せば良いのだから。
俺一人でも『聖樹の民』は落とせる以上……弾除けのご機嫌伺いなどに無駄な時間を費やす必要など、何処にもありはしない。
「わ・我ら『盾』は、堕修羅さまに・し、従い・ますっ!」
「我々『槍』も・貴方様に・従うと・既に決まって・おりますからっ!」
「か、『仮面』の・一族は、族長代理の・義弟である……貴方に・従いますっ!」
幸いにして俺の決定に異を唱える馬鹿はおらず……怪我人だらけの俺たち『泥人』連合軍は、周囲が明るくなってから一時間ほどで、再び『聖樹の都』へと攻め込むために、進軍を開始したのだった。




