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舞姫の眷属  作者: 拓里
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過去 ①

2章 過 去 ① 


俺が初めて舞に会ったのは、13年前に遡る。1月年始の挨拶に、

本家筋にあたる水流園家に行く、親父殿に付いて行った時である。

この地域は平年は雪はあまり積もらないのだが、昨日迄、異常寒波の影響で、除雪車が出るほどの

猛吹雪であったが、今日は寒波も去り、打って変わって日本晴れ、生まれて初めて見る銀世界に

 少し浮かれぎみ。両脇に1mほど除雪された道を歩いて行くと、屋敷の門が見えてきた。

 門の手前にある広大な駐車場には、数え切れない程の高級車、それも運転手付き


「親父殿、これ全部新年の挨拶に来てるの?」

「だろうな。政財界、裏の世界、名の通った奴は殆ど来るんじぁないかな

だが、御館様に会えるのは、ごく一部だがな」

「え~じぁ会えないの?お年玉貰えるかなと思って、付いて来たのに……」

「アハハハァハ 運が良ければ会えるさ」



俺達は屋敷の門、よく言えば、畏怖堂々、風格、威厳を感じさせ、見る者を圧倒する門構え。幅3m

高さ6mが、2門あり手前に観音開きになっている。が俺に言わせれば無駄に大きい門にしか見えないーー

そりぁー俺だって初めて見た時は、……

その大門の横でーー



「早く開けんかー!わしは、曽我部、曽我部大吾じぁー! 態々東京から来てやったんだー!」



インターホンに向かって、小太りで中年、はげ頭、キラキラした下品なスーツ、両指には高そうな宝石

品性の欠片も無い様な男が、二人の黒服を従えながら、顔を真っ赤にして怒鳴り散らしている。



「ですから訪問客の皆様方には、左手にある御小門から、入って貰います。」

「わしに、この寒空で、あんな列に並べと言うのかーー! 後で後悔するなー!」


怒りが収まらないのか、捨て台詞を吐き大門を蹴り、駐車場の方に歩いていった。


曽我部大吾は知らない。無知は、それだけで罪である事を……

水流園つるぞの家に、年始の挨拶に来れるだけでも凄い事を知らない…

彼は東北地方の旧庄屋で、広大な田畑を所有していた。そこに新幹線が通り、都市開発で

莫大な資金を手に入れ、それを元手に、次々と企業を買収し、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの、グループの長で

あった。

知人の薦めで、渋々来たのだが、高々舞踏家の家で、この様な扱いを受けるのが我慢為らなかった。



だが、この時この瞬間、彼の……命運は尽きた……


一年も経たず、会社は倒産、グループは解体、莫大な借財を抱え一家は離散、彼自身も夜逃げ同然に

街を追われ、その後、彼を見たものはいない……


この世に、もしもは無いが… もし彼が水流園つるぞの家の事をもう少し知っていれば……

もし彼が怒りに身を任せず、辺りを見渡せていれば……

そう彼が侮辱した行列には、日本で名家、名門と云われる人、旧財閥の人達も並んでいた…



「親父殿、あの人、もの凄く怒ってましたが、大丈夫?」

「あ奴は、もう終わりだな」

「えーー! 御館様が何かするの?」

「御館様は、この程度、何もしないさ。だが見てみろ」



そう言いながら、親父は左に視線を向ける。その先には、行列の人々ー!

人々の視線は、怒りながら歩いていく男の背中に向けられている。冷やかな視線、哀れみの視線……

その中に怒気を含んだ視線も幾つかあった。


(あー そう言うことですか)


無知は罪なり。  俺は去り行く男の背中に心の中で合掌したーー







「親父殿、俺達も早く並ばないとーー! 中に入れないよー」

「そうだな。じぁ行くか……ちょっと待て、拓也。面白い物見せてやる」



そう言うと親父は、ニャリと意味不明な顔をし、インターホンを押すーー



「俺だー! 今年は息子の拓也と来た、大門開けろー!」



ほぇーーー!何を、何を…ほざいている馬鹿親父ーー! 

俺は慌てふためき、ごめんなさいーごめんなさいー 監視カメラに向かって何度も、何度も

頭を下げた。


「……畏まりました」

「ほら見ろ馬鹿親父ー! 怒ってるじぁないかー!『畏まりました』??え??え??」


ギィギィギーー、その大門は内側に向けて、ゆっくりと動き出した。


「ほぇーーー!」


俺は、何が何やら、さっぱり状況が読めず、只々、口をだらしなく開け、大門が開いて行くのを眺めていた。

だが俺だけではなく、驚愕の面持ちで眼を見開いて、大門を見つめる集団があった。そう御小門に並んでいる人達だ。

それはそうだろ、俺は母親から、この大門は『開かずの大門』と言われ、

歴代の当主と数人の選ばれし者だけが通行できると聞かされている。

だが、当代の当主は、何故か大門を好んで使用しない

過去5年で大門が開いたのは2回程で、あったらしい。

呆けていた人々から、ザワザワとざわめきが起きる。


「……大門が……初めてみた……」

「……何者だ?あいつは?」


そう、その男は、ごくごく普通の身なりで、風格も威厳も感じさせない。それは一般人にしかみえない。

そして誰かが、ポツリ…




「……神崎……源一郎…」


「えー!あれが神崎流舞踏家、家元神崎源一郎かー!」



それは先程とは明らかに違う、畏怖を混めた驚愕の面持ちで見つめている。



水流園つるぞの対極図の『陰』を司る。『闇の神崎……』





俺達は大門に一歩足を踏み入れた。



 


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