小さな少年
今日は、天気もいいし、ベランダで新聞を読もうか。そう思って、やめた。
そこにはもう、先客がいたのだ。猫のクロだ。気持ちよさそうに、テーブルの上で寝ていた。これでは新聞が読めなかった。そこで私はいつもの通り、リビングのテーブルの上で新聞を読むことにした。
もう少しで読み終わるという時に、
ピンポーンと、チャイムが鳴り、
「ごめんくださぁい」と、声がした。誰だろう?そう思いながらも、私はドアを開けることにした。
そこには、小学四年生くらいの男の子が立っていた。学校帰りなのか、ランドセルをせおっていた。
「すいません。トイレ貸してもらってもいいですか?」彼は言った。
「いいですよ。ここを曲がったところにあります。」
私はトイレのあるところを教えた。教えるとすぐに、トイレに走っていった。そんなに我慢していたのか・・・。
私は、一人で笑ってしまっていた。
それから、十五分間彼はトイレから出てこなかった。少し遅すぎないか?そう思った時、彼がトイレから出てきた。私のところにくると彼は、「イタッ」と、声をあげてよろけた。
「大丈夫かい?」
「はい。大丈夫です。ちょっと、足をねんざしちゃっただけですから。」
よく見ると、彼は腕や足に、無数のあざや傷ができていた。虐待を受けているのだろうか?それとも、いじめ?
そんなことも頭をよぎったが、考えすぎだろうと思い、その考えを改めることにした。
「早く帰らないと、親が心配するんじゃないのかい?」
私はそう聞いてみた。すると意外なことに親は北海道に住んでいると言った。
北海道というと、ここからは、遠いところにある。会える機会も少ないだろう。
「なんで君だけ残して北海道に行っちゃったんだい?」
「なんか、北海道で事業に成功したらしいですよ。僕はここに残りたいって言ったから、じいちゃんと暮らしてるんです。」
「僕も一緒に行けばよかったな・・・。」
最後の言葉は、ここで暮らすのに耐え切れない。もう嫌だ・・・。そう聞こえもした。