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何もない土地で
辺境領リュシア。
荒れた畑、壊れかけの建物、少ない住民。
「……ひどい場所ね」
でもエリスは、なぜか少しだけ安心した。
ここには、彼女を笑う貴族はいない。
噂も、蔑みもない。
あるのは――
働く人々と、静かな風だけ。
「私にできること……何かあるはず」
エリスは、母の遺した古い日記を読み返した。
そこには、こう書かれていた。
『土地は、愛情を注げば応えてくれる』
彼女は畑を耕し、井戸を整え、倉庫を修理した。
魔力は弱い。
けれど、細かい魔法を長時間使えるという、誰も気づかなかった才能があった。
・水を浄化する
・土を柔らかくする
・壊れた壁を少しずつ修復する
それを毎日続けた。
⸻
数週間後。
「……あれ?」
作物が、明らかに育っていた。
枯れていた土地が、少しずつ緑に変わっていく。
村人たちは驚いた。
「こんなに育つなんて…」
「領主様、すごい…」
エリスは初めて、誰かに感謝された。
「ありがとうございます」
「あなたが来てくれてよかった」
胸が、じんわりと温かくなる。
(……ここなら、生きていける)
小さな、小さなスカッと。
“捨てられた令嬢”が、
“必要とされる領主”になり始めた瞬間だった。




