出会い①
出会い
「どこだ、ここ…」
島を出発して丸一日。ミゲルは途方に暮れていた。
ここはランス帝国ーーリアンス島でないならランス帝国しかないーーの、砂漠だ。
強制的に島から出発させられて、まず彼がやったことは行き先の設定だった。
なにしろ今まで二十年間、島の外に出たことなどなかったのだ。
大きな飛行船を停泊させることのできる場所がすぐ思いつくはずもなく、彼はひとまず、絶対的に広い場所を選んだ。それがこの砂漠。たしか、ディティケット砂漠だったか。
しかし思いの外上空の風が強く、やっとのことで
着陸したのは砂漠のど真ん中。
もちろん周りには何もない。
その上、最悪なことに着陸の操縦が悪かったのか、飛行船は早速動かなくなった。
一晩は凌いだものの、現在地の座標が分かるはずもなく、当然飛行船を人力で動かすこともできず、今に至る。
これだから準備が必要だったのに…と頭を抱えたくなるが、リアンスの仲間たちを悪く言う気持ちにはなれない。
せめて誰か通りかかってくれればいい。
例えば近くの村の住民とか、いっそのこと、砂漠の名前のもとになったという盗賊団でもいい。とりあえず人が通りかかればなんとかなる。
そう思いながら、ミゲルは水に口をつけた。
食料が豊富にあったのは不幸中の幸いだ。きっと、あと一週間は凌げるだろう。彼の精神が保てばだが。
と、遠くからピィーーっと、鳥のような高い音が近づいてくるのが聞こえた。
真っ青な空を見上げて見渡すと、鳥にしては大きな影が飛んでくる。羽が生えているものの、人、のような気がする。
ミゲルは反射的に立ち上がり、その何かに向かって叫んだ。
「すみませーん!すみませんー!助けてくださーい!」
その影は声に気づいたのか、ぐいっと下方に軌道を変え、ものすごい勢いでミゲルに突進してきた。
あ、まずかったかもしれない、俺の知らない野生生物だったかも…とミゲルが覚悟したのも束の間、突進の勢いとはかけ離れた、柔らかな風が吹き抜ける。
砂埃に目を閉じ、治った頃に目を開けると、そこには羽の生えた…人間が立っていた。
女性のようだ。ミゲルよりは小柄で、もしかしたら同年代くらいの。
こんなところを一人で飛んでいるくらいだから、この辺りに詳しいかもしれない。
「すみません、こんなところでお声がけをして!この辺りの方です…か…」
言いながら目の前の人物をはっきりと認識して、ミゲルは二の句が告げなくなった。
羽をたたみ、こちらを見た瞳は深い紫色。
かつて、この瞳と対峙した島民代表が言っていた。目を逸らせないほど美しい瞳だったと。
「私も通りがかりなんだけど、どうしたの? 出来ることがあれば手を貸すわ」
風に揺れる茶色の髪。
髪を掻き上げた左手には、特徴的なグローブ。
つい昨日、映像通信機で見たばかりの姿だ。
「エヴァ…様…」
「えっ?」
一瞬、時が止まる。
目の前の少女はミゲルの姿を捉えると、瞳を大きく開いて彼を見た。
「あなた…どうして…」
お互いにお互いから目が離せない。
先に息を吸ったのは彼女だった。困ったように笑い、彼女は自分自身を指す。
「やっぱり私のこと、わかる?」
映像で見たままのエヴァの姿がそこにあった。
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