9月17日(1)
予約投稿です。
一足早くあの人物を登場させました。
では本編を。
和泉宙との衝撃的な再会から翌日、一人雨季特有の蒸し暑さを全身で感じ、まだ人通りの少ない通学路を歩きながら静かな朝をしみじみと味わっていた。暦の上では既に秋に入っているのだが、実際の気候は夏のそれ。猛暑と大雨を繰り返す気まぐれな天候には正直慣れざるを得なかった。秋の香り、景色を楽しむのはもう少し先の話になりそうだ。
文は本日日直の当番なので先に家を出ている。ちゃんと朝ごはんを用意してくれ、心から感謝を籠めて「いただきます」と言い全てを綺麗に食べきった。
道の所々に植えられている木々を見る。まだ緑の葉をつけてはいるが、あと一ヶ月かそこらで赤や黄色に染まり、そして散っていくのだろう。感慨に耽りながら歩く事がこんなにも心を穏やかにさせるなんて。一人っきりでこうするのも悪くはないのかもしれない、と思わず微笑んだ。
「・・・・・・宗一。朝から機嫌が良さそうね」
不意に聞こえた女の子の声。クラス内で聞くよく通る声は一人の人物を特定するのに難しくはなかった。
「楓。久しぶりだな」
谷山 楓。2-BのHR委員長で成績はいつも学年十五位以内。態度良好で、まさに優等生という言葉に相応しい子だ。たださらりと酷い言葉を投げつけたり、俺に対してすぐに殴ったり蹴ったりしてくるところが玉に瑕だ。何故俺にだけ暴力的なのかは原因不明。
駆け足でやってきて俺に追いついた楓の顔は何やら呆れた顔だ。呆れられるような事を言った記憶がないので少し不安になる。
「久しぶり、って。昨日教室で顔を合わせたじゃない」
「いや、言葉を交わしたのは久しぶりじゃん」
「挨拶したでしょ?」
「お前の挨拶は顔面パンチか」
「そ、それは。あんたがスカートの中見ようとしたからでしょ!」
「人聞きの悪い事言うな! 風でたまたま捲り上がっただけだろ」
「凝視してたじゃない」
「凝視してないし、別にパンツ見えてないからいいじゃん」
「どこまで見たのよ変態!」
「ふとももまで」
「言うな!」
左足を半歩前に踏み出し、右足で思いっきりローキックをかます楓。クラスの鑑がこれである。どこまで見たのか訊かれたから答えたまで。俺は悪くない、はず。
「痛い! 痛いって谷山さん! 何でそんな細くて白い足から鈍い音が鳴るくらい重い一撃が繰り出せるのか不思議でたまりません!」
「愛と勇気と憎しみがあれば出来るわ」
「最初はありえないし、二つ目は別にいらない。ぶっちゃけ最後のだけでいいよな!?」
「勇気は必要よ。相手を殺す勇気・・・・・・」
「そんな勇気は捨てちまえ!」
でないとこっちの身が持たない。本当、何で俺には暴力を働くの? 全く原因が掴めず首を傾げるしかない。
「楓、早く教室に行かなきゃいけないんじゃないか? 今日は中津、休みだろ」
「あの老いぼれが休みってことは知ってるわ。職員室に至急向かうつもりよ」
老いぼれと言うなよ、担任に向かって。結構美人なのに口と足癖が悪いから台無しだ。
「それじゃあ私は先急ぐから。くれぐれも遅刻なんてしないように」
「この時間だぜ? 逆にする方が難しいって」
「OK。また後で」
楓が駆け出すと、二房のさらさらとした茶髪が流星のように後ろに尾を引き流れていく。真珠のように白い足が大地を蹴り、学び舎へと駆けていく。その様は大空を雄大に羽ばたく鷲のよう。
「さて、俺もゆっくり行きますか」
自分のペースで焦らず、遅すぎず、午前八時の通学路を歩行する。この今の俺にとってあたりまえな行動がいつまで続くのか。卒業と共に消えるこの習慣をじっくりと楽しむとしよう。
「あ、宗くん、おはよう。ご飯どうだった?」
教室に入り、まず一番に聞こえた声は文のものだった。既に黒板は綺麗にされており、少しの消し残しもない。相変わらず仕事が丁寧で早い。
「おはよう。とてもおいしかったよ。ありがとうな」
「ううん。おいしいって言ってもらえるだけで幸せだから・・・・・・」
文は頬を赤らめ、もじもじする。可愛らしい仕草に心臓が大きく拍動した。上目遣いは反則だ。そんな風に挨拶を交わしていると台風少女もとい奏が乱入してきた。
「なあに言ってるの? これだけで幸せとかさ。もっと先を求めなきゃ、文っち」
にやにやしながら奏が文に抱きつく。「おはようさん!」と形だけの挨拶をし、文の腰辺りを頬擦りしている。文が相当困ってるぞ。頬擦りをぴたりとやめると、文から離れ俺に何か言いたそうな顔を向けた。
「そ・れ・に、宗やん。なにあの機械的な返し方。もっと情熱的に、その思いの丈を伝えなきゃいかんでしょ。『君の作るご飯は最高においしいよ。だがいつかは君を食べたいな』とか言っちゃってもいいんじゃない? むしろ言え」
「言うかバカ!」
「何かイライラしてるね。もしかして倦怠期ってやつ?」
「結婚すらしてないのに倦怠期も何もあるか!」
「ほお、いつかはするのですね。ぐっじょぶ」
文っちの将来は安泰だね。子供は何人? 三人? ととち狂った発言をするので、でこピンをかまし静かにさせた。文はどうしたのか、顔を真っ赤にしている。何を想像しているのやら。
「んで、また暇つぶしにからかいに来たのか?」
「あ~、それでもいいけど」
「よくない」
「ちょっと宗やんに伝えることがあってね」
その言葉を聞くと文は席を外すねと、教室を出て行った。気を遣わなくてもいいのに。
「伝える事って何だ」
「うん。ナギが今日の放課後、『憩いの森』でティーパーティーやるから宗やんにも参加して欲しいって」
「ナギ・・・・・・三条のことか。別に構わないけど。何故俺を?」
「たぶん一番身近な男子だからじゃないかな。いいねぇ、モテる男は」
私は一切浮ついた話がないから。奏は珍しく悲しそうな顔で落ち込む。そりゃ、こんだけ騒いでいれば近づいてこないだろ。
「失礼なこと考えなかった? というかムカつくこと考えなかった?」
「考えてない、考えてない」
「ふーん。まぁいいか。宗やんだから許す!」
「いちいち大声で言うな」
周りから視線が集まる。みんな奏の起こす出来事に慣れてきたとはいえ、やはり目立つのは避けられない。なるべく早く用件を済ませるため先を促す。
「参加する。だからさっさと戻れ。HR始まるぞ」
「わ! ほんとだ。てなわけで、いいよね? 了承って伝えておくよ?」
「いや、俺から言っておく。同じクラスなわけだし」
「そーいえばそーだね。私が違うクラスってこと忘れてたよ」
奏はやっちまったぜと親指を突き立てる。俺もついさっきまで忘れてたよ。奏はもうこのクラスに馴染んだというか違和感がないというか。
「じゃ、アデュー」
手を振りドアの向こう側に奏が去っていく。入れ替わりに文と楓、そして中津が入ってきた。
「席に着きなさーい。HR始めるわよ」
楓の声に反応し教室中に散らばっていた人が自分の席に戻っていく。俺も同様に席に着いた。今日は楓が前に出ている。もしかして学園祭についての知らせがあるのかもしれない。内容は恐らく「出し物を決めろ」だろうな。
『学園祭』
年に一度の大掛かりなイベント。中学校と高等学校が同じ敷地内にあり、且つ資金がかなりあるので規模も自然と大きくなる。出店は勿論、お化け屋敷や喫茶店、映画館、劇場、部活内対抗戦、バンド、様々な催し物が二日間の中で開かれ、その密度は周りの学校より遥かに濃い。
多いのは催し物だけではない。学園の生徒、保護者並びに学園関係者、近隣の人々が学園祭期間、溢れんばかりに来る。
さらに、この学園祭には若い男女の好みそうな噂が流れているのだ。それは、
この学園祭で告白すると必ず成功する。
現在surteinnはPCの使用できる環境化にいません。
さらばPC、カモン勉強漬けライフ(泣)
なので更新はしばらくの間予約投稿での形になります。
八月中にどれだけ書き上げられるかで変わりますが、
大体一ヶ月に一話ペースになりそうです。
たまに連続して投稿するぐらいですかね。
九月から十二月まで感想や意見に対して返事を書けなくなりますが、
どうかご了承ください。
これまで通り感想・意見を待ってます。
どしどし感想欄の方まで送ってください!
では(・ω・)ノシ
宗「作者、小説を放置する」
楓「仕方がないんじゃない?」
文「仕方が、ないよね」
奏「友人から無理やり借りてでも投稿すべし」
宙「無理矢理借りるって・・・・・・それって強奪では?」
奏「気にしない気にしない♪」
渚「次回は私が登場します」