96.こっちにも……
領主軍の後始末をハヤトやサキたちに任せて、俺はシロとウテナ、それにホムラとマヤをつれてヤマブキの所に瞬間移動した。
シロは置いて来ても良かったんだけど、どうしてもついてくると言ってきかないし、それならということでウテナにも来てもらうことにしたら、ホムラとマヤもついてきてしまったのだ。
「ごめん~、かなり遅くなった。」
「戦争なんて始まっちゃったら仕方ないわよ。」
ヤマブキがいた場所は、地下にある迷宮というか廃墟のようなところだった。
目の前には大きな石の扉があり、そこには古代の文字で何かが書かれている。
えっと、「邪神の封印」?
「この建物に邪神が封印されている?」
「ええ、そう書かれているわね。」
「中は見たの?」
「少し覗いただけよ。妖獣なのか、古代の守衛なのか、敵が強すぎて私では歯が立たないことはわかったわ。」
ヤマブキですら歯が立たない相手、いったい何が潜んでいるんだろうか。
(全員に強めの障壁をお願いね)
《了解ですよ~、そ~れ!》
「そこら中から妖獣の気配がするわ……。」
「周りを囲まれてる?」
いったいどういうことかと、ヤマブキの方を見る。
「あちゃ~、囲まれちゃったみたいね。」
ヤマブキの言葉に合わせたかのように、周囲の地面が盛り上がり、俺たちに襲い掛かってきた。
「お、大口っ?」
こいつは、間違いない。この世界にやってきたころに見たあの、大口の化け物だ!
あの時はただ噛まれるしかなかったけど、今はシルビアとグロリアの応援がある。
(周りの化け物みんな、ぶち殺しちゃって!)
〈わかったわ、ほいっ!〉
この大口、いったいどういう仕組みになっているのか、倒しても倒してもどんどん湧いて出てくる。それでも無限湧きするわけではないようで、ある程度倒したところで打ち止めになった。
「おおよそ片付いたみたいね。」
「もう何もいない。」
邪神の封印というのが良くわからないけれど、中に入って良いものなんだろうか。
ヤマブキが言うように、特に危険とか、立ち入り禁止とかいったような表記は見当たらないし、近くまでは入っても良いのかもしれない。
「行ってみるか。」
奥に入っていくと、そこはまるで蓋の無い棺桶のような物がたくさん並んだ部屋だった。
「何だこれ……」
「……死体? このたくさんあるのが全部、邪神?」
棺桶の中には若い裸の女性が、腐りもせず、まるで眠っているかのような姿で横たわっていた。
この女性たちが邪神なんだろうか。それとも邪神を封印するための生贄なのだろうか。
「あれ? この死体……動いてない?」
「馬鹿な。死体が動くわけないだろ?」
「でもほら、なんかピクッって……。」
ピクッ!
「ほんとだ、動いてる……。」
ピクッ! ピクッ!
「ガ、ガキュッ、ぅくキュゲっ、ゲコッ!」
ぴくぴくと震えていたのが、だんだん震えが大きくなり、そのうちガタガタと揺れたかと思ったら、大きく痙攣して飛び跳ね始めた。
「な、なんだ! まさか生きてる?」
「グギョッ! ゲコッ!」
体の中で何かが破裂でもしているのか、体のあちこちが急に膨らみ、そのたびに体が跳ねる。
「いったいなんだ……うわっ!」
ふくらみは急激に増えていき、大きなイボのような物になったかと思ったら、その中央が破れて三角に尖ったトゲのような物が顔をだした。
死体の全身が、あっという間にトゲに埋め尽くされる。
そしてその大量のトゲは、ぶるぶると震えはじめたかと思うと、一斉に死体を食い破って顔を出した。
「と……トムテっ……。」
死体を食い破って出てきたそれは、間違いなく小さなトムテの大群。しかもトムテが出てきた死体は一体だけではない。他の死体も同様に、トゲが生えたかと思うとトムテがどんどん湧いて出てくる。
まるで寄生虫のように、数百、数千と湧いて出てくるトムテの大群。
こいつらが邪神?
それとも、死体に巣くっていただけの寄生虫?
「クケッ! クケケケケッ!」
トムテたちは邪悪な笑い声を残して、ちりぢりになって消えていく。
俺たちはそれをただ、あっけに取られて眺めているだけだった。
~~~~~
グギュギュッ!
「また、どこぞの下級神が紛れ込んでいたわ。」
女神様のお姉さまは、一匹のトムテをひねりつぶしながら眉をひそめた。
「これだけ湧いてしまうと、もうどうにもならないわね。」
「トムテホイホイはいっぱい設置しましたけど、こんなの、駆除は無理ですよ。」
そもそもあそこは、異世界召喚ブームの時に、大量の転生者と大量のチートスキルで大人気になったものの、それがあふれすぎてしまって暴走した場所だ。
そのおかげで世界のリソースのバランスが大きく崩れ、天変地異が相次いで、文明を滅ぼしてしまっている。
挙句の果てには下級神であるはずのトムテが狂い、大量に湧いてしまう世界になっているのだ。
「タワシで磨けば何とかなるかと思ったけど、ちょっと手遅れだったわね。」
「やっぱりもう、世界ごと捨てちゃいましょう、お姉さま。」
「あら? あの転生者はいいの? お気に入りだったんじゃなくて?」
「まさか! あれって元はただの痴漢ですよ? ただのゴミです。」
廃棄処分。
二人の女神にそんなラベルを貼られたその世界は、もう二度と顧みられることはなかった。
最後はちょっと端折り気味になりましたが、これでこの作品は終了です。
最後までお読みいただきありがとうございました。




