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夢と願いの学園恋歌  作者: surteinn
学園祭編
32/44

      (2)

 「文、三条、俺も手伝う」

 教室に入って一番に目に映ったのが、文と三条が何やら正方形の薄い板のようなものを作っている様子だった。三条は懸命にそれを作っており、動く度に、長い漆黒の髪を微かに揺れる。

 「神崎君。ありがとうございます。助かります」

 俺の声にすぐに反応すると、三条は上品な笑みを浮かべた。周囲に可憐な花が咲いたような錯覚が起き、俺は咄嗟に「クラスメートだから」と柔和な笑みで返した。そしてコンマ一秒も経たずに自己嫌悪に陥ってしまったのは言うまでもない。

 「あの、どうかしました?」

 「いや、何でもないです。ところで今何作ってるの?」

 「宗くん。喫茶店で使うコースターを作ってるんだよ」

 「店でしっくり来るものが無かったので」

 そう言うと、三条は自作のコースターを手渡してくれた。四角や円形に切り取られたフェルトに、多種多様な絵柄の布で覆って作成したようだ。渡されたコースターの柄は青い地に黄色の五芒星がそこいらに散りばめられている模様であり、喫茶店の店名に合っているだけでなく美しい。他にも夜桜をイメージしているもの、青空に草が舞っているもの、見ているだけで穏やかな気持ちにさせる情景が、小さく切り取られた窓の中に広がっていた。

 「よく出来てるな。どれか持ち帰りたいくらい」

 「ありがとうございます。喜んでくれると作った甲斐があるというものです」

 「きっとお客さんも喜ぶだろうな」

 「えぇ。厨房係の方のお菓子とお茶をより楽しめるように、気持ちを込めて作ってますから」

 三条から発せられた言葉は間違いなく本心であり、彼女の性格がその端々から伝わってくる。今まで俺は三条とはあまり関わりがなく、先日のティーパーティー以降はちょくちょく会話をする程度であった。だが、こうして話していると、実は結構気が合うのではないか、と思い始めた。いつしか奏や和志達のように、行動を共にするような間柄になるのではないか、なんて思い始めた。そうであると嬉しいし、楽しいだろうな。

 

 「切り終わったフェルトはここに置けばいいのか?」

 「うん、そうだよ。宗くんがいると助かるなぁ。フェルトって結構固くて切りにくくて」

 「こんな事で役に立てるなら、いくらでもやるよ」

 文と会話している間も、三条は切り取られた布を円形のフェルトに縫い付け、素早くかつ丁寧にコースターを完成させていく。見るに美しい柄が施されたコースターが十、二十と積み重ねられる。

 十数分後には四十ものコースターが目の前に積み重ねられていた。

 「次は飾りを作りましょう。神崎君は折り紙の輪っかを繋げて大きな鎖を作った事ありますか?」

 「何回もやってる。よく文の誕生日に作って飾り付けしてたしな」

 「クリスマスの時も作ったよね。懐かしいなあ。幼稚園の頃は正月でも作って、よく怒られたよね」

 「二人一緒に頭下げて、ごめんなさいってな。あの頃に戻ってみたい」

 「ふふ。神崎君と桜木さん、昔から仲が良かったんですね」

 「伊達に幼馴染やってないから」

 胸を張って文が言う。幼馴染に伊達も何もないと思うのだが。

 「幼馴染は年頃になると自然と離れると聞きますけれど、お二人を見ていると、そんな事はないんだと思います」

 「そ、そう?」

 「えぇ。このまま添い遂げるのではないかと勘繰ってしまう程に」

 三条は両手を頬に当て、キャッとロマンチストな乙女を演じた。明らかに演じていた。三条、お前はたまに壊れるよな。先日の帰り道でも崩壊してたし。

 「そ、そそそそそそそいとととととととと」

 文は文で壊れたテープレコーダーのように、添い遂げるの、そいと、までを繰り返し再生していた。中々、げ、まで辿り着かない。

 「奏みたいな事を言わないでくれ」

 「お二人の行末が気になるのではありませんか」

 「行末、か。何処に辿り着くんだろうな」

 「神崎君は何故遠い目をしているのですか?」

 だって、俺がひもになるビジョンが鮮明に頭の中で描かれたんだぜ? 文が良い妻過ぎて、むしろ怖い。って言うか、働けよ、俺。

 「ねぇ、どうして宗くんそんなに冷静なの? そ、そ、そいとげる、って言われたんだよ?」

 未だ三条の言葉に動揺しながらも、文は相手に意思を伝えられる程度には落ち着いていた。この動揺ぶりは奏なら面白おかしく料理するに違いない。

 「皆に言われ過ぎて慣れた、から?」

 「わたしは一生慣れないよ」

 お前は俺と添い遂げる事に異論、反論は唱えないのか。いや、唱える程余裕は無いのか。

 「いい夫婦になりそうです」

 「んで、折り紙の鎖を作ればいいんだろ?」

 「照れ隠しはさりげなく、ですよね」

 ほんわかとした笑みの裏に、一体何が隠れているのか。何も無いのなら、天然の恐ろしさを身に染みた事になる。

 「わたしと宗くんが一つ屋根の下……」

 「文、戻って来い」

 まず鎖を作る前に、文の意識を現実世界に戻さなければならなかった。

短い。

五日も待たせておいて、短すぎる。

次はもっと長く、内容のあるものを投稿するので勘弁を。

宗「この小説に内容はあるのか?」

そういえば。


意見、感想などがありましたら、感想フォームまでお願いします。

では(・ω・)ノシ

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