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夢と願いの学園恋歌  作者: surteinn
プロローグ
6/44

      (4)

旅行に行っていて投稿できませんでした。

放置していてすみません。

では本編を。

 「へぇ、なるほど。そういうことだったんだぁ」

 「なんつーか、宗一。お手柄だな」

 放課後、俺、文、和志、奏、そして和泉の五人は学校の近くにある喫茶店『グリーンウッド』に足を運んでいた。楓は委員会の活動で出席は出来ないと伝えられた。

 店内に入り席につくと、好奇心に満ち溢れた様子の奏が「さぁ、包み隠さず、全て話してもらうよ! この笹野奏の前でね!」と立ち上がり、人差し指を和泉に向け、比較的大きな声でそう投げつけた。開口一番何を言ってるんだ。とりあえず文と二人で周りの迷惑になるからと口を塞いでおいた。俺は奏の腕を、文が口を押さえたのだが、どうやら我が幼馴染は鼻まで塞いだらしく、酸素不足で奏の意識は数分間、遠い国へ飛んでいた。激怒されたのは伝えるまでもないが、その際に「三途の川で水遊びしちゃったじゃん!」と口を尖らせ言い放たれた。向こうで楽しんできたのか。奏らしいというか、アホというか。

 結局和泉に全て話してもらい、あの日の出来事は詳細に皆へ伝わった。文は途中で「前に言ってたよね」と以前俺が話した内容を思い出した、と密かに知らせてきた。和泉が熱く語っている最中だからこその行動だろう。そうだと返すと、文が和泉を複雑な表情で見つめる。

 「うん、うん。さすが宗くん、尊敬するよ」

 「はい、先輩は尊ぶべき人です」 

 で、何故直前まで嫌な面持ちでいたかというと俺の考えに反するからだ。助けた人から感謝されるのはとても嬉しい。でも第三者からヒーローだとか、英雄だとか、そういう目で見られたくない。ただ助けようと思ったから助けただけ、そうしたいからそうしただけ。ただそれだけだから。まぁ、実際ヒーローと言われたら照れてしまうけど。

 「尊ぶって、大げさだな」

 「大丈夫です、先輩。先輩は誇ってもいいんですからね」

 「何が大丈夫なのやら」

 「宗やんは凄く謙虚というか、人前に出たがらないよね」

 「目立つことはしたくないな」

 「でも私が目立たせてるから、宗やん人気者になってるよ」

 「目立ってるな」

 三バカの異名は伊達ではない。その知名度は我が学年全体に伝わっており、他学年にも多くはないが俺らの存在を知っている者がいるという。

 けれども、俺自身はっちゃけた事をやった記憶はない。

 三バカと呼ばれる所以は恐らく和志の暴走を俺が止めるパターン、奏の暴走を俺が止めようとし結果巻き込まれるパターンがあまりにも多発しているからだろう。楓が止めてくれる事も多々あるのだが、和志のときは完膚なきまでに撃墜させ、奏のときはほとんど事態を収拾させる。一方俺が注意やツッコミを入れると問答無用で引きずり込まれる。至って真面目にやめろと、静かにするよう促しても益々その場を盛り上げる、騒ぎ立てる。だから一緒にバカ騒ぎをしていると見られるのだろう。今後の関係を見直そうかな。

 このようにして俺が和志と奏を繋げている相関図となり、故に三バカのまとめ役というこれまた不名誉な称号を手にしてしまっていると気付いたのは高校に入って間もなくだった。

 「そういえば、和泉は今学期から転入してきたんだよな」

 「そらって呼んで下さい。えぇ、八月の下旬にこの街に引っ越してきて、ちょっと部屋の整理などに手間取ってしまいまして遅れてしまったんです。転入の準備も含めて先週終わったばかりで。初登校したのは昨日です」

 だとしても中途半端な時に入ってきたな。何か家であったのだろうか。勿論変な詮索はしない。俺自身、そういうのは嫌いだし。

 「昨日は勤労感謝の日じゃなかったか?」

 「丁度模試があったんです。こちらへの転入すると話を伝えたときに受けるかどうか訊かれまして」

 それを聞くと奏が話しに加わってきた。

 「で、受けたんだ。つまりのつまり、宙っちの初登校は模試だったんだよね」

 「そうだな。大丈夫だったか?」

 「え、宙っち? あ、はい、順調に終えました」

 奏に宙っちと呼ばれ困惑した様子だったが、それを軽く流し俺への返答を済ませた。

 「宙っち、もしかして、実は頭いい系? わぁ、いいなぁ。私なんて全然でさ」

 「あの、宙っちとは?」

 「宙っちは宙っちだよ。あだ名だよ♪」

 宙の様相が困惑から混乱へ移る。初対面の人にいきなり積極的に話されるだけでなく、あだ名を付けられるなんて経験が今までなかったからだろう。当然ではある。

 「できれば宙っちではなく、宙か和泉と呼んでほしいのですが」

 「宙っち」

 「あの」

 「宙っち☆」

 「えと」

 「宙っち♪」

 「・・・・・・はい」

 「よろしい!」

 えっへんと無い胸を張る奏。うな垂れる宙。彼女もやはり奏の猛攻には勝てなかったか。いい奮闘振りだったのだけれど残念だ。

 奏は一度付けたあだ名は変更しない上にずっと呼び続ける。よくよく思い出せば俺も中一の頃は宗やん、宗やん呼ばれるのを嫌がっていた。その所為で周りでも数名その名で呼んでくるのもいたし。慣れって怖い。

 あだ名の命名の成功にご満悦な奏は、前は何処に住んでたの? とか、好きな歌は? とか、スリーサイズは? とか、様々な質問を矢継ぎ早にぶつけていった。宙は宙で、教えてもいい範疇の事柄だけを教えていった。スリーサイズなんて言う筈がないだろ。つーか、そんな質問をするんじゃねぇよ、奏。

 俺、和志、文は二人の問答を聞きつつ、グリーンウッド特製のモンブランを食べ進める。木の枝に見立てた、アーモンドの欠片がふんだんにあしらわれた細長いチョコレートが二本刺してあるのが特徴で、甘さ控えめのモンブランペーストと、ほろ苦いチョコ、香り豊かなアーモンドが一体となり、素晴らしい調和を見せている。これがまたコーヒーとよく合う。飲み物は各々違うが全員同じケーキを頼んでいるため、勿論の事、奏と宙の前にもモンブランが渡っている。だが宙の話や世間話に花を咲かせているので少しも手をつけていない。せっかくの熱い紅茶も冷め切ってしまっているだろう。

 モンブランを半分以上食べたところで誰かが俺の右膝をピンポイントで蹴ってきた。鈍く、ひたすら加圧されるような痛みに思わず顔をしかめる。一体誰がやったんだ。

 真っ先にとある人物に疑いの目を向けた。奏は宙と話しているため、こちらにちょっかいを掛けてくる理由が全くない。あいつがやるとしたら暇な時だ。宙と文は人を蹴る真似はしないだろうから、必然的に一人に絞り込める。

 「なぁ、和志」

 「なぁ、宗一。俺らここにいる必要ある?」

 「訊く前にまず俺を蹴った事を謝れ」

 「すまかった。次からは優しく蹴る」

 「蹴るな」

 「で、どうするよ。質問したい事もほとんど奏が訊いてくれたし、ケーキ食い終わったら解散する?」

 その言葉に宙と歓談していた奏がぴくりと反応した。くふふと怪しげな笑みを浮かべ奏がチッチッチと指を振る。

 「ノンノン。駄目だよ変態」

 「誰が変態だ!」

 憤慨する和志を横目に奏は、「この後は仲間となった宙っちと一緒にカラオケパーティーするのですよ。おっけー?」と、急遽親睦パーティーを立案した。

 「な、なかま?」

 「そう! 今日は宙っちが仲間となったお祝いに、夜通しで盛り上がろうよ。ね!」

 「せ、先輩!」

 「後輩よ!」

 その粋な計らいに宙は感涙し、奏とがっしり抱き締め合う。周りの視線が一気に集まる。凄く恥ずかしい。

 「でも、私なんかのためにそこまで」

 「私なんかって言わないの。あ、もしかしてパジャマパーティーの方が良かった?」

 「いえ、その」

 「その前に、制服のままカラオケに行ったら停学になるぞ」

 「あー。じゃ、男子は諦めて女子だけでやっちゃう?」

 「男子をはぶるな」

 「やだなーカズ。狼をウサギ小屋の中に入れるような真似はできないよ。花も恥らう乙女の花園に♪」

 「カズって何だよ」

 「カスだなんて、自分のことを過小評価しない!」

 「してねぇよ。つーか、バカにしたいだけだろ」

 心外だとばかりに和志が苛立たしげに漏らした。

 「違う違う。あだ名が変態で、カズが敬称、カスが蔑称だよ。なので今私は馬鹿にしたわけです」

 「わけです、じゃない! なんだよ。あだ名が変態って。わけがわからねぇよ」

 頭を抱えうずくまる和志。さすがにかわいそうなので俺は奏にやめるよう、自重しろという意味を含ませた視線を送る。目が合う。

 「ドキッ♪」

 「・・・・・・」

 ときめかれてしまった。そして流された。

 奏の予想外の反応に戸惑いを隠せずにいると、文は「あ、あのね」と言い辛そうにそう切り出した。

 「私、この後買い物に行かなきゃいけないから、パーティーには出られないの・・・・・・」

 「それじゃあ仕方がないね。パーティーはまた後日にしようか。ただいま三時四十七分。まだ時間があるからもったいないけど解散しようか」

 文の発言に奏は残念そうに伝える。がすぐに心を持ち直すと奏が解散するか確認を取る。それに各々賛成の意思を見せると、俺と文、宙がほぼ同じタイミングで立ち上がる。ケーキはどうするのかと思ったが、宙はいつの間にか食べ終えていたらしい。食べるの早いんだな。

 「先輩方。今日はありがとうございました。交流を持てて嬉しいです」

 「なら良かった。同級生と帰りたかったんじゃないかと思ってさ」

 「いえ、神埼先輩と話せるのなら、例えタイでも、宇宙でも行きます」

 「そんなところにわざわざ行って話そうとはしないから」

 非常にずれた宙の発言に困惑する。宙のキャラがだんだん固まってきた。これが素なのかどうかは、まだ日が浅いため分からないが、もしそうだとしたら少し嬉しい。

 「では、明日から全力全開で行かせてもらいますね」

 「全力全開? 何に」

 いきなり意味不明な宣言をした宙に、文が俺の疑問を代弁するかのように訊く。当然とばかりに宙は言う。

 「もちろん、恋に、です」

 「こい?」

 「はい。私に春が、ついに訪れたのです」

 「どゆこと?」

 奏が珍しく持て余している。他方で和志は興味深そうに、文は急な展開に付いていけず目を白黒させていた。俺はモンブランを優雅に味わいながら宙の声に注意する。

 「詳しい事は秘密です。というわけで」

 どこで一旦区切り宙が俺を見る。

 「覚悟してくださいね、神埼先輩」

 コーヒーの程よい苦味が口一杯に広がる。それと同様に宙の言葉が脳全体に染み渡る。どうやら俺の平穏をしばらく何処かに置いていかなければならないらしい。奏が何故か慌てている。和志がひゅーっ、と口笛を吹く。文が完全に固まっている。

 俺と宙の視線が絡み合い、その綺麗な漆黒の瞳に吸い込まれる感覚がした。潤んだ瞳に映る自分の顔。果たして彼女にはどのように見えているのだろうか。学園の先輩なのか、ヒーローなのか、それ以外なのか。

 九月十六日。

 人知れず紡がれた恋の前奏曲プレリュードは雲の微かにかかる空へと消えていった。

 

意見、指摘などがありましたら感想欄まで。

では(・ω・)ノシ


宙「片鱗を見せてしまった」

文「ライバルが現れてしまった」

奏「宗やんがハーレムの道を歩み始めてしまった」

宗「三人とも何を言ってるんだ。特に奏。ハーレムって何だよ」

和「確かにハーレムになりそうだよね。リア充め」

奏「大丈夫だよ。ハーレムENDは作者が好きではないから、

  最終的には一人になるって」

楓「宗一。骨は拾ってあげるから」

宗「不吉な事言って立ち去るんじゃねぇよ。怖いから」

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