表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢と願いの学園恋歌  作者: surteinn
学園祭編
28/44

      (2)

 「ただいま」

 玄関の戸を開け、帰宅を告げる。毎日繰り返している行為だからか、普段より遥かに疲労の蓄積した状態であっても、すっと自然に発せられた。いつもは文の声か、耳が痛くなるような静寂が俺を迎えるのだが、今日はそのどちらでもない。

 「お帰りなさい。せーんぱい♪」

 タッタッタと軽快なリズムで駆けてくる音。リビングから宙がひまわりのような笑顔を咲かせ出迎えてくれた。そのまま目の前へ寄ると何かを期待した目をし、口を開いた。

 「今日はご飯にしますか? ディナーにしますか? それともゆ・う・しょ・く?」

 「ごは……どれも同じじゃないか」

 決まり文句を発すると思いきや、注意しないと聞き逃しそうなボケをかましてきた。眼前に来るまでの短い時間で考えたのか。宙の頭の回転が速いのか、とただただ感心した。本能の赴くままに発言した可能性は考慮しない。

 「もちろんお風呂の準備、わたしの心の準備も終えているので、計五つの中から選んで下さい」

 「じゃあ先に食事を済ませる」

 「遠慮はいりませんよ」

 「遠慮せずに沢山食べる」

 「色気より食い気という訳ですか。奏先輩ばりに、ぼっきゅんぼんでないと駄目なんですか」

 宙が悔しそうに何かをぶつぶつ呟いている。奏という言葉が聞こえてきた辺り、奏に余計な事でも吹き込まれたのだろうか。

 「やはり一筋縄ではいかないです。では、もう少ししたら出来上がるので、椅子に座って待っていて下さいね」

 来た時と同様に、宙はサイドポニーを揺らし、急ぎ足でキッチンへ戻って行った。台風少女の名に恥じない素早さと騒々しさだ。もう少し落ち着きがあればいいのに、と深く溜息をついた。

 

 「ねぇ先輩。九時半からスローウォーカーってドラマやるんですけど、一緒に観ませんか?」

 風呂から上がった後、ソファーでくつろいでいると、隣でクッションを抱えて顔を埋めいている宙が突然訊いてきた。

 「いいよ」

 「やったぁ! 飲み物用意しましょうか。先輩は何がいいですか?」

 「オレンジジュースで」

 「では不肖和泉宙。先輩に精一杯ご奉仕して差し上げましょう」

 妙にテンションが高くなった宙は、湖上を舞う妖精のように軽やかな足取りでキッチンに向かった。その一連の行動に俺はただ呆然としていたが、早々に立ち直ると俺はテレビをつけ、スローウォーカーを放送する番組に切り替える。丁度画面には件のドラマのCMがやっており、中々興味のそそられる内容だった。

 「どうぞ、先輩」

 宙がグラスを二つ載せたお盆を、ソファーの前のテーブルに置くと、またソファーに座った。今度は俺と密着する場所に。

 「近い」

 「わざとです」

 ならば仕方がない。諦めるしかない。

 

 ドラマを見終わり、しばらく宙と歓談していると、いつの間にか十時を回ってしまった。朝早くに俺の家から出ていくと言っていたし、もうそろそろ寝た方がいいだろう。これを提案すると、宙は「確かにもういい時間になってますね」と寂しさを含んだ声で返答した。

 「今日で最後なんですね。同棲生活」

 「単なるお泊りだろ。でも、そっか。結構早かったな」

 これで心置きなくゆっくり出来ると考えつつ、また家が静かになってしまうという寂しさを感じていた。心が休まる場もないと、最初は微妙な心境であったが、何だかんだ言って、宙との時間は非常に楽しかった。

 「でも安心して下さい。学校でもまた会えますし、こうしてくっつけます」

 宙は肩を寄せ、俺の腕に頬を当てた。柑橘類のさわやかな香りが鼻腔をくすぐる。

 その匂いにどぎまぎしつつも、この二日間を思い返した。短い間ではあったが宙には家事全般をやって貰っていた。料理に掃除、そして洗濯。三つ目に関しては一悶着あったが、助けられた面がかなり大きい。

 そう考えている内に、何か恩返しをしないと気が済まなくなり、その旨を伝える。

 「恩返し、ですか」

 「俺に出来る事なら何でもするよ」

 世話になりっぱなしでは俺の立つ瀬がないし。

 「何でも……何でも……にゅふっ」

 「待て。今の笑いは何だ。すごくおかしかったぞ」

 「せ・ん・ぱ・い。それならそうと言ってくれればいいのに」

 「何言ってるのか理解出来ないんだけど」

 「あ、でも先輩の理性が崩壊したら困るので、一時間抱き付くというのはどうでしょう」

 「どうでしょうって言われても」

 「悪いようにはしません」

 「されたら困るからな」

 結局宙の要求を呑む事になった。

 「あとどれくらい?」

 「もう少しです」

 「すでに三十分経ってるし、寝た方がいいんじゃないか?」

 「わたしの体内時計ではまだ十秒しか経ってません」

 随分と狂った時計だな。

 「そうだ! 隣で一緒に寝て貰えば、わたしは寝れる、先輩に抱き付ける、まさに一石二鳥です!」

 「願い事は一つだけじゃなかったっけ」

 「一言も言ってないですよ?」

 言ってなかった気がする。

 結果的に計一時間、宙の体温を間近で感じ続けた。その間、脳内から悪魔を追い出すのに必死だったのは言うまでもない。

 

そろそろ調子が戻ってきた気がする。

地の文が少ないのは、追々直していく予定です。

さて、学園祭本番まであと一週間ぴったし。

この間に宗一達の仲はどこまで発展するのか。

全ては僕の腕にかかっていると言っても過言ではありません。

頑張って、目標として夏までに完成させるように、ピッチを上げていきたいです。


感想、意見、「こんな話を書いてほしい」などの要望があれば、

感想フォームまで。

では(・ω・)ノシ



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ