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予約投稿です。
俺の思考は完全に停止していた。何で和泉が俺に抱きついているんだ? そこまで喜ぶ事なのか。いや喜んでいたとしてもこのような行為は普通しないだろう。胸周辺に感じる温もりは、俺の胸の鼓動を一層早くする。
「おい、宗一。お前ら知り合いだったのか? 随分熱烈な歓迎を受けているじゃないか」
「俺も正直驚きすぎてよく分からない」
「だろうな。とりあえずリア充潰す」
訝しげな目で見る和志と面白いものでも見つけたかのような目をする周辺の人々。注がれる視線の痛さは、正に質量を持っているのではないかと疑わずにはいられないほどだった。
しかし、そんなものが可愛く思える、恐るべき事態が発生していた。
「そ、宗くん?」
それは文が来ていたという事だった。今思えば、和志に教室から連れ出される際に文へ助けを求めていた記憶がある。だからここに来ているのだろう。何にしろ、絶体絶命の危機であることに変わりはない。
「な、なんで宗くんに、女の子が、抱きついてるの?」
「えー、いや、そのな」
「後ろめたい事があるときの反応! もしかしてその子と、こ、こ、恋仲に!?」
今にも精神が崩壊しそうな様子で、文が奇妙なことを口走る。
「別に恋仲でも何でもないからな」
「はい! 命の恩人なんです」
とりあえず否定しておき、文を下手に刺激しないような答えを模索していると、俺の発言に乗っかるように和泉がそう発言する。和泉はようやく俺から離れると目を輝かせて文に詰め寄った。
「神崎先輩は凄いんです! 先月私が暑さでふらふらになっていて、危うくトラックに撥ねられそうになったんですよ。その時颯爽と現れ危機一髪で救ってくれて。しかも私の体調を気にして公園に運んで、更に貴重な水分まで頂いて、もうなんてお礼を申し上げたらよいか! 神埼先輩はヒーローです!」
「え、あ、そ、そうなんだ。宗くんが人助け。うん、さすが宗くんだね!」
熱弁を振るう和泉に文は目を白黒させていたが、話の内容を理解したのか、和泉と同様に目をキラキラさせ、尊敬するだの、英雄だの戯けた事を言っている。
「なるほど。だったら抱きついても仕方がないね」と考えているに違いない。落ち着けば分かるとは思うが、助けて貰った事と抱きつく事になんら因果関係はない。気付かないだろうが。
「宗一よ。なんつーか、よく分からんがナイスだ」
「和志。よく分からないのにナイスと言うな。俺は今後の学園生活がどうなるか不安なんだ」
「バラ色だろ?」
「赤である事は否定しないよ」
本当に不安で仕方がない。
転校生は美少女で、その子が見知らぬ上級生に抱きついたところを目撃したとして、果たして何人の男子が不愉快に感じるだろう。不特定多数の一年生男子から良くて不愉快そうな視線、悪くて敵意を向けられる。それだけでも気分が悪くなるというのに、後にやってくるだろう時間の浪費や物品の損失を考えると正直頭が痛くなってくる。
今後について頭を悩ませていると、廊下に予鈴の音が鳴り響いた。もはや条件反射に次々と各々の教室へ戻っていく。
「授業が始まりそうだな。桜木、宗一。早いところ戻ろうぜ」
「ほんと、もうそんな時間?」
「では、先輩方に迷惑をお掛けするわけにもいけませんし、私はこれで。神崎先輩、また会いましょうね!」
教室内へ駆けて戻る和泉の背中を見送り、三人で2-Bへと向かった。
次回投稿する内容がかなり長いので、今回はこれだけアップしました。
なかなか楓を登場させられない。
9月18日の話からようやく出るので、アップは数週間後になります。
メインキャラなのに何故こうも遅いのか。
楓さん、すみません。
意見・指摘などがありましたら感想欄の方まで
では(・ω・)ノシ
楓「早く出しなさいよ。いつまでスタンバイしていればいいのよ」
宗「慌てるなって。お前が活躍するシーン、たくさんあるから」
奏「そうそう! それにメープルは自分のルートがあっていいじゃん。
私は除け者ですよ。めそめそ」
文「奏ちゃん・・・・・・」
宙「先輩・・・・・・」
奏「メインヒロインたちが私を生暖かい目で見てくる。なにこれ新感覚」
宗「大丈夫だ。作者がやる気を出せば奏√を書いてくれるさ」
奏「頑張って下さい! お願いしやっす!」
宗「作者は
『作ってもいいけど、その代わり奏は幽霊という設定を加えなきゃいけない』
ってさ」
奏「それでもいいのでどうか!」
宙「必死ですね」